8月10日が最終日だったいわき市議会7月定例会で、帰趨が注目されていた「廃炉の意思表明を求めることについて」という請願は、「趣旨採択」という総務常任委員長の報告を否決し、全面的賛成を意味する「採択」とすることが多数で決まりました。「採択」には、日本共産党をはじめ創世会(社民、民主、無所属)、政新会(自民系)の一部、つつじの会(連合系)の一部、公明党、改革の会の21議員が賛成しました。「採択」に賛成しなかったのは自民党系の志道会所属議員と政新会の2人の議員でした。
いわき市議会は昨年の6月定例会以降、県内の全ての原発廃炉を求める意見書を3度にわたって廃案にしてきました。これに対して「原発事故の完全賠償をさせる会」が廃炉を求める署名に取り組み、7月30日に11,166人分の署名を添えて「廃炉の意思表明」を求める請願を、私をはじめ日本共産党市議団の各議員を紹介者として、市議会に提出していました。
問題はここから。請願が付託された総務常任委員会が8月3日に開かれ、志道会出身の委員長主導でいわき市議会のルールになかった「趣旨採択」とすることを多数で決めてしまったのです。「趣旨採択」は、「含意は妥当であるが、実現性に確信が持てない(財政事情など)などといった場合に、不採択とすることもできない」ためにとられる便宜的な議決方法です。「この請願は妥当だと思うけど無理して実施しなくても良いよ」という程度の意味になってしまうようです。
委員会の議決後、ルール違反が問われることになりました。「趣旨採択」という議決方法は、いわき市議会にはなく、「採択」「不採択」とすることとされていたからです。仮に全面的に賛成できない場合は、「退席」して議決に加わらないということも行われてきました。「趣旨採択」という議決方法が市議会としてのルールとして確認されているなら、何の問題もありません。しかし、そのルールはないのです。
勝手に作られたルールを追認することになれば、多数派あるいは大会派にとって都合が良いルールを作って後でこれを認めさせるという恣意的な議会運営が横行し、議会の民主的運営の根幹が崩れるという大問題が発生しかねません。こうしたことは議会の議決に影響を与えるようになりますから、市民にとって不利益になる恐れがあります。このため日本共産党は、総務常任委員会での議決後、「趣旨採択」を認めず、いわき市議会のルールにのっとった「採択」をめざしました。
まず、総務常任委員会の再審議をめざし、本会議冒頭の緊急質問を通告しました。総務常任委員会で行政経営部長が発言した第二原発の「廃炉は当然と考える」という請願に関する意見表明と、本会議の「(廃炉は)県の判断に委ねる。それ以上でも、以下でもない」という発言の食い違いを取り上げ、その回答を根拠に総務常任委員会の再調査を求めようということが第一でした。
議案の取り扱いや議会のルールを決める議会運営委員会が9日に開かれ、趣旨採択を認めるか、認めないかが議論されました。しかし意見が割れ一致しませんでした。その結果「趣旨採択」というルールが存在しないことが確認されたわけです。一方、趣旨採択をした総務常任委員会の議決については、市議会議長会の「(議会としてのルールがないもとでは)好ましくないが、法律違反とはいえない」という見解が確認されました。
また、緊急質問については私と創世会の2人の委員が賛成したものの、志道会、政新会、つつじの会の4人の委員が反対し実現しませんでした。反対の理由の発言はありませんでしたが、市長も行政経営部長も同じ事を言っているというようなつぶやきが聞こえてきました。良く理解できませんが…。いずれにせよ、緊急質問を認めないということになって、委員会の再調査を求めることは実現できませんでした。
さて、閉会日の10日、総務常任委員長は委員会の議決通り「請願は趣旨採択とすべき」と本会議に報告しました。
日本共産党市議団は、この委員長報告に質疑を行いました。この中で総務常任委員長は、趣旨採択がルールにないことを知っており、そのルールを決めるのは議会運営委員会(議運)だと認識し、かつ、議運にはかるべきだと反省もしているが、悩みながらも趣旨採択という選択を自ら示して採決を図るべきだと考えたという趣旨の答弁をしました。また、この結果「より良い結論が導かれ、何ら恥じない行動であった」と胸をはるのです。かいつまんでみると、自分が必要な手続きを踏まずにミスリードして導いた「趣旨採択」という結論は「何ら恥じない行為」だということになります。
委員長の職責は民主的で公正な委員会の運営です。そういう委員長が、議会のルールを無視した「趣旨採択」という結論に委員会を導きながら、「何ら恥じない行為」と胸をはる。こういう行為が委員長という職責にふさわしいはずがありません。このため日本共産党市議団は、不信任動議を提出しましたが、これを議事日程に加えるかどうかの採決が行われました。34人の議員のうち議長と除籍となる当事者(総務常任委員長)に加え退席者が2名、合計4名を除く30名の採決です。結果、賛成が、日本共産党と創世会、そして政新会の一部で合計16人、反対が14人。賛成多数で日程に加えることになりました。動議の提案・採決の結果も同様に16人が賛成し、不信任決議が可決となりました。ただしこの決議には強制力がありません。実際辞職するかどうかは本人次第ですが、議会としてはルール違反に対する道義的な責任を確認したわけです。
