深夜放送
真っ暗な部屋の布団のなかで
僕はじっと天井をみている
ラジオの声は都会の香りをのせて届く
ここは僕の故郷
東京で一人眠るとき
思い出していた
石垣のある裏路や
神社の横の大きな楠の木の
すぐそばで、僕は今眠る
あんなにあこがれていた僕の故郷
僕はじっと天井をみつめる
ラジオは都会の雑踏をのせて来る
おやあ、何も見えないので
東京のアパートに寝ている様
しかし
じきに明るくなり
部屋の様子がわかるでしょう
漁船の汽笛が聞こえます
ラジオと汽笛の二重奏
これじゃあ都会の香りも
たちまち消えてしまいます
(1976.5.15~2011.1030)