伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

いわき市議会閉会 / 2件に反対 / 東電抗議の決議案採択呼びかけるものの

2016年06月23日 | いわき市
 いわき市議会6月定例会が今日で閉会しました。

 私のきょうの本会議での仕事は意見書案の提案理由説明。案文の朗読だけですので、ま何とか無難に。



 日本共産党市議団としては2議案だけに反対し、高橋明子市議が代表して以下の通り討論をしました。



 22番、日本共産党いわき市議団の高橋明子です。

 私は議案第2号、及び議案第6号に反対する立場から討論いたします。

 まず議案第2号、いわき市個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例の改定についてです。

 同案は、法の改正に伴い、個人番号を利用する事務及び特定個人情報の提供ができる事務が追加されること、また、国の情報提供ネットワークシステムを利用した情報連携等により、市民の利便性の向上や負担の軽減、行政事務の効率化等を図ることが可能となる事務等について、本条例に新たに位置付ける等のため、所要の改正を行うとされています。

 今回、本市が個人番号を利用しようとするのは、法による事務として、予防接種法による予防接種の実施に関する事務、特定優良賃貸住宅の提供の促進に関する法律による特定優良賃貸住宅の管理に関する事務、また法によらない事務では乳幼児医療費と子どもの医療費の助成、重度心身障害者医療費の給付、ひとり親家庭等の医療費の助成、市営住宅の管理、心身障害者扶養共済制度掛金助成事業による掛金の助成、以上6事務を追加しようとしています。

 この個人番号の問題は情報漏えいの問題です。

 6月14日、大手旅行会社のJTBが、海外からの不正アクセスによって、最大で約793万人分の個人情報が流出した可能性があると発表しました。取引先を装ったメールの添付ファイルを開き、ウィルスに感染したのが原因だとされています。

 流出した情報は個人名や年齢、パスポート番号などで、そこには幸いにもクレジットカード番号は含まれず、現時点では個人情報が悪用された被害は報告されていないとされています。

 ネットワーク化され、電子情報がやりとりされる現代社会の危険な落とし穴を、あらためて思い知らされる事件ですが、個人番号でもそのような危険はないのかが問われていると思います。

 これまでの執行部の答弁では、この個人番号を利用するシステムは、独立した回線となっており、外からの侵入ができないことなど、そのセキュリティー対策の信頼性を強調してまいりましたが、

 確かに住基ネットは、原則として行政機関だけを結ぶ閉じたネットワークでした。

 しかし、個人番号の場合はこれとは違った展開にならざるをえません。

 一つには2018年をめどに民間での活用を含めた利用範囲の拡大が目指されており、そうなると、システムが民間も活用できるネット回線に接続されることになると考えられます。

 二つには、特定個人情報へのアクセス記録を本人がマイポータルで確認できるようにするとされていますが、そうすると、情報連携ネットワークシステムはどこかで個人が利用できるインターネットとも接続する必要が出てくると思われます。

 その結果、ハッカーをはじめとしたデータの不正利用を狙う者達が、容易に侵入してくることが可能になると考えられセキュリティーには重大な欠陥が生じるように思われます。

 しかも、個人に関連付けられる情報も莫大なものになります。

 関連付けられる情報は、氏名や生年月日にとどまらず、様々な行政施策にかかわる個人の情報等が紐づけられるようになり番号の利用範囲が拡大すればそれだけ名寄せ、集積される個人情報の範囲が拡大し、プライバシー侵害の危険性が増大していくことは間違いありません。

 今回、個人番号が利用される事務は、現時点では、独立したシステムで動いておりますが、これが将来的に、個人番号のシステムと接続されることになれば、行政の持つありとあらゆる個人情報を一つの番号のもとに収集することが可能となります。

 先ほども申しました、個人番号の民間での活用等が加わってくれば、その情報流出の危険性はさらに大きなものになります。

 以上、議案第2号には問題があります。

 次に議案第6号、いわき幼保連携型認定こども園の設備及び運営に関する基準を定める条例の改正について、申し上げます。

 同案は、2016年、平成28年3月31日に公布された「幼保連携型認定こども園の学級の編成、職員、設備及び運営に関する基準の一部を改正する命令」により、幼保連携認定こども園の学級の編成、職員、設備及び運営に関する基準の一部が改正されたことにともない、本条例も同様とする等のため、提案されたものです。