この決議の可決により、請願が「趣旨採択」でなく、「採択」になる可能性が見えてきました。
本会議では、はじめに委員長報告にあった「趣旨採択」採決に付されます。「趣旨採択」は議長と退席者1名を除く32人で採決が行われ、志道会、つつじの会、公明党、政新会の2人の議員が賛成したものの、賛成15人の少数否決となりました。
「趣旨採択」が否決されたことから、次に「採択」が議決にかけられました。この結果請願は21人の賛成多数で「採択」することになったのです。この瞬間、これは会議傍聴規則でやってはいけないとされているのですが、30名ほどいた傍聴席から拍手が聞こえました。
ルール無視の「趣旨採択」が総務常任委員会でされたことに、総務常任委員長が所属する志道会はルール無視をリードした委員長の責任を問うことなく、ルール無視を議会として追認することを求ました。これは通常の感覚からも間違った対応です。自動車運転で30kmの速度オーバーをして摘発されたのは法律が悪いからだと難癖をつけ、法律を変えて罪を問われないようにしようという行為に等しい行為です。
不信任決議の可決を受けて「今回、数が大切だということを知った。正しいことを言っても、数が少なければ通らない」と感想を述べた議員がいますが、ルール違反を擁護することが正しいという感覚は大分ずれていると思います。ルール違反は許されないという当たり前の結論を議会が導き出したことを、正当に評価する目が必要だと言えるでしょう。
請願を「採択」とせずに、「趣旨採択」にしようとしたのは、請願文の中に「今日まで市議会として10基の廃炉を求めてはいません」と書かれていることが第1の理由でした。「趣旨採択」派は、市議会の特別委員会が「原子力発電所に依存しない社会を目指す、本市としての意思を表明すること」と市長に求めたことなどをもって10基の廃炉を表明していると主張しました。そして総務常任委員長は「市民との信頼、議会の威信と厳正を損なう内容と判断」したというのです。
昨年の6月定例会から3回も県内原発の廃炉意見書を廃案にしてきた事実に目をつぶって、10機の廃炉を表明したという言い分が成り立つはずはありません。表明済みという感覚こそ「市民の信頼」を損ね、「議会の威信」を貶めことにつながっていることに気づくべきです。
ルール違反の押し付けを許さずに、請願を「採択」できた7月定例会最終日。廃炉表明を願う多数の市民の願いが議会を包囲し、当日も多数の傍聴人が見守る中で、市議会の良識が発揮され、こういう結論が出せたことを大いに喜びたいと思います。
いわき市議会は昨年の6月定例会以降、県内の全ての原発廃炉を求める意見書を3度にわたって廃案にしてきました。これに対して「原発事故の完全賠償をさせる会」が廃炉を求める署名に取り組み、7月30日に11,166人分の署名を添えて「廃炉の意思表明」を求める請願を、私をはじめ日本共産党市議団の各議員を紹介者として、市議会に提出していました。
問題はここから。請願が付託された総務常任委員会が8月3日に開かれ、志道会出身の委員長主導でいわき市議会のルールになかった「趣旨採択」とすることを多数で決めてしまったのです。「趣旨採択」は、「含意は妥当であるが、実現性に確信が持てない(財政事情など)などといった場合に、不採択とすることもできない」ためにとられる便宜的な議決方法です。「この請願は妥当だと思うけど無理して実施しなくても良いよ」という程度の意味になってしまうようです。
委員会の議決後、ルール違反が問われることになりました。「趣旨採択」という議決方法は、いわき市議会にはなく、「採択」「不採択」とすることとされていたからです。仮に全面的に賛成できない場合は、「退席」して議決に加わらないということも行われてきました。「趣旨採択」という議決方法が市議会としてのルールとして確認されているなら、何の問題もありません。しかし、そのルールはないのです。
勝手に作られたルールを追認することになれば、多数派あるいは大会派にとって都合が良いルールを作って後でこれを認めさせるという恣意的な議会運営が横行し、議会の民主的運営の根幹が崩れるという大問題が発生しかねません。こうしたことは議会の議決に影響を与えるようになりますから、市民にとって不利益になる恐れがあります。このため日本共産党は、総務常任委員会での議決後、「趣旨採択」を認めず、いわき市議会のルールにのっとった「採択」をめざしました。
まず、総務常任委員会の再審議をめざし、本会議冒頭の緊急質問を通告しました。総務常任委員会で行政経営部長が発言した第二原発の「廃炉は当然と考える」という請願に関する意見表明と、本会議の「(廃炉は)県の判断に委ねる。それ以上でも、以下でもない」という発言の食い違いを取り上げ、その回答を根拠に総務常任委員会の再調査を求めようということが第一でした。
