伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

委員会視察・佐賀市で市民活動団体への補助制度

2015年02月06日 | 市議会
 いわき市議会市民福祉常任委員会の視察2日目は、佐賀県佐賀市で市民活動団体を支援する市民活動応援制度、愛称「チカラット」について、制度の内容と運用状況について説明を受けました。



 いわき市でも市民が実行する様々なまちづくり事業に補助金を交付する支援制度がありますが、佐賀市でも同じようにそれぞれの部局が独自に支援制度を持ちながら、新たな支援制度として市民活動団体の財政基盤の確立と市民活動への市民の理解を深めることなどを目的に「チカラット」を立ち上げたのだそうです。

 その制度の仕組みはこう。
 支援の対象になるのは5人以上の加入する規約がある、市内に拠点を置き主に市内で活動している団体で、市内の1年以上の活動実績があるNPOなどの市民団体。支援を希望する団体は、事業内容と支援希望額(30万円限度)を募集期間に提出します。市は提出された事業を学識者などで構成する審査委員会にかけて、公益性など条件に合致するかどうか審査します。認定された事業を市は、市内で無料配布されているミニコミ誌に、チカラットの制度紹介とともに掲載し市民に投票を呼びかけます。投票期間は6月の1ヶ月間。投票資格は18歳以上の市民で、1人最大3事業に投票することができます。市民団体は、支援希望額を上限に投票数に応じた支援金を受け取ることができます。他の補助金との併用も可能です。

 事業実施後に市民団体は実績報告書を提出することが必要で、提出された報告書は審査委員会で実施内容を審査し、数値目標などの達成状況を確認し、アドバイスなども加えられ、事業が確定し支援金が支出されます。支援される事業は1年限りということはありませんが、2年目以降の応募の際には、前年からどのように改善されたのかなども申請で明らかにすることが必要だといいます。実際は、毎年3分の1程度の団体が入れ替わっているといい、これまでのべ90団体がチカラットに応募しているといいます。

 この事業のために市は約1320万円の予算を組み、このうち支援金に回るのが約800万円、残り500万円は事業や制度の啓発などの費用です。啓発には、先ほどのミニコミ誌への掲載のほか、バスの車体に広告を掲載するラッピングバスの通年運動、また投票対象の事業をパネルにして大型商業施設などに掲示し、投票を呼びかける出前の投票受付なども行っているといいます。

 この制度の特徴は市民の投票にあります。事業開始年度の2011年度の投票率は5%程度だったといいます。2年目は初年度に本人確認のための書類添付を義務付けたことが低投票率の原因と分析したことから、本人確認は押印だけで良いことにし、制度の周知もされてきたこともあって10.5%の投票率になったといいます。市は投票者の資格は住基台帳と付け合せをして確認するそうです。

 さてこの事業は市民に市民活動に対する感心を高め、市民活動への参加と実践を促進することが目的ですが、現実に広がりがあるのかは、きちんとした確認をしてきませんでした。ただのべで90団体が応募していることを考えれば一定の成果を上げているということが言えるのだと思います。

 いわき市の場合は、まちづくり等に、市民協働部、商工労政部などで補助金を持っていますが、多くは3年間の期限付き補助金です。一方、清水市長がまちづくり懇談会の際に、「地域のこれだけはという事業に何らかの支援策をとれるように検討したい」と言明し、昨年の市議会9月定例会で「地域のイベント等で地域の特色を生かし、かつ、本市を代表するにふさわしいものと判断される事業につきましては、庁内の関係部署で構成する検討組織において、補助金のあり方について検討してまいりたいと考えております」と答弁しています。

 今回の視察で学んだ「チカラット」とは違う内容ですが、これまでと違った形の補助制度を作ろうとしているところです。さてその時に「チカラット」のような仕組みは、どのような意味を持つのか考えてみたいと思います。

 一つは、これまでも様々なまちづくりの取り組みが行われてきました。8日に行われるいわきサンシャインマラソン、フラガール甲子園など全国的にも幅広く親しんでいただいている事業もあります。こうした事業には、その規模の大きさから考えても、従前の補助制度を安定的に支給できるような仕組みに作り変えることも考えていく必要があると思います。市長が「これだけは」という事業はその枠組の中で考えるようにすることが良いのではないと思います。

 二つは、従前の枠組みとは別の補助制度を考えた時、「チカラット」のような仕組みは、利用する団体から考えれば、支援金額が定まらないために事業計画を立てにくいという側面持つことになります。一方では市民の感心を高めて、公益的市民活動への主体的参加を広げるきっかけになるようにも思います。

 こうしたことから従前の仕組みによる補助事業を残しつつ、チカラットのような取り組みを公益事業への市民の自主的参加を広げる一つのツールとして考えても良いと思います。ただ、予算削減圧力が強いもとで新たな補助枠を作る、つまり歳出予算を増やす方向の提案は、執行部側には拒否感も強いのだろうと思います。市民との協働を広げるという行政課題が切実なものになっている時に、どのような取り組みをしていくのか、ということなのでしょう。


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