 改定内容の一点目は、1つの幼保連携型認定こども園において、園児の教育及び保育に直接従事する職員は2人を下回ることができないとされている配置の基準を緩和し、当分の間、このうちの1人を保育教諭と同等の知識及び経験を有する者とすることができるとする規定を追加すること。

 二点目は、配置すべき園児の教育及び保育に直接従事する職員のうち、当分の間、基準の3分の1を超えない範囲において、小学校教諭や養護教諭を職員とみなして配置することができるとする規定を追加することを内容としています。

 2月定例会で可決されたいわき市児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例及びいわき市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の改正と、ほぼ同様のもので、この提案の問題点は、この時の討論で詳細に論じていますが、まず第1に保育の質の低下への懸念です。

 本会議の質疑の答弁では、今回の提案は保育の質の確保に留意されたものとされておりますが、やはり保育の質の低下への懸念は残ります。

 委員会の質疑では、保育教諭と同等の知識及び経験を有する者について、市が実施する子育て支援研修を修了した者とされましたが、その研修内容は基本研修が8科目8時間、専門研修が12科目15時間、選択科目が6科目6時間から6時間半、そして実習が2日間であり、1科目につき1時間程度の受講時間であることが答弁されたと聞きました。

 この時間数から考えれば、本格的に幼児教育を学んだ有資格者との知識等とは大きな違いがあると言わざるを得ません。

 また、みなし配置ができる小学校教諭等については、幼児教育の専門的知識を持つことがないままに就労することが可能で、専門的知識は就職後に講座の受講等を促すこととされたと聞きました。ここでも十分な学びがないままに、幼児教育にたずさわることが可能となっています。

 保育教諭と同等の知識及び経験を有する者は、あくまでも保育士の補助的な業務とされているものの、その者が保育の現場に立つことを考えれば、やはり保育の質の低下が懸念されるといわざるをえません。

 ある新聞は「進む待機児童対策に懸念も」「数だけ確保、質置き去り」と見出しをつけた記事を掲載しました。

 これは企業主導型保育事業についての記事ですが、この企業主導型保育では保育士の配置基準を緩め、職員の半数以上が保育士であれば補助を受けられる仕組みをつくりました。つまり職員の半数未満が無資格者であっても保育所を設置することができることにしたわけです。

 こうした動きに対して保育事故の遺族らでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」の会員は、「数だけ確保しようという間違った方向に進んでいる。質の高い保育は置き去り、後回しにされている」と懸念の声をあげていることを紹介しています。

 ここで取り上げたのは企業主導型保育事業ですが、無資格者が保育にたずさわるという点では同様の問題があるものと思います。

 二点目は、当分の間という問題です。

 この措置は当分の間ということで、永続的な措置ではないとされています。質疑ではこの「当分の間」は「女性の就業率の上昇等により、保育の受け皿拡大が急速に進んでいる間」とされていますが、保育士確保の最大の課題である、待遇改善に十分な取り組みがない中で、保育士不足が解消される展望をしっかり持つことができないという状況があります。

 一般質問の答弁で保育士が確保できない原因の一つに、「労働・賃金環境での課題が保育士確保の困難性の一つ」とされました。同様に千葉県にある植草学園大学が千葉県内の3つの高校の生徒に行った調査でも、職業として保育士を選択しないと考えている生徒たちが、これを選択しない理由としてあげたのは、2割は仕事がたいへんそう、1割が給料がよくないと答えているといいます。

 こうしたイメージの定着が、保育士を敬遠する傾向を生みだしているのではないか、とさえ思えてくる回答内容です。

 保育士は他の職種の平均に比べても11万円安い給与できつい仕事。ここに抜本的にメスを入れることが必要ですが、一億総活躍社会の実現として示された保育士対策は月平均6000円の給与引き上げ、ベテランでも4万円に過ぎないものです。

 保育の現場には、「ほかの仕事と見劣りしないぐらいの給料でなければ人はこない」という声もあるといい、残念ながら保育の現場の実情に見合った対策になっていないと言わざるを得ません。

