A氏から電話が入った。
「いつもの年よりも気温が高めみたいだから、新しいキノコ採り場に行ってみないか?」
「おおっ、行く行く!是非、よろしく!」
「俺の車でないと行けないような道だから、運転は俺な。」
ありがたいばかりの申し出なのだが、前回偵察に行った時の雰囲気だと、マタギの車(プリウス)でも問題なく行けそうな気もするのだが・・・。
それに対してA氏は、
「この道を走るために、俺はこの車(ジムニー)を買ったんだと思った。」
と言う。
奥山の林道を走るときも、マタギの車に乗ることに異論を挟まないA氏がこう言うのだから、よほどのダートコースなのだろう。少々の不安と、大いなる期待を抱いて出発。
遅い遅い夜明けを待って林道に入る。
道の凹凸は進むにつれて深くなり、道路幅も極めて狭くなってきた。
確かに、マタギの車では腹をすって進めなくなりそうだ。しかも、ここに対向車とか先行車とかがいたら、バックするしかないよね。考えただけでも恐ろしい。
だって、車の脇は千尋の谷なんだもの。
車の脇は深い谷でした
車が進めなくなった。
道路の行き止まりだ。
「ここから歩こうと思っていたんだけど・・・。」
あいにく、雨が降り続いている。雨と言うよりもみぞれですね。この時期の雨は、身体にこたえる。暫く車中で待つが止む気配無し。
「やめとくか。」
「うん。ここで風邪ひいたら、職場でなんて言われるか分からない。」
このコロナ禍での発熱は、周囲に多大な迷惑をかけることになる。無理は出来ません。
明るくなってきた林道を、キノコウオッチングしながら引き返すことにする。
立ち枯れにナメコがワンサカ
ムキタケも大量に生えていました
この木にもナメコが出てると言うことは・・・
車から眺めるだけで、凄くたくさんのキノコ木を見つけることができました。これは、大発見と言ってよいでしょう。
「今年は、もう終わりだけど、来年楽しみだね。」
「多分、この辺りには、まだまだこういう場所があると思うんだ。」
「うん。面白そうだ。それにしても立木のキノコが多い。」
「ナラ枯れの木にキノコが出てるんだ。」
これは気になる。帰宅して、『ナラ枯れ』について調べてみた。すると、意外なことが分かってきた。
直接の原因は、カシノナガキクイムシ(略称カシナガ)という昆虫が増殖してナラの木に寄生しナラ菌を繁殖させる。それがナラの木の成長を止めて枯らしてしまうという仕組みらしい。ここ二十数年の間に顕著になってきた現象だ。
マタギは、あまり調べもせずに「これも温暖化か」ぐらいに考えていたが、別の理由によることが分かった。ここにきて人間の生活スタイルが変わったためのようなのだ。
超簡単に言うと、炭や薪を使わなくなったことにより、里山のナラの木の新陳代謝が滞ってしまったためということらしい。
S川なら若い方の木なんだけど、立ち枯れ多数
普通なら伐採されるはずのナラの木が取り残されて大型化する。そういう木を好むカシナガが喜んで寄生し、仲間を増やしていく。その結果、里山のナラの木は、中途半端に大きい状態で(立木のまま)枯死してしまう。大型のまま枯れたら、木材腐朽菌であるキノコさんの出番になる。その結果、立木にキノコが生える。こんな図式が成立しているようなんですね。
結果として、生命のバランスが傾いてしまい、現在、カシナガとキノコとマタギ達が得してる状況と言っていいのかな。
はっきり言って、この状況は長続きしません。栄養源であるナラの木が減っていくんだから。生産者が減れば、当然、消費者も生きていけなくなります。
どの辺で折り合いがつくのか。見届けることは出来ないかもしれないけれど、今は、その恩恵にあずかるべきでしょうね。
自然の神様達、よろしくお願いします。出来ることなら、里山の自然を生かした文化(キノコ採りを含めたもの)が途絶えませんように。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます