『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  29

2019-05-23 07:42:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスとイリオネス、二人が船台の場の風景に見入っている、感動の風情である。
 ドックスが気づく、二人の前に立つ、軽く会釈する。
 『おう、ドックス、ご苦労!』
 『今日は、いい日和です。近頃、日足も少々長くなって作業にはかどりが出てきています。うれしい次第です』
 『お~お、建造作業の進みが順調に見えるな。重畳重畳!こうして見る5基の船台上で艇が出来あがっていく、この光景は、いつ見ても壮観である、見る者を圧倒する、感動だな。それも月半ばを過ぎての船台の場の風景が素晴らしい!この風景がたまらなく好きだ!』とイリオネスが述べる。
 『そうですか。そのように言われると現場を仕切っている私は、極めてうれしい限りです』
 統領も声をかける。
 『ドックス、ごくろう!お前あってこそ、いい船が出来あがっていく。この作業風景がたまらない感動をくれる。この事業は我らの誇りである』
 『統領、ありがとうございます。その言葉いただきます』とドックス、感激で頬を赤らめる。
 『おう、受け取ってくれるか、互いに感動だな』
 アエネアスが手を伸ばす、握るドックス、感動場面にイリオネスが微笑む。
 二人は建造の場の巡察を終える。
 会所におちつく、二人の目が合う、声をかける。
 『イリオネス、ここのところ、計画の立案作業を追う余りに現場の巡察を怠っていたな、反省反省。トラキアで小船を造っていたあの頃を思い出すな。あれが過ぎ去った遠い過去に思える。ものを造ることはいいなとしみじみと感じている』
 『そうですね!全身の智と心、そして、技を持って全霊を注ぎ込む、モノを造りあげる。いいですね』
 『智心技体の汗を見る!それを目にして管理者として心に汗を掻く!冥利に尽きる!この感動いつまでもと想う』
 『その統領の感性がすごい!感じ入ります。統率する者として心ですな』
 二人は心の内を話し合う。
 帰ってきたオロンテスが今日の成果報告に顔を出す、オキテスが来る、パリヌルスが姿を見せる、一同の顔がそろう、イリオネスがアエネアスと目を合わせる、目で問いを交わす、アエネアスの気持ちを問う。
 アエネアスが口を開く。
 『おう、一同がそろったな。伝えたいことがある』
 『はい、伺います。言ってください』パリヌルスらが答える。
 『一同に伝える。明後日、早朝より会議をやる。場所は軍団長の宿舎だ。その結果を持って、午後半ばに全員に対して意思の表明をする。軍団長、そのように段取りしてほしい』
 『解りました。一同!いいな、いま、統領の言われたように事を進める。各事業部の計画検討会議だ。明後日、早朝より行う。場所は統領が言われたように俺の宿舎だ。午後には統領の意志を全員に伝える。パリヌルス、アレテスにその旨を伝えて出席させてくれ』
 『解りました』
 『一同、聞いておきたいことがあれば聞いてくれ』
 『それはありません』
 来るべき時がおとずれる、一同の心が決まる時である、その打ち合わせが終わる。
 矢が弦を離れる時がこくこくと迫ってきている、一同をせきたてた。