さて、振り返るといってもどこを起点としようか。
コウゾを増やすぞ
そう、コウゾの植え付けが良いかもしれない。
ボランティアが管理しているコウゾ畑は、その昔に、遠野地区で和紙生産が盛んだった頃、コウゾを植え付けていた畑を借り受けて管理している。あわせてコウゾの生産量を増やすために、新たに借り受けた畑等にコウゾの苗の植え付けなどもしている。
この作業は、3月の中旬、コウゾの皮から黒皮などを取り除く「しょしとり」をした後、ボランティア活動の年度の締めくくりに行われた。こうした株が育ち、立派な枝を育ててくれることを期待している。
植え付ける株は、既に植えられているコウゾの株から採取する。どうも、コウゾは、横に広げた根から新芽を発生させるようで。古い株の近くに新しい株が育っていることがある。枝が地について根を出すこともあるので、こうした株も活用する。
草刈り・芽かき
植え付けが終わり、年度の作業は終了するのだが、サクラ(ソメイヨシノ)が咲き、草が勢いを増すと、畑の草刈りボランティアが始まる。ボランティアはだいたい1ヶ月に2日ほどで、管理している8ヶ所のコウゾ畑を1巡して草刈りをする。
今年は草刈りは4月末から始めた。今年は草の育ちが早かったからのようだが、通常は5月になると、ボランティア活動がスタートするようだ。
コウゾは、根元から刈り取っているので、ご覧のように草の中に埋もれて、全く見えない。草を刈ることで日当たりを良くして、コウゾの枝の成育を助けてやるのだ。
ただ、月に1回程度では、草の生長に草刈りが間に合わない。また、春から秋にかけたコウゾの成育時期の作業は、草刈りの他、枝から伸びる脇芽を摘み取る芽かきや追肥などがある。これらの作業は、今年度から3名となった地域おこし協力隊の若者達が担ってくれている。
夏の暑い盛りの畑仕事などを考えると、彼らの流した汗と苦労には頭が下がる。しかし、そのおかげでコウゾの枝は立派に育った。予想収穫量は100Kg 程度じゃないかという。昨年が60kg程度だというから、その汗も苦労も報われたのではないだろうか。
トロロアオイ(花オクラ)
和紙作りにトロロアオイが欠かせない。和紙すきは「漉き舟」に、コウゾの繊維を溶かし込み、この繊維を簀桁(すけた)ですくい上げて製造する。コウゾを溶かし込んだ水には、トロロアオイの根から抽出した「ネリ」と呼ばれる粘性の溶液を加える。水の粘度を高め、繊維が水中に浮遊するようにするため必要なのだ。
そのトロロアオイは、5月の末頃に植え付ける。
種は一晩水につけていたものを、畑のうねに3~4cm程度の間隔で一粒づつ植えていく。苗の場合は15cm程度の間隔で植えていく。
植えた後には、追肥や芽かきをし、また、成長にともなって根元に土を盛り上げていくのだそうだ。また、根を大きく育てるためには、花芽は摘み取ってしまい咲かせない。栄養を根に供給するためだ。これらの作業は、畑を提供しているボランティアと地域おこし協力隊員が担った。ご苦労様でした。
我が家でも、トロロアオイを育ててみた。こちらは、盛大に花を咲かせた。トロロアオイの別名は花オクラ。花はサラダ等にして食用とすることができる。この花を食べてみるためだった。中華風サラダや三杯酢、また、天ぷらにもしてみた。くせがなく美味しい。そして、花の付け根には粘りがあるのだが、これが不思議な食感で面白かった。
トロロアオイは10月の末頃収穫した。我が家のは、花を咲かせたせいもあり、細い貧弱な根となったが、細くてもネリを取り出すことはでき、無駄になることはない。
コウゾの刈り取り・皮むき
秋も深まり初冬を迎えた。11月からコウゾの刈り取りが始まった。
刈り取ったコウゾの枝は、遠野の場合、75cm程度の長さに切りそろえて束にする。この後、水を張った大釜にいれ、上から大きな桶を被せて湯を沸かして枝を蒸す作業があるのだが、この桶の高さに合わせるためのカットなのだろう。
