もうすぐそこまで春がやって来ているという感じですね・・・。でも、それは同時に花粉もやって来るという事です。今年の花粉飛散傾向は、近畿地方で例年比140%、前年比260%と予測されていますから、花粉症の私としては、もう春は来なくていい・・と思ってしまいます。以前にも言いましたが、花粉症の症状が出る前に薬を飲み始めるのが効果的なので、2週間ぐらい前から花粉症の薬を飲んで花粉に備えています。
という事で、今回は2月14日に発表されたスクーデリア・フェラーリの2023年F1マシン「SF-23」のお話です。他のいくつかのチームの2023年F1マシンの発表は、ショーカーやレンダリングに今季のカラーリングを施した「偽物」だったのに対し、スクーデリア・フェラーリは、集まった多くのファンの前で本物の「SF-23」を公開するだけでなく、発表直後にフィオラノのトラックで公開シェイクダウンを実施するというパフォーマンスを見せました。発表直後のシェイクダウンは、マシントラブルなどのリスクが伴うにもかかわらず、公開シェイクダウンを実施したのは、今季マシンSF-23の信頼性に余程の自信があったという事なのでしょうか。いずれにしても、近年の新車発表会に「偽物」が使われる傾向があるのに対して、F1名門チームが一石を投じた新車発表となりました。
画像は、スクーデリア・フェラーリの2023年F1マシン「SF-23」です。昨シーズンのスクーデリア・フェラーリは、チャンピオンシップを制したレッドブルよりも4回多い12回のポールポジションを獲得するほどの速いマシンを手に入れていました。したがって、SF-23が昨シーズンの哲学を引き継いでいることは自然な成り行きです。昨シーズンは、速いマシンを手に入れたにもかかわらず、パワーユニットの信頼性への問題やレース戦略のミスなどにより、タイトル争いにおいてチームは自滅した形となってしまいました。チームは、昨シーズン中からパワーユニットの信頼性回復に取り組み、その作業は冬の間に完了し、パワーユニットは昨シーズン序盤のようなアグレッシブな走りが安定的にできる事を可能にしていると考えられます。
空力面では、新しい空力レギュレーションに対応するために垂直方向のダウンフォースを増加させ、望ましいバランス特性を実現させています。また、サスペンションの設計も変更され、空力をサポートするとともに、サーキットでのクルマの調整幅を広げています。最も明白な変化は、フロントサスペンションの領域でロートラックロッドに移行している事です。フロントウイングもノーズの構造も異なっており、ボディワークも昨シーズンのものをより極端なバーションに仕上げています。サイドポッドの前面下端がスカラップされ、昨年のフェラーリをよりスリムにしたような印象になっています。これは、他に発表された多くのマシンがそうであったように、ラジエター部分がそこからショルダーのあたりに移動していることを示唆しています。
その他にも多くの進化が見られる中で、SF-23において特に注目を集めているのが、フロントウイングに搭載された5つのスロットギャップセパレーターと「Sダクト」と呼ばれる空力システムです。Sダクトは、モノコックの両端に取り付けられたインレットから空気を取り込み、モノコックの中にあるS字型のトンネルを通過して、サイドポンツーン上面のアウトレットから排出するもので、その狙いは、サイドポンツーン上面の空気の流れを加速させ、フェラーリが採用しているバスタブ型コンセプトのパフォーマンスを上げることにあります。また、フロントウイングにあるスロットギャップセパレーターは渦を作るような角度になっており、インレットに向かう気流を加速させるようになっています。
このスロットギャップセパレーターは、昨シーズンのアメリカGPでメルセデスF1が導入しようとしていたもので、合法性に疑問が生じたため、土壇場で自主的に採用を取りやめたデザインです。スロットギャップセパレーターは「機械的、構造的または計測的な理由でのみ」装着することができると定められていましたが、FIAは「機械的、構造的または計測的な理由でのみ」を定義することが不可能と判断し、2023年からその文章を削除したため合法性が高いと考えられます。そのため、他のライバルチームがスロットギャップセパレーターをコピーする事が可能になったと言えますが、コピーする事は難しく事実上、不可能だと思われます。
その理由は、スロットギャップセパレーターによりインレットに向かう気流を発生させ、Sダクトによってサイドポンツーン上面の空気の流れを加速させるという一連の空力システムとなっているため、この空力システムをコピーするにはマシン全体の空力システムを見直す必要があるからです。特にSダクトはモノコックが特殊な形状となっているため、他のチームがこのアイテムを採用するためにはモノコックを作り直さなれけばなりません。現在はコストキャップ(予算制限)があるため、シーズン中にこれらを変更することは不可能と言えるでしょう。
昨日までの3日間、バーレーンにおいてプレシーズンテストが行われました。プレシーズンテストを見る限りレットブル・レーシングが速さ・安定性において一歩リードしているようです。しかし、各チームは、本来のマシンポテンシャルを温存している場合もあるので、本当のところはシーズンが開幕してみないと分かりません。前述しましたフェラーリのユニークな空力システムが、他のライバルチームへのアドバンテージとなり、キミ・ライコネン以来となるドライバーズチャンピオンを獲得する事ができるでしょうか・・・。2023年F1サーカスの開幕戦バーレーンGPは3月5日に決勝が行われます。