議案の取り扱いや議会のルールを決める議会運営委員会が9日に開かれ、趣旨採択を認めるか、認めないかが議論されました。しかし意見が割れ一致しませんでした。その結果「趣旨採択」というルールが存在しないことが確認されたわけです。一方、趣旨採択をした総務常任委員会の議決については、市議会議長会の「(議会としてのルールがないもとでは)好ましくないが、法律違反とはいえない」という見解が確認されました。
また、緊急質問については私と創世会の2人の委員が賛成したものの、志道会、政新会、つつじの会の4人の委員が反対し実現しませんでした。反対の理由の発言はありませんでしたが、市長も行政経営部長も同じ事を言っているというようなつぶやきが聞こえてきました。良く理解できませんが…。いずれにせよ、緊急質問を認めないということになって、委員会の再調査を求めることは実現できませんでした。
さて、閉会日の10日、総務常任委員長は委員会の議決通り「請願は趣旨採択とすべき」と本会議に報告しました。
日本共産党市議団は、この委員長報告に質疑を行いました。この中で総務常任委員長は、趣旨採択がルールにないことを知っており、そのルールを決めるのは議会運営委員会(議運)だと認識し、かつ、議運にはかるべきだと反省もしているが、悩みながらも趣旨採択という選択を自ら示して採決を図るべきだと考えたという趣旨の答弁をしました。また、この結果「より良い結論が導かれ、何ら恥じない行動であった」と胸をはるのです。かいつまんでみると、自分が必要な手続きを踏まずにミスリードして導いた「趣旨採択」という結論は「何ら恥じない行為」だということになります。
委員長の職責は民主的で公正な委員会の運営です。そういう委員長が、議会のルールを無視した「趣旨採択」という結論に委員会を導きながら、「何ら恥じない行為」と胸をはる。こういう行為が委員長という職責にふさわしいはずがありません。このため日本共産党市議団は、不信任動議を提出しましたが、これを議事日程に加えるかどうかの採決が行われました。34人の議員のうち議長と除籍となる当事者(総務常任委員長)に加え退席者が2名、合計4名を除く30名の採決です。結果、賛成が、日本共産党と創世会、そして政新会の一部で合計16人、反対が14人。賛成多数で日程に加えることになりました。動議の提案・採決の結果も同様に16人が賛成し、不信任決議が可決となりました。ただしこの決議には強制力がありません。実際辞職するかどうかは本人次第ですが、議会としてはルール違反に対する道義的な責任を確認したわけです。
この決議の可決により、請願が「趣旨採択」でなく、「採択」になる可能性が見えてきました。
本会議では、はじめに委員長報告にあった「趣旨採択」採決に付されます。「趣旨採択」は議長と退席者1名を除く32人で採決が行われ、志道会、つつじの会、公明党、政新会の2人の議員が賛成したものの、賛成15人の少数否決となりました。
「趣旨採択」が否決されたことから、次に「採択」が議決にかけられました。この結果請願は21人の賛成多数で「採択」することになったのです。この瞬間、これは会議傍聴規則でやってはいけないとされているのですが、30名ほどいた傍聴席から拍手が聞こえました。
ルール無視の「趣旨採択」が総務常任委員会でされたことに、総務常任委員長が所属する志道会はルール無視をリードした委員長の責任を問うことなく、ルール無視を議会として追認することを求ました。これは通常の感覚からも間違った対応です。自動車運転で30kmの速度オーバーをして摘発されたのは法律が悪いからだと難癖をつけ、法律を変えて罪を問われないようにしようという行為に等しい行為です。
不信任決議の可決を受けて「今回、数が大切だということを知った。正しいことを言っても、数が少なければ通らない」と感想を述べた議員がいますが、ルール違反を擁護することが正しいという感覚は大分ずれていると思います。ルール違反は許されないという当たり前の結論を議会が導き出したことを、正当に評価する目が必要だと言えるでしょう。
請願を「採択」とせずに、「趣旨採択」にしようとしたのは、請願文の中に「今日まで市議会として10基の廃炉を求めてはいません」と書かれていることが第1の理由でした。「趣旨採択」派は、市議会の特別委員会が「原子力発電所に依存しない社会を目指す、本市としての意思を表明すること」と市長に求めたことなどをもって10基の廃炉を表明していると主張しました。そして総務常任委員長は「市民との信頼、議会の威信と厳正を損なう内容と判断」したというのです。
昨年の6月定例会から3回も県内原発の廃炉意見書を廃案にしてきた事実に目をつぶって、10機の廃炉を表明したという言い分が成り立つはずはありません。表明済みという感覚こそ「市民の信頼」を損ね、「議会の威信」を貶めことにつながっていることに気づくべきです。
ルール違反の押し付けを許さずに、請願を「採択」できた7月定例会最終日。廃炉表明を願う多数の市民の願いが議会を包囲し、当日も多数の傍聴人が見守る中で、市議会の良識が発揮され、こういう結論が出せたことを大いに喜びたいと思います。