素材表紙は湯弐さんからお借りしました。
「天上の愛地上の恋」「薔薇王の葬列」二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。
「ハイリンヒ様、おはようございます。」
「ハイリンヒ様、お召し替えをなさいませんと。」
翌朝、女官達がそう言いながらハイリンヒの部屋に入ると、そこには寝台の上で互いの手を握り合いながら眠っているリヒャルトとハイリンヒの姿があった。
「リヒャルト、一緒に朝ご飯食べようよ!」
「いいえ、俺は・・」
「ハイリンヒ様がそう仰っておられるのですから、遠慮するものではありませんよ。」
「は、はい・・」
ハンガリー人の女官からそう言われ、リヒャルトはその日の朝からハイリンヒと食事を共にするようになった。
「ねぇ、リヒャルトはどうして左右の目の色が違うの?」
「これは生まれつきなので、何故左右の目の色が違うのかは俺にもわかりません。それよりもあの白い犬は・・」
「あの子、犬じゃなくて狼なんだ。昔ここへ来た時、森で怪我をして倒れているのを見つけて世話をしていたら、いつの間にか僕に懐いちゃったんだ。」
「そうなのですか。名前はお付けになられたのですか?」
「ううん、まだ付けていないんだ。これといった名前が思い浮かばなくて。リヒャルト、僕と一緒にこの子の名前を考えてくれない?」
「わかりました。」
リヒャルトがそう言った時、窓の外から賑やかな笑い声が聞えて来た。
ふと窓の外を見ると、邸宅の中庭ではルドルフとアルフレートが、ルドルフの愛犬・アレクサンダーと戯れていた。
「どうやら仲直りできたようですね、あの二人。」
「そうだね。」
イシュルで休暇を過ごした皇帝一家は、王宮があるウィーンへと戻った。
「リヒャルト、どうしてもメルクに行っちゃうの?」
「休暇の時には必ずこちらへ帰って来ますから、どうか聞き分けてください。」
「嫌だよ、ずっと一緒に居たのに、独りぼっちになるなんて耐えられないよ!」
「ハイリンヒ様・・」
リヒャルトとアルフレートがメルクへと発つ前日の夜、ハイリンヒはリヒャルトに駄々を捏ね、リヒャルトを困らせた。
「俺がメルクに行っても、アマリリスが居るでしょう?」
「そうだけど、アマリリスは言葉が話せないよ。ねぇ、毎日僕に手紙をくれる?」
「ええ、毎日手紙を書きますよ。だから、俺のメルク行きを許していただけますね?」
「わかったよ・・」
リヒャルトはそう言ってハイリンヒと毎日手紙を出すという約束をかわし、リヒャルトはアルフレートと共にメルクへと向かった。
メルクでの集団生活は厳格な規則などがあり、最初は慣れなかったものの、それぞれ友人ができ、二人は次第にメルクでの生活に慣れていった。
「それ、ハイリンヒ様への手紙かい?」
「ああ。毎日手紙を出さないとハイリンヒ様は駄々を捏ねてしまわれるから・・」
リヒャルトが図書館でハイリンヒへの手紙をしたためていると、そこへ友人のマリウスがやって来た。
「そういえばさっき、君の幼馴染も手紙を書いていたよ。きっとその相手はルドルフ様だと思うなぁ。」
「どうして、そう思うんだ?」
「だってあいつ、ルドルフ様の話ばかりするんだもの。まるで恋人の話をしているかのようだったぜ、あいつ。」
「恋人、ねぇ・・」
一時期険悪な関係だったルドルフとアルフレートだったが、最近二人は毎日手紙のやり取りをしたりしている。
「それで、お前はハイリンヒ様とどういう関係なんだ?」
「別に、ただの友人同士だが・・」
「嘘つけ。ハイリンヒ様への手紙を書いている時のお前の顔、まるで恋人へ向けて手紙を書いているような顔だったぜ。」
「そんな・・」
リヒャルトは友人からそんな指摘を受けて頬を赤く染めながら、ハイリンヒ宛の手紙を封筒に入れた。
「アマリリス、リヒャルトから手紙が届いたよ!」