刈り取る枝は、2日間で3釜分になる程度の量だ。直径20m~25cm程度の束を50程となる。この束を遠野和紙工房「学舎」(遠野町入遠野越代)に運び、ここで1釜2時間程かけて蒸し上げる。
釜にコウゾの束を入れ、上から桶を被せる。
竈(かまど)に材木をくべ、釜の水を湧かし始める。湯が沸くと、隙間から盛んに湯気が噴き出してくる。2時間から2時間半、湯を沸かし続けた頃、釜から何ともいえない良い香りが漂い始める。メンバーは「甘い香り」というし、体験した小学生は蒸したサツマイモの香りと感じたようだ。
香りは蒸し作業の終了の合図。桶を取り外し、中のコウゾの束を順次取り出して、枝の皮むき作業に入る。
通常は写真のように戸外でするのだが、雨などが降れば室内作業とする。室内でみると、枝からもうもうと湯気が立ち上っている様子が良く分る。
作業はできるだけ素早く、そう、枝が冷める前にした方が良い。枝が冷えると向きにくくなるのだ。
枝の一方の端を両手で握って、それぞれの手は逆方向にねじる。こうしてできた皮の裂け目を片手でしっかりつまむ。片手は枝を押さえて、つまんだ手を枝から引き離すように動かして皮を裂き、枝からむきとる。
寒くなった時期の作業だが、この作業は手に温もりを覚えるし、時折枝の蒸した香りが鼻腔をくすぐり心地良い作業となる。
むきとった皮は、一つかみ程度を束ねて竿にかける。1週間程度乾かしたら、天地替えといっているが、束ねる位置を反対側に換え、再び竿にかけて乾かす。最初の写真がその作業の様子だ。十分乾けばいったん室内に保管する。
トロロアオイの種取りはストレス解消にいいかも
空き時間には、収穫したトロロアオイの種の取り出し作業もする。
トロロアオイに実ったさやはからからに乾いている。これを棒と使ってたたいて割り、中の種をたたき出していく。昔、小豆か何かで同じようなことをした覚えがある。ちり取りの作業は神経を使う細かい作業だが、その合間にやると気分上向く。ストレス解消ができそうな気分の良いただただ面白い作業だった。
しょしとり
さて、乾燥させたコウゾの皮は、基本的に枝に着いていた姿を保っている。すなわち、表皮にあたる黒皮や場合によっては汚れも着いたままなのだ。乾燥させた枝から、自然に黒皮がはがれ、周辺を散らかしてしまう状況だ。
コウゾの枝の採取が終われば、「しょしとり」という作業に入る。乾燥したコウゾの皮を一晩水に浸けて戻し、表皮にあたる黒皮、その下の黄緑色っぽい甘皮をそぎ落とし、白皮を取り出す作業だ。
産地によって様々な用具が使われるようだが、遠野では、藁(わら)で編んだ作業台と包丁を利用して、コウゾの皮から表面の黒皮、その下にある黄緑っぽい甘皮をそぎ落とす。台の端っこはお尻の下に敷いて固定し、台の上に皮を置き、包丁の刃を角度をつけてあて、皮を引き抜く感じで作業を進めるのだ。
この作業がなかなか大変だ。1度で必要な皮をそぎだすことができないため、何度か包丁をあてて皮をはいでいく。ここで枝の育ち具合が物をいう。よく育った厚い皮ならば、そいだ後に厚い白々とした皮が残る。この白皮をみると、作業甲斐を感じ、「よし」と心の内に満足感が湧いてくる。次の作業の意欲につながるのだ。
ところが、もともとの皮が薄いとこうはいかない。向こうが透けて見えそうな程薄い皮しか残らないことがある。同じ苦労、いや、場合によっては厚い皮以上に労力を注いでも実入りが少ないと、作業意欲も失せてくる思いだ。枝の育ちは、その後の作業効率まで左右するかもしれない。
前年度は、慣れない作業のためか、何度か手のひらにマメができた。
そぎだした白皮は再び乾燥させ、まとめて保管しておく。
ちり取り、打解、叩解
さて、いよいよ作業は和紙すきに近づいてきた。