 こうした改善にとどまらず抜本的な改善が示されない中で、配置基準の規制を緩和することになれば、結局、資格を持ちながら保育の職につかない方々を、保育の現場に引き戻すこと、また、保育の職にあこがれを持ちながらも、これを敬遠してしまう若者たちを保育の職に誘導することが難しくなり、臨時的な代替措置が永続的に続く措置となりかねない問題があるものと思います。

 以上のことから、議案第6号には問題があります。

 以上議案第2号、議案第6号について討論してまいりましたが、みなさまの満場の御賛同を心からお願い申し上げまして、私の討論を終わります。



 結果的には、全議案が賛成多数で可決され、この他に意見書を4件採択しました。

 今回の議会開会中に、東京電力株式会社が設置した第三者委員会が、報告書を公表しました。この中では、福島第一原子力発電所事故の際に、炉心溶融・メルトダウンを判定する基準を持ちながら、これを活用せず、メルトダウンの判定を2ヶ月遅らせたことを指摘していました。その報道から4日後には、東電社長も隠ぺいを認めましたが、こうしたことから各会派に対して、東京電力の隠ぺい行為に抗議し、あらためて情報の徹底公開を求める決議の採択を呼びかけました。

 案文は次の通り。



東京電力株式会社の炉心溶融隠しに抗議し情報公開等に真摯に取り組むことを求める決議(案)


 東京電力株式会社福島第一原子力発電所が、大量の放射性物質を放出する事故を起こした平成23年3月からほぼ5年が過ぎた今年2月、東京電力は、炉心の損傷割合が5%を超えれば炉心溶融(メルトダウン)と判断する社内マニュアルがあったことを公表した。

 原発事故の後、東電が現実に炉心溶融を認めたのは、1号機で平成23年5月15日、2号機と3号機で同5月24日のことで、事故発生から2カ月以上が経過していた。マニュアルがこの時活用されていれば、事故から3日後の3月14日にはメルトダウンを判断できたことになる。

 6月16日に公表された、この問題を解明するために設置された第三者委員会の報告書によれば、平成23年3月14日の記者会見に臨んでいた同社副社長に、「炉心溶融」というメモを差し入れ「この言葉は使わないように」と、社長の命を受けた広報担当者から指示があったことを明らかにしている。

 この一連の経過からは、当時、東電がメルトダウン発生の公表を恐れ、この事実を極力隠そうとしていた姿勢が浮き彫りになってくる。

 原発事故の当時、事故の内容を正しく把握することは、事故への対応を決定する上で重要な要素になる。ところがこれが伏せられたことで、行政がとる対応にも、市民のとる避難行動にも大きく影響したことは間違いない。

 現場で作業にあたられた労働者たちの努力で、事故の様相は当初の範囲に結果的にとどまり、より深刻な事態になることはなかった。しかし、この時の事実隠しが市民を重大な危機的状態に陥れる可能性がなかったとは言えない。

 その後の報道でも、あるいは第三者委員会の報告でも、社内でマニュアルの存在を知っていた社員がいることが明らかになっている。こうした重要な問題が社内で共有されず、非常事態に活用できない事態があったことにも驚きを禁じえない。

 今回公表された第三者委員会の報告においても不十分な面があるとの指摘が広くされているところだが、東京電力株式会社においては、今回の情報隠しの問題を徹底解明するとともに、社内での情報共有をしっかりと図り、また、情報の徹底した公開を図るようあらためて強く求める。
以上、決議する。



 ところがこれに対して最大会派は東電への抗議ではなく、第三者委員会が推認したにすぎない官邸の関与に関して、徹底調査を求める意見書採択を働きかけてきました。

 事実が確定した東電の隠ぺいに抗議せず、推認したにすぎない官邸の関与の調査だけを優先する。こんな姿勢が許されるわけはありません。私たちは、この意見書には、文言の修正を加えた上、両方を議決するよう呼びかけましたが、最大会派は東電への抗議をしないことは会派の決定とこれを拒否。このため2つの提案とも事前の調整の段階で消え去ることになりました。

 7月14日には、7月定例会が開会しますので、これに向け、東電への抗議決議、また事実の解明を求める意見書、2件を準備をして、通常の市議会ルールにのっとって議会に提出するようにしたいと思います。

 今朝は雨降り。

 このドクダミの花に目をひかれました。




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