「わが国の戦後史において、憲法の第九条第二項がなかったとしたら。自衛隊はアメリカに朝鮮戦争にもベトナム戦争にも湾岸戦争にもぜーんぶ参加させられていたでしょう。」
「自民党は憲法を変えるという。九条二項を書き換えると主張しています。あの条文を削除されたら最後、自衛隊は正面切った戦争をしなくちゃならない。とすれば当然、徴兵が始まります。戦争をする自衛隊になど誰も入ってくれなくなりますから、人手を集めるためには仕方がない、という話ですね。法律で決めればいいことだから、強行採決すれば済んでしまうのですよ。ですから、自分自身や子どもや孫が戦場に連れて行かれて、命を落としてもいいということなら、それはそれで結構です。憲法“改正”に大いに賛成されたらよい。でもそんなのはイヤだという人は少し考えてみた方がいい。とんでもないことになってしまいます」
という発言は、元防衛庁高官、官房防衛審議官や防衛研究所長などを歴任、一九九二年に退官し、現新潟県加茂市の市長小池清彦氏が、二〇〇六年四月二十一日東京の新宿での「憲法行脚の会」で語った講演の内容。
軍事力というものの本質や、自衛隊員たちの心情を誰よりも熟知していればこそ、小池さんは近年のイラク派兵や改憲への潮流に警鐘を乱打してきた。
というふうに、斉藤貴男氏が新著『ルポ 改憲潮流』(岩波新書)で「はじめに」の中で紹介している。元自衛隊高官の語ることである。説得力がある。
アメリカはすでにイラク戦争で二千人以上の若者を死なせている。
できることなら、よその国の若者に肩代わりしてもらいたいと思うだろう。さらに、彼らアメリカの上層部は人種差別主義者であることを忘れてはいけない。
憲法を変えて、アメリカの世界戦略の軍事部門を、自衛軍として日本は本当に背負うのか。日本の若者の命を差し出すのか。 それでもいいのか。