ここが定かでない。まだ体験したことがないのだ。だいたい次のような作業が行われるようだ。流水に浸けてゴミ等を洗い流した白皮を、汚れ落としのためのソーダ灰を入れたお湯で煮て(煮熟=しゃじゅく)、再び水に浸ける。
そして次の段階は、ちり取りだ。白皮には、まだまだごみが残っている。このごみやカビ等で変色した皮を取り除く作業となる。仕上がった和紙のできを左右する大切な作業といえる。
水の中で皮を広げながら、中に隠れているごみ(ちり)を探して取り去る。変色した皮はつまみとる。こうした作業を繰り返す。寒い冬の、水の中での作業、しかも細かいごみを探す根気のいる作業で、なかなか大変。しかも時間がかかる。
ちり取りを終えた白皮を繊維化する作業に移る。「打解(だかい)」という。
石板など硬い台の上で、白皮を木槌などで叩き、繊維が見えるまで薄くのばしていく。
皮を叩いて薄くすると、透明感が出てくる。中に厚く削った鰹節のようなものが見えるうちは、叩き方が不十分で、こうしたものが見えなくなるまで叩き続ける。これも時間がかかる作業だ。
叩き終わったら、ビータという機械にかける。ビータは、水をためる水槽と長刀(なぎなた)形の刃がついている。水に皮を入れ、刃でかき回すことで、繊維をばらばらにしていく。
いよいよ和紙すき
いよいよ和紙すきだ。
すき作業は、和紙作りの全体から見れば、ほんの一瞬の作業、打ち上げ花火のように、最後の一瞬を飾る作業だ。もっとも最後といっても、すいた和紙は、水切りをして乾燥させるなど、後の仕上げの工程が残っているので、厳密には最後ではないだのが、和紙を紹介する場合、すいている姿が取り上げられる場合が多いので、多くの方はさっそうと和紙をすいている姿が和紙すきの最後の段階のイメージがあると思う。
ビーターで作ったコウゾの繊維を、水を張った漉き舟に溶かし込み攪拌する。
水には、トロロアオイの根から抽出した「ネリ」を加えてある。先にも書いたが、水の粘度を高め、繊維を均質に水中に浮遊させるために使われるものだ。
攪拌した原料液を簀桁(すげた)ですくい上げる。今回のすいている様子は、写真を撮り忘れてしまったので、今年3月にした体験時の写真を再掲する。
原料液をすくい上げるときは、簀桁の手前で水をすくい上げる。1回目は、そのまま向こう側に流し捨てる。「初水(うぶみず)というらしい。こうして簀の表面に薄い繊維の膜を作る。
2回目以降、少し多めに汲んだ紙を簀の上で前後あるいは左右に揺すりながら一定の厚さを作り、残った水は捨てる(調子)。この作業を数回繰り返して全体がほぼ同じ厚さに仕上げ、すき作業を完了する。
ただ、調べると、最後に1回目と同じ作業をするようだ。「捨て水」といい、紙の表明を仕上げる作業らしい。これは知らなかった。
3月には10回ほどすいてみて、精度はともかく、何となく形になったと思う。今回は、簀桁の上の水の重さに負けてしまった。体力が落ちたのか?・・いや、水の汲みすぎだろう・・と思いたい。次回、試す機会があれば、この点注意しようと思う。
漉き上がった紙は、ガイドに従って、重ねて一時保管していく。ネリには粘りがあるが、一定の時間で粘性を失い、すいた紙どうしがくっつくことはないらしい。
漉き上がった紙は、重しをかけて水を絞り、最後に乾燥させて完成品となる。太陽光で乾かすことも可能だが、内部に温水等を循環させて暖める乾燥機も使用される。
まだまだ不勉強
さて、こうして遠野和紙ボランティアの1年の活動とすき作業の体験をまとめてみたが、まとめてみれば、体験などに空白があることが分かった。年末、年始は活動はお休みだが、新年1月11日から再開される。こうした作業を通じて、しっかりと体験を積み、いっぱしの和紙の語り手になれれば幸いだ。
コウゾを増やすぞ
