スダヌスがギアスに声をかける。
『おう、ギアス、今度は船長役の拝命か。お前なら何でもできる。しかし、今度は軍船なる大船だ。いい風が吹いてくれるように祈ることだな』
『はい、そのようにします。祈ってできるなんて考えてはいません』
『この航海の懸念するところは、立案した時間通りに停泊地に着けるかどうかである。二日目は、いい西風が船を押してくれれば、ゆるいとはいえ潮流は東に向かって流れている。目的地のテムパキオには昼が過ぎて一刻半から二刻後には着港する。以上だ。質問があれば聞いてくれ。俺の言っているのは、あくまでも予定だ。計画通りに行けるか、行けないか、その日の天気具合、海の状況にかかっている』
『スダヌス浜頭、問題は、第一日目の停泊地をどこにするかで、引き渡し日の第二日目の昼過ぎに着くか、夕方に着くかですね』
『それはそうだが、停泊地に決めているペレカノスはテムパキオへのちょうど中間地点である。これより先の停泊適地は200スタジオンあまり(約40キロ)東になる。我らが航走する速度で二刻(4時間)くらいかかる。海路の都合もあるが第一日目の停泊地に到着するのが遅れることがあっても早まることはないと覚悟の航海になる。第一日目の停泊予定地であるペレカノスは、安心のできる停泊地である。計画海路、計画日程及び停泊地の変更はしない。そのようにオキテス隊長とも打ち合わせ済みである。一同、そのように心得られたい』
『解りました。言われる通り指示に従って航海のぞみます』
『航海は、安全航海であるように心がける。これを第一として、俺は、俺に課された案内役を務める。一同よろしくお願いする。なお、復路については、帰り船出航の際に説明する』
スダヌスは話し終えて一同と目を合わせる。彼は何かを話そうか話すまいかと迷っている、スダヌスが口を開いた。
『一同に伝えておこうか、おかないかを迷った。話しておく。我々の航海途上において、海で悪さを働く輩のことだ。この海路には、海賊、海の民等、そのような輩が引き起こす変事、騒動は多くはない。それがないということではない。そのような状況であることを伝えておく。軍船を伴走船に引き連れての航海である。安心度の高い航海である』
スダヌスの案内役としての航海に関する説明は終わった。