伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

原発事故、福島の怒りが全国には伝わらないわけだ…原発継続期待 東電次期社長会見の記事

2012年05月09日 | 原発
 東京電力の広瀬直己次期社長の記者会見記事が、今朝の朝刊各紙に掲載された。地方紙・福島民報を手に取ると「東電社長・原発継続に期待・『新設は国策の根幹』」の見出しが目に入った。記事はこう書く。

 「広瀬氏は都内で記者会見し『原子力は国のエネルギー政策の大きな土台』との認識を表明。工事を中断している東通原発1号機(青森県)に関しても『原発新設は国の政策の根幹だ』と述べ、原発継続への期待感を示した。」

 最悪の原発事故を引き起こした東電。事故の反省をしていないばかりか、未だに原発にしがみついている。注意せよ――記事から感じる、その警告がありがたい。

 同じく地方紙・福島民友が気にかかった。
 記事に添えられた軸見出しに「広瀬氏、原発継続に期待感」とつけ、記事の中ほどで「広瀬氏は『原子力は国のエネルギー政策の大きな土台』との認識を表明。工事を中断している東通原発1号機も(青森県)に関しても『原発新設は国の政策の根幹だ』と述べ、原発継続への期待感を示した」と書く。扱いは少し弱いが、やはり被災者の目線を感じる扱いだ。

 昨年の東電福島第一原子力発電所の事故と放射性物質の拡散が、「健康への影響は無いのか」「このまちで子どもを育てて大丈夫か」「漁に出ることはできない」「山菜は食べられるのか」「タケノコは…」と、市民を不安の中に追い込み、生きがいや楽しみを奪った。その主犯の東電に対する注意を喚起する。被災者・県民と同じ目線を感じる記事が、心地よい。

 昼ごはんを食べながら朝日新聞を読んでいた。あった、あった。広瀬氏の会見記事は3面だ。「積もる課題、決意語る。値上げ・賠償・内向き社風」……なんじゃこりゃ……気がなえる。

 原発事故に関して記事の後半でこう書く。「広瀬氏は会見でこう述べた。『(原発は)全然だめだという議論にするのはエネルギー政策上もったいないと思っている』…中略…しかし、原発再稼動には『福島の検証にしっかり正面から取り組み、(再稼動に)理解を得たい』と、積極的だ」。原発事故はもう過去の問題となっているようだ。

 毎日新聞はどうだろうか。期待をもって紙面をめくる。2面にあった。がっくり肩が落ちる。「東電、新体制を決定 広瀬新社長『賠償事務を加速』」が見出し。原発に関しては「柏崎刈羽原発の再稼動については、福島第一原発事故の検証も踏まえて地元の理解を求め、再稼動につなげる努力をすると強調」との文面。こちらも原発事故は過去の問題だ。

 読売新聞を手に取った。「『柏崎』再稼動に意欲」という1面の見出しを見て、記事に期待が膨らんだ。読んでみると、「再稼動」に読売が関心を持ったのは「柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)のあり方」が、東京電力の「経営のカギを握る」と見ているためらしく、記事は「(新潟県が求める)福島第一原発事故の検証をしっかりやっていかなくてはならない。(地元の)理解をいただき、再稼動につなげたい」と続く。関心は福島第一から再稼動に移っている。



 福島第一では、事故の収束に向けて労働者たちがたたかっている。原発・放射性物質の汚染地では、住民が汚染の影響の不安とたたかい、地域の安心・安全を高めるためにまき散らかされた放射性物質の除染でたたかっている。全国紙が、原発・放射性物質と今まさにたたかっている被災地・被災者と目線を同じにするどころか、事故そのものを過去の物としてしまっている現実。福島の心が、福島の現実が、全国に伝わらないわけだ。

 被災地の心を伝える地方紙がんばれ。率直に応援したい。全国紙には被災地・被災者の目線からの記事を期待したい。



 朝、散歩をしていると、車を止めて歩み寄る人。よく知った人だが、自家消費用食品を測定したもらったことに関して、いくつかの意見を話してくれた。その間、いっしょにいる犬は、周りをうろうろしている。今の政治への疑問も語ったその人と別れ、散歩を続けると、シャガの花が咲いていた。


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