そう、コウゾの植え付けが良いかもしれない。
ボランティアが管理しているコウゾ畑は、その昔に、遠野地区で和紙生産が盛んだった頃、コウゾを植え付けていた畑を借り受けて管理している。あわせてコウゾの生産量を増やすために、新たに借り受けた畑等にコウゾの苗の植え付けなどもしている。
この作業は、3月の中旬、コウゾの皮から黒皮などを取り除く「しょしとり」をした後、ボランティア活動の年度の締めくくりに行われた。こうした株が育ち、立派な枝を育ててくれることを期待している。
植え付ける株は、既に植えられているコウゾの株から採取する。どうも、コウゾは、横に広げた根から新芽を発生させるようで。古い株の近くに新しい株が育っていることがある。枝が地について根を出すこともあるので、こうした株も活用する。
草刈り・芽かき
植え付けが終わり、年度の作業は終了するのだが、サクラ(ソメイヨシノ)が咲き、草が勢いを増すと、畑の草刈りボランティアが始まる。ボランティアはだいたい1ヶ月に2日ほどで、管理している8ヶ所のコウゾ畑を1巡して草刈りをする。
今年は草刈りは4月末から始めた。今年は草の育ちが早かったからのようだが、通常は5月になると、ボランティア活動がスタートするようだ。
コウゾは、根元から刈り取っているので、ご覧のように草の中に埋もれて、全く見えない。草を刈ることで日当たりを良くして、コウゾの枝の成育を助けてやるのだ。
ただ、月に1回程度では、草の生長に草刈りが間に合わない。また、春から秋にかけたコウゾの成育時期の作業は、草刈りの他、枝から伸びる脇芽を摘み取る芽かきや追肥などがある。これらの作業は、今年度から3名となった地域おこし協力隊の若者達が担ってくれている。
夏の暑い盛りの畑仕事などを考えると、彼らの流した汗と苦労には頭が下がる。しかし、そのおかげでコウゾの枝は立派に育った。予想収穫量は100Kg 程度じゃないかという。昨年が60kg程度だというから、その汗も苦労も報われたのではないだろうか。
トロロアオイ(花オクラ)
和紙作りにトロロアオイが欠かせない。和紙すきは「漉き舟」に、コウゾの繊維を溶かし込み、この繊維を簀桁(すけた)ですくい上げて製造する。コウゾを溶かし込んだ水には、トロロアオイの根から抽出した「ネリ」と呼ばれる粘性の溶液を加える。水の粘度を高め、繊維が水中に浮遊するようにするため必要なのだ。
そのトロロアオイは、5月の末頃に植え付ける。
種は一晩水につけていたものを、畑のうねに3~4cm程度の間隔で一粒づつ植えていく。苗の場合は15cm程度の間隔で植えていく。
植えた後には、追肥や芽かきをし、また、成長にともなって根元に土を盛り上げていくのだそうだ。また、根を大きく育てるためには、花芽は摘み取ってしまい咲かせない。栄養を根に供給するためだ。これらの作業は、畑を提供しているボランティアと地域おこし協力隊員が担った。ご苦労様でした。
我が家でも、トロロアオイを育ててみた。こちらは、盛大に花を咲かせた。トロロアオイの別名は花オクラ。花はサラダ等にして食用とすることができる。この花を食べてみるためだった。中華風サラダや三杯酢、また、天ぷらにもしてみた。くせがなく美味しい。そして、花の付け根には粘りがあるのだが、これが不思議な食感で面白かった。
トロロアオイは10月の末頃収穫した。我が家のは、花を咲かせたせいもあり、細い貧弱な根となったが、細くてもネリを取り出すことはでき、無駄になることはない。
コウゾの刈り取り・皮むき
秋も深まり初冬を迎えた。11月からコウゾの刈り取りが始まった。
刈り取ったコウゾの枝は、遠野の場合、75cm程度の長さに切りそろえて束にする。この後、水を張った大釜にいれ、上から大きな桶を被せて湯を沸かして枝を蒸す作業があるのだが、この桶の高さに合わせるためのカットなのだろう。
刈り取る枝は、2日間で3釜分になる程度の量だ。直径20m~25cm程度の束を50程となる。この束を遠野和紙工房「学舎」(遠野町入遠野越代)に運び、ここで1釜2時間程かけて蒸し上げる。
釜にコウゾの束を入れ、上から桶を被せる。
竈(かまど)に材木をくべ、釜の水を湧かし始める。湯が沸くと、隙間から盛んに湯気が噴き出してくる。2時間から2時間半、湯を沸かし続けた頃、釜から何ともいえない良い香りが漂い始める。メンバーは「甘い香り」というし、体験した小学生は蒸したサツマイモの香りと感じたようだ。
香りは蒸し作業の終了の合図。桶を取り外し、中のコウゾの束を順次取り出して、枝の皮むき作業に入る。
通常は写真のように戸外でするのだが、雨などが降れば室内作業とする。室内でみると、枝からもうもうと湯気が立ち上っている様子が良く分る。
作業はできるだけ素早く、そう、枝が冷める前にした方が良い。枝が冷えると向きにくくなるのだ。
枝の一方の端を両手で握って、それぞれの手は逆方向にねじる。こうしてできた皮の裂け目を片手でしっかりつまむ。片手は枝を押さえて、つまんだ手を枝から引き離すように動かして皮を裂き、枝からむきとる。
寒くなった時期の作業だが、この作業は手に温もりを覚えるし、時折枝の蒸した香りが鼻腔をくすぐり心地良い作業となる。
むきとった皮は、一つかみ程度を束ねて竿にかける。1週間程度乾かしたら、天地替えといっているが、束ねる位置を反対側に換え、再び竿にかけて乾かす。最初の写真がその作業の様子だ。十分乾けばいったん室内に保管する。
トロロアオイの種取りはストレス解消にいいかも
空き時間には、収穫したトロロアオイの種の取り出し作業もする。
トロロアオイに実ったさやはからからに乾いている。これを棒と使ってたたいて割り、中の種をたたき出していく。昔、小豆か何かで同じようなことをした覚えがある。ちり取りの作業は神経を使う細かい作業だが、その合間にやると気分上向く。ストレス解消ができそうな気分の良いただただ面白い作業だった。
しょしとり
さて、乾燥させたコウゾの皮は、基本的に枝に着いていた姿を保っている。すなわち、表皮にあたる黒皮や場合によっては汚れも着いたままなのだ。乾燥させた枝から、自然に黒皮がはがれ、周辺を散らかしてしまう状況だ。
コウゾの枝の採取が終われば、「しょしとり」という作業に入る。乾燥したコウゾの皮を一晩水に浸けて戻し、表皮にあたる黒皮、その下の黄緑色っぽい甘皮をそぎ落とし、白皮を取り出す作業だ。
産地によって様々な用具が使われるようだが、遠野では、藁(わら)で編んだ作業台と包丁を利用して、コウゾの皮から表面の黒皮、その下にある黄緑っぽい甘皮をそぎ落とす。台の端っこはお尻の下に敷いて固定し、台の上に皮を置き、包丁の刃を角度をつけてあて、皮を引き抜く感じで作業を進めるのだ。
この作業がなかなか大変だ。1度で必要な皮をそぎだすことができないため、何度か包丁をあてて皮をはいでいく。ここで枝の育ち具合が物をいう。よく育った厚い皮ならば、そいだ後に厚い白々とした皮が残る。この白皮をみると、作業甲斐を感じ、「よし」と心の内に満足感が湧いてくる。次の作業の意欲につながるのだ。
ところが、もともとの皮が薄いとこうはいかない。向こうが透けて見えそうな程薄い皮しか残らないことがある。同じ苦労、いや、場合によっては厚い皮以上に労力を注いでも実入りが少ないと、作業意欲も失せてくる思いだ。枝の育ちは、その後の作業効率まで左右するかもしれない。
前年度は、慣れない作業のためか、何度か手のひらにマメができた。
そぎだした白皮は再び乾燥させ、まとめて保管しておく。
ちり取り、打解、叩解
さて、いよいよ作業は和紙すきに近づいてきた。
