しばしば、いや、しょっちゅう、人から道を尋ねられる。
老若男女を問わず。というか洋の東西を問わず。
かつて、旅行先のニューヨークでリトル・イタリーをぶらぶらしている時、明らかにネイティブの黒人の方に、
「刑事裁判所はどう行けばいいんだ?」
と聞かれたこともあります。
俺に分かるわけないじゃん。てゆうーか、まわりに掃いて捨てるほど地元民らしきニューヨーカーがいるのに、何故、敢えて俺?
「I don't know. I'm a tourist.」
と言えば済むところを、
「Sorry, I'm sorry. Very sorry much. I don't have a map.」
構文的にも内容的にも意味不明の謝罪をしまくる私。
私は大江戸線から丸の内線を乗り継いで出勤しているのですが、今から書くのは今朝の丸の内線での出来事。つまりほんの4時間ほど前のこと。
すらっとしたモデル体型の、やたら目を惹く美人(おそらくアメリカ人)が英語の地下鉄マップを見ながらなにやら困っている様子。
日本男子として困っている美女を放っておくことはできぬ、とは思わなかったけれど、あまりに美人なので私の目はしばし彼女に釘付けに。
ふと目を上げる彼女。
絡み合う私と彼女の視線。
にっこり笑って(どーして外国の方ってヒトに話しかけるとき、あんな人懐っこい笑顔が瞬時に作れるんでしょーね)、
「This Train Shinjuku ?」
と彼女。
それくらいの英語は分かりますぜ。お嬢さん。ずいぶんお困りのようじゃねーですかい。
しかも尋ねられた時、電車は既に西新宿。
「Yeah,of course ! Shinjuku is next station.」
まるで英語ペラペラであるかのように答える私。
「Thanks !」(&天使のような笑顔)
と彼女。
ここで止めときゃ良かった。今から思えば。
もうすぐ新宿に着くし。時間的には30秒くらいだし。それくらいなら私のつたない英語でも国際コミュニケーションが可能じゃないか、と。あわよくば、国際Love Affairも可能なんじゃないか、と。
はい。すいません。身の程知らずでした。以下、英語に(全く)自信がないので全編邦訳して(モデル系)美女と(日本男子を代表する)私の会話をお届けします。
私:旅行ですか?
彼女:ええ。ともだちが日本にいるので。
私:新宿で待ち合わせですか?
彼女:いえ、新宿で乗り換えて東京駅まで行きます。東京駅の●●●●(※以下、残念ながら聞き取れず)で待ち合わせなんです。
私:だったら、新宿で乗り換えなくても、この丸の内線で東京まで行けますよ。
彼女:ありがとう。でも●●●●が●●●●だから●●●●だとしたら●●●●ですよね?(※再び聞き取れず)
私:・・・そうですか。・・・・いい天気ですよね(※何を言ってる、俺!)。
彼女:そうね。あ、あなたなら知ってるかなぁ? ●●●って●●●で●●●の●●●●が●●●●でしょ。●●●●●●●(※こら、その機関銃みたいにペラペラ動く口閉じんかい!日本男子は寡黙で慎ましやかな女性が好みなんじゃ!)
私:はい。私は今年で49歳になります。職業は弁護士です。私は少年ではありません。
彼女:●●●●●●●●●●●●●●●●(すいません。もはや一語も聞き取れず。笑顔のままで哀れな子羊を見るようなその目つきを止めんかい!)
私:そうですね。私の事務所は四谷三丁目にあります。四谷警察署の隣です。
・・・・・・この時点で、電車は既に四谷三丁目に着いてるし。
おいおい、新宿で乗り換えるっていう話はどーなったのよ?
私:Have a nice trip !
彼女:(天使のようなとろけそうな笑顔で)Thank you ! bye !
俺に道を尋ねるな!
(I have lost my way.)
PS;今見たら、この投稿の下に広告が。「英語契約は経験豊富な弁護士に」