「あんた、それ、懐メロやんか」
と突っ込みたくもなるが、拓郎や長渕やチューリップなんぞに熱心だ。
父は思い出している。
「通らばリーチ!」
と端牌を捨てた途端、
「あっ、それ、ロン、九蓮宝燈ねっ!」
あまりのショックにぼくは悲鳴代わりに歌い出していた。
「あ・~・だ・か・ら・こ・ん・や・だ・け・ワ~」
チューリップには苦い思い出がある。それを就寝前のひと時に聞かされるのか。
ぼくはクラシックのコーナーに注目する。フランク・キャプラの作品があり、ギャグニーのギャングものがあり、「イヴの総て」、「グランドホテル」、「我が谷は緑なりき」まである。ボギーの「三つ数えろ」、「アフリカの女王」を見つけて微笑んでしまう。モノクロの作品が多く、若者に敬遠されそうだが、なかなかどうして、ぜひ見てみるべきである。最近の映画は、CGや宙吊りを駆使してジェットコースターのように目まぐるしく、アクションのみに目が奪われがちで、ストーリーが妙味に乏しいものが多い。その点、伏線が微妙に張られ、ストーリーの起伏にわざとらしさやあざとさが見られない昔の作品は、秋の夜長、じっくり鑑賞するにはもってこいである。それと白黒の魅力は、色彩を自分の頭のなかで作り出すことが出来るし、照明に工夫が凝らされているから、コントラスト、彩度、明度が絶妙のバランスで保たれ、独特の雰囲気をかもし出している。色彩に頼らずとも映像美が際立っている。
クリスマスにはまだ早いが、「34丁目の奇跡」や「素晴らしき哉、人生!」は12月の定番であろう。
「毒薬と老嬢」を借りることにする。フランク・キャプラ監督、1944年の作品である。学生時代、これを観たのはどこの映画館だったろう。映画館ではなく、どこかのホールだったかもしれない。キャプラの世界は、落語の人情噺に通じるところがあって好きなのだ。人の温もり、思わずニヤリとさせられるユーモア…、すべてがいい。このコーナーで見つけたキャプラの作品は、前述の「素晴らしき哉、人生!」、「毒薬と老嬢」の外にも、「我が家の楽園」、「或る夜の出来事」がある。気が向いたら手にとって欲しい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます