伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

いわき市議会は本日常任委員会

2017年11月10日 | 市議会
 いわき市議会は本日、4つの常任委員会がいっせいに開かれました。

 市議会の運営の仕組みはこうです。

 市長からの議案の提案は、全議員が出席する本会議で行われます。提案を受けた本会議では、市の部や委員会等を分けて分担している常任委員会に、それぞれの分野ごとに議案の審議を付託します。

 付託を受けた常任委員会が、執行部に説明のための出席を要請した上で、委員会を開催し議案を審議し、賛否を決します。この議案の賛否を、後日開かれる本会議に委員長が報告し、この委員会の結論を本会議で認めるかどうかの採決を行い、議会として議案の最終的な可否が決定します。

 今日開かれた常任委員会は、昨日の本会議で付託を受けた議案を審議し、全議案に対する可否を決定しました。

 私が所属する産業建設常任委員会は、農林水産部、産業振興部、土木部、都市建設部及び農業委員会に関することを担当しています。今回は農業委員を市長任命制に移行する法律改定に関する条例の会廃案や補正予算などがありましたが、私は農業委員の市長任命制にかかわる条例の改廃案3件に反対しました。

 議案に関して執行部に法改訂の内容について確認する質疑を行いました。

 そこで明らかになった法改定の問題点は以下の通りです。

 一つは、農業委員の人数が減らされ、その代わりに農地利用最適化推進委員が置かれることになりますが、この役割はほぼ農地利用の最適化に絞られ、より広い権限を持った農業委員会としての機能が弱められてしまうのではないか、ということです。

 これは農業委員会の役割を農地の適正利用に集約してく法律の改定趣旨に基づくもので、広く農業者の地位向上をめざしてきた農業委員会の役割を大幅に縮小するように見えます。

 二つ目に、これまでの農業委員会は、農地の利用や農業政策まで、広く農業者の利益と地位を守る意見を、法律に定められた建議書や意見書という形で関係行政機関に提出してきましたが、法改定によって農地の利用や集積などに関するものに限定してきたという問題があります。これも一つ目と同様、農業委員会の役割を大幅に縮小するものです。

 そして三つ目に、農業委員の公選制をやめ、市長の任命制に変えるという問題です。農業委員選出の透明性がなくなり、行政の意向を通すための委員選出という不公平を作り出しかねません。

 総じて言えることは、農業委員会を行政の下請け機関化し、その時々の農業政策の実施を担わせるための組織としかねないのです。

 そしてこの法改定の出発点には、農業委員会が名誉職化し、現場で働く農業者の意見を反映させることが必要だという点が根本にあったと思われるというのですが、現場の農業委員会事務局としては、本市の農業委員会は一部にそういう意見はあったけれども、十分に農業委員会としての役割を果たしてきたと考えているというのです。

 この現実から考えれば、法改定が必要あったとは思えません。

 こうした立場からこの議案に反対して討論を行いました。

 ちなみにその時の会議は、こんな形で進行するんです。



委員長 「質疑は他にありませんか。」

<なしの声>

委員長 「質疑がないようですので、本案について採決をいたしたいと思います。本案を原案通り可決することにご異議ございませんか。」

<異議がない委員は「異議なし」と発し、私は「異議あり」と挙手>

委員長 「ご異議がありましたので、ただいまから討論に移ります。発言をお願いします。」

<委員長と挙手>

委員長 「伊藤浩之君」




 こんな感じです。

 「異議あり」というタイミングを失ったりすると、そのまま可決となりますから、最初は若干緊張しましたね。いまではそんなことはありませんけれど・・。

 そんなこんなで、討論は以下のようなものでした。



 私は議案第1号に反対する立場討論いたします。(他に議案第2号、議案第14号がありましたが、討論の趣旨は変わらないのでこちらは討論を省略しました)

 本案は、農業委員の選出方法で選挙をなくすための条例廃止案です。

 第一は、「農地の番人」と位置付けられてきた農業委員会制度を骨抜きにするからです。 

 農地の管理についてはこれまで、農業委員会に許認可権が与えられ、農業委員会のもとに、地域の農業者による自治的な仕組みにより農地が守られてきました。ところが、法改定により農業委員会制度の根幹である公選制が廃止され市長による任命制に変えられ、さらに、農業者からの「建議」が除外されるなど、農業者の「自治」が大きく後退させられました。このことにより農業委員会は、農民の代表機関としての権限を弱め、市長など行政機関の恣意的な選任が懸念され、国が強行する農地の「最適化、流動化」のため、行政の下請機関に変えられたという問題点があります。

 第二は、今回の制度変更による規制緩和で、企業の参入が大幅に拡大し、日本の家族農業が壊され、これまで守り続けた農地制度の根幹が壊されるからです。

 農業委員会を構成する「認定農業者」には、株式会社でもなれることから、「農家」だけでなく、大手企業が農業委員会へ参入することも充分可能となっています。「農家の代表」、「農地の番人」と言われてきた農業委員会が、企業の参入へと、役割が大きく変わることも考えられます。

 新しく設けられた「農地利用最適化推進委員会」とは、「農地の集積、集約化」が必須の役割と位置付けられています。そして、農地の「最適化」の名のもとに、農地は「農地中間管理機構」に集められ、機構を通じて、代々守り続けてきた農地が、「地域を知らない」企業等に預けることになります。借手企業等にとっては、優良農地が初期投資も安く借り受けられ大きな利益を上げられます。しかし、農家は休耕地で置くと1.8倍の課税により、貸出す様に強いられます。また、貸し出しても優良な田畑のまま維持・管理されるのか懸念が残ります。今回の条例変更について地域の農家から、懸念する意見が多く上っています。

 第三は、制度変更によって、日本の食糧自給率がいっそう低下することになるからです。
 
 国は「強い農業、儲かる農業」と言っています。それは企業の参入による輸出中心の農業であります。逆に、国内には外国産農産物が大規模に入り、今でさえ価格低下に喘ぎ利益も薄い農家に大打撃を与えようとしています。農水省の試算では農業就業人口は10年間で51万人減少しました。政府はアメリカ抜きにTPPを推進しようとしていますが、農業就業者の減少にさらに拍車がかかり、農業がいっそう弱体化します。そうなれば、食料自給率は向上するどころか、国の試算どうり、20%台に落ち込むものであります。世界はいま「食料はいつでも輸入できる」状況ではありません。日本農業を再生し、食料自給率を向上させることこそ必要です。

 農業のあり方について国連は、大規模な企業的農業が環境を破壊し、逆に飢餓を広げていると批判し、中小農家の役割を重視しています。家族経営を基本にした多様な農家や生産組織などが、展望をもって生産できる環境をつくるべきで、本条例案に反対し国に農業政策の転換を求める本市議会の意思を明確にすべきと考えます。

 以上、討論してまいりましたが、みなさまのご賛同を心からお願いします。



 討論の趣旨は、地方の住民にとって問題あることについては、国の決定にただ従うのではなく、住民の代表機関である議会としての意思表示を何らかの形で行うべき、とのものです。法律によって運営される執行部には、なかなかできないことです。しかし、議会は相対的に自由な立場から判断できるので、こうした行動もありと私は考えています。

 それでも、結果的に議案に反対したのは、採決に加わらない委員長を除く8人の議員中2人で、議案は可決しました。結果は変わらなかったかもしれないけれど、市民の声を届ける仕事をできたと思っています。

 今日の委員会での可否は、16日に開かれる本会議に委員長報告が行われ、採択に付されます。


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