ここが定かでない。まだ体験したことがないのだ。だいたい次のような作業が行われるようだ。流水に浸けてゴミ等を洗い流した白皮を、汚れ落としのためのソーダ灰を入れたお湯で煮て(煮熟=しゃじゅく)、再び水に浸ける。
そして次の段階は、ちり取りだ。白皮には、まだまだごみが残っている。このごみやカビ等で変色した皮を取り除く作業となる。仕上がった和紙のできを左右する大切な作業といえる。
水の中で皮を広げながら、中に隠れているごみ(ちり)を探して取り去る。変色した皮はつまみとる。こうした作業を繰り返す。寒い冬の、水の中での作業、しかも細かいごみを探す根気のいる作業で、なかなか大変。しかも時間がかかる。
ちり取りを終えた白皮を繊維化する作業に移る。「打解(だかい)」という。
石板など硬い台の上で、白皮を木槌などで叩き、繊維が見えるまで薄くのばしていく。
皮を叩いて薄くすると、透明感が出てくる。中に厚く削った鰹節のようなものが見えるうちは、叩き方が不十分で、こうしたものが見えなくなるまで叩き続ける。これも時間がかかる作業だ。
叩き終わったら、ビータという機械にかける。ビータは、水をためる水槽と長刀(なぎなた)形の刃がついている。水に皮を入れ、刃でかき回すことで、繊維をばらばらにしていく。
いよいよ和紙すき
いよいよ和紙すきだ。
すき作業は、和紙作りの全体から見れば、ほんの一瞬の作業、打ち上げ花火のように、最後の一瞬を飾る作業だ。もっとも最後といっても、すいた和紙は、水切りをして乾燥させるなど、後の仕上げの工程が残っているので、厳密には最後ではないだのが、和紙を紹介する場合、すいている姿が取り上げられる場合が多いので、多くの方はさっそうと和紙をすいている姿が和紙すきの最後の段階のイメージがあると思う。
ビーターで作ったコウゾの繊維を、水を張った漉き舟に溶かし込み攪拌する。
水には、トロロアオイの根から抽出した「ネリ」を加えてある。先にも書いたが、水の粘度を高め、繊維を均質に水中に浮遊させるために使われるものだ。
攪拌した原料液を簀桁(すげた)ですくい上げる。今回のすいている様子は、写真を撮り忘れてしまったので、今年3月にした体験時の写真を再掲する。
原料液をすくい上げるときは、簀桁の手前で水をすくい上げる。1回目は、そのまま向こう側に流し捨てる。「初水(うぶみず)というらしい。こうして簀の表面に薄い繊維の膜を作る。
2回目以降、少し多めに汲んだ紙を簀の上で前後あるいは左右に揺すりながら一定の厚さを作り、残った水は捨てる(調子)。この作業を数回繰り返して全体がほぼ同じ厚さに仕上げ、すき作業を完了する。
ただ、調べると、最後に1回目と同じ作業をするようだ。「捨て水」といい、紙の表明を仕上げる作業らしい。これは知らなかった。
3月には10回ほどすいてみて、精度はともかく、何となく形になったと思う。今回は、簀桁の上の水の重さに負けてしまった。体力が落ちたのか?・・いや、水の汲みすぎだろう・・と思いたい。次回、試す機会があれば、この点注意しようと思う。
漉き上がった紙は、ガイドに従って、重ねて一時保管していく。ネリには粘りがあるが、一定の時間で粘性を失い、すいた紙どうしがくっつくことはないらしい。
漉き上がった紙は、重しをかけて水を絞り、最後に乾燥させて完成品となる。太陽光で乾かすことも可能だが、内部に温水等を循環させて暖める乾燥機も使用される。
まだまだ不勉強
さて、こうして遠野和紙ボランティアの1年の活動とすき作業の体験をまとめてみたが、まとめてみれば、体験などに空白があることが分かった。年末、年始は活動はお休みだが、新年1月11日から再開される。こうした作業を通じて、しっかりと体験を積み、いっぱしの和紙の語り手になれれば幸いだ。
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