『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  955

2017-01-28 08:58:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 綱引き用の綱を肩に担いだ長蛇の一群が姿を見せる。整った律調で歩んでくる。掛け声も前部の者たち、後部の者たちが交互に掛け合って歩んでくる。
 リナウスが走る、先頭に立つ、先導する、決めた個所へと一行を導く、歩みを停止する、ところを一瞥する。
 綱の中央をリナウスが打ち立てた2本の杭の間に位置させて地上に下ろした。
 『おう、一同ご苦労であった』と言って、目を合わせた。
 リナウスはその時になって、統領と軍団長の姿に気づいた。
 『ややっ!これはこれは!統領ご苦労様です。また、軍団長にもお世話をかけたようですね。ありがとうございました』
 『おう、リナウス、ご苦労!会場の設営だが終わったかな』
 統領がリナウスに問いかける。軍団長は各所に建てられている棒杭、立て札の景色を眺めて、うなずきながらリナウスに言葉をかけた。
 『おう、リナウス、お前らが作った木板を見て、統領も俺も状況の大体のところを理解している。作業のすべてが終わったのかな?』
 『はい、これから、委員ら全員に状態を説明しながら、最終点検をします。彼らから意見を聞いて、修正すべきは修正作業を行います。それと同時に、彼らに大会挙行時にやるべき役務の説明をします、そのあと、一同と打ち合わせをして、今日の作業の終了です』
 『それに統領と俺、同道していいかな?また、打ち合わせの場に同席していいかな?』
 『はい、どうぞ、同道、臨席してください。もし、意見がありましたら言ってください、いただきます』
 『解った。ありがとう。作業を進めてくれ』
 『おう、君ら、綱の運搬に手を貸してくれて、ありがとう!感謝、感謝』
 リナウスは綱の運搬に手を貸してくれた建造の場の者たちに礼を言った。
 リナウスは忙しそうに立ち回っている。彼は、委員ら一同を引き連れて設営した競技大会の会場を巡回して、大会運営に担当する役務を説明した。そして、彼らの意見を収集した。
 統領と軍団長もリナウスの説明を聞きながら、頭中に競技大会で展開する情景を描いた。
 巡回を終えて、総員参加の打ち合わせを行う、彼らは、この期に及んで、委員長リナウスの意図を理解し納得した。
 一同から返事が返る。
 『委員長、委員長の考え、俺たちが行うべきことがよく解りました。明日行う競技大会がわれら一族が心から楽しめるよう、充分に配慮して、役務を全うします。安心してください。本日は大変にご苦労様でした』
 打ち合わせが終わると同時に作業の完了も告げて解散した。
 『一同!ご苦労であった。君らの働きに大感謝だ』
 リナウスにはもう一つ仕事が残っている。
 参加者に感動を届けたい、表彰のカタチをどうするか、賞品を何にするか。
 マッチスに相談して、夕刻に至ってオロンテスと打ち合わせた。