『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  556

2015-06-29 09:10:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 三人はイリオネスの宿舎を辞した。
 『パリヌルス、驚いたな、軍団長の決断の速さに驚いた。あの決断の速さは闘いの場にいる感覚だ。それから、ドックス、お前もたいしたもんだ。軍団長に素早い決断を促す説明だ。的を得た説明であったな。よし、いいぞ。パリヌルス、段取りといこう。事を急ごう』
 『判った。とにかく、浜へ行こう。この三人で話し合う』
 イリオネスの宿舎を後にした三人は、話し合いの場にヘルメス艇を選んだ。
 『オキテス、ここでやろう』と艇の漕ぎ座に腰を下ろした。
 パリヌルスが口を開いた。
 『これには、ガリダをよく知っていて交渉力が必要とする。オキテス、お前の力に頼りたい、いいか。オキテスにドックス明日のキドニア行きの便でガリダのところへ出向いてほしい。この件における全権は、オキテスにゆだねることが一番と考えている。新艇建造技術の事は、ドックスお前の領域だ。全てを任せる。それでいってほしい』
 『いいだろう、それで決まりだ。ドックス、明日、キドニアへ行く、判ったな。交渉の進め方、細かいことは艇上で打ち合わせる。いいな』
 『パリヌルス、これで決まりだ』
 『いいだろう。オキテス、ドックス、よろしく頼む』
 『おう、パリヌルス、製材の道具については、ガリダに任せるようになると思うが、、、』
 『その決断はお前がしてくれ。とにかく、全権はお前にある』
 『判った』
 話し合いは短い時間で終わった。夕陽は下半身が海に没していた。

 陽が昇る、第一射がとどく。オキテスとドックスは舟艇の上にいた。舟艇は折からの西風を帆にはらんでキドニアへと進んでいる。
 『おう、ギアス、どうだ?』
 『どうだ?と言われますと?』
 『帆の事だ』
 『具合はいいですね。見慣れないといけませんが。私は、この帆に慣れてきています、具合はいいですね。この帆による走りが好きです』
 『そうか。そのいいというところを理論的に聞きたい』
 『判りました。日を改めてでいいですね』
 ドックスが傍らで二人の話し合うのを聞いていた。
 『ところでドックス、今日の事だが、まず製材現場の視察から始める。次に昼めしを食べながら交渉を始める。そういう段取りだ。いいな』
 『判りました』
 『この交渉は、我々が有利な立場にたって進める。どっちにしても、新艇の用材を買うのも、相手の持っている技術を買うのも俺たちなのだ』
 『判りました』
 ドックスは、オキテスの意向を理解した。