滋賀県 建築家 / 建築設計事務所イデアルの小さな独り言

建築家・清水精二のブログ、何でもあり独り言集・・・。

大津京駅前-プロジェクト/滋賀県 建築家 建築設計事務所イデアル

2023年09月04日 | 建築

残暑が厳しいですね・・・。何度か雨が降れば少しずつ涼しくなると思うのですが、今週は雨の日が多そうなので涼しくなることを期待しましょう。という事で、今回はJR大津京駅前でのプロジェクトを紹介します。(なお、このプロジェクトは、お施主さんの諸事情から中止となり、計画建物はアンビルドとなっていることを予めお断りしておきます)

 

駅前プロジェクトは、飲食店(軽飲食)のテナント用に木造2階建ての貸店舗を建設するプロジェクトでした。通常、貸店舗の場合、テナント側が店の内容に合わせて内装を決めますが、このプロジェクトでは、お施主さんの要望により店舗の内装は木の柱や梁などを現しにした木が感じられる内装とし、このような内装の趣旨に合ったテナントに店舗を貸したいとの事でした。このお施主さんの要望により、貸店舗の内装を木が感じられる空間になるようにしました。

コスト面から特殊な工法による木造フレーム(柱・梁・筋交い)を見せる事は避け、在来工法を工夫して木造フレームを現しとし木が感じられる内部空間にしました。上の画像は、カフェを想定して作成した貸店舗の外観パースです。こちらのタイプ-Aのデザインは、内部空間だけでなく、外部も木を感じてもらえるよう外壁を木板張りとしました。木板で覆われたマッシヴなデザインの建物とする事で、駅前の一角を癒しの空気が流れる場に出来るのではないかと考えました。

 

上の画像も同じくカフェを想定して作成した貸店舗の外観パースですが、こちらのタイプ-Bの店舗デザインは、お施主さんからガラス面を大きくしたタイプも提案してほしいと言う要望があり考えたデザインです。ガラス面を大きくするため、ビル用のカーテンウォールを木造建物に取り付ける細工をしているので、部分的に特殊な木造工法を採用しました。タイプ-Bは、ガラス面が大きいので、木が感じられる内部空間が外部からも感じ取れますが、その反面、テナントによっては、外部からの視線を緩やかに遮る工夫が必要となります。

タイプ-Aを提案した際に、外壁の木板張りについて、メンテナンスが大変なのでは・・という指摘があったので(実際のところ、木板の経年変化を理解してもらわないと採用できない)、タイプ-Bの外壁はガルバリウム鋼板としました。プロジェクトは中止となりましたが、お施主さんはタイプ-Bを気に入って下さっていました。でも、タイプ-Bの方がコスト高になるので、予算的に微妙かな・・というところはありました。コスト的なところを度外視すれば、私としてはタイプ-Bで外壁を木板張りにしたパターンが一番良いのではと思っていましたが、いかがでしょうか・・。

今回は、中止となったプロジェクトが埋もれたままになってしまうのは、寂しいと思い本ブログで紹介する事にしました。これからも、お施主さんの了承が得られる場合は、中止や見送りとなったプロジェクトを紹介していきたいと思っています。

 

 

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ダイセンソリューション オフィス完成しました/滋賀県 建築家 建築設計事務所イデアル

2023年07月09日 | 建築

蒸し暑い日が続きますね・・・。今回は、以前の記事「小規模オフィスのファサードデザイン」でお話していました建物が完成しましたので紹介する事にします。

 

[Photo 西岡千春]

画像は、ダイセンソリューション オフィスの外観です。外観で目を引くのは、不規則な幾何学パターンのアルミフレームとアルミルーバーからなるアルミ装飾フレームです。ダイセンソリューションのグループ会社がアルミサッシやアルミ製品を扱っている会社という事もあって、お施主さんからアルミを使ったファサードデザインを提案してほしいと言われました。アルミフレームとアルミルーバーを不規則な幾何学パターンとするアイデアはすぐに思いつきましたが、問題は木造の建物なので、アルミ装飾フレームをどのように支持して建物に取り付けるか・・という事でした。

風圧力などでアルミ装飾フレームの取付部は動くので、外壁で直接支持することは避けなければなりません。そこで、中大規模木造で使用される構造用ビスと木組みを併用した腕木を取り付けることにより、外壁から飛び出た出窓枠や縦・横の装飾枠(黒い枠部分)を設け、この出窓枠や装飾枠によってアルミ装飾フレームを支持するようにしています。出窓枠や装飾枠には、アルミ装飾フレームを支持しているビスが風圧力などで動いても追従できる防水材を施すことにより、防水性や耐久性を確保しています。アルミ装飾フレームを外壁から飛び出た出窓枠や装飾枠により支持することで、不測の事態が生じても建物本体の構造体への影響を極力避けるような方法を採用しています。

ファサードデザインの話に戻りますが、アルミ装飾フレームを支持する出窓枠や縦・横の装飾枠も不規則な幾何学パターンとしていますので、それぞれの幾何学パターンが交わり重なり合うファサードデザインとなっています。また、幾何学パターンを縁取る庇と袖壁の見付を厚くすることで、強度や納まりに必要なアルミ装飾フレームや出窓枠・装飾枠の各サイズが、建物のヴォリュームに対して無骨にならないよう視覚的な操作をしています。このように庇と袖壁による縁取りを大きくし、交わり合う二重の幾何学パターンを繊細かつ奥行きがあるように見せることで、小規模なオフィスでありながら、迫力あるファサードデザインとすることを可能にしています。

 

 

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小規模オフィスのファサードデザイン/滋賀県 建築家 建築設計事務所イデアル

2022年10月02日 | 建築

窓を開けていると庭の金木犀(キンモクセイ)から甘い香りがする季節になりました・・・。オレンジ色の花を咲かせ、強い香りがする金木犀はよく知られていますが、白い花を咲かせる銀木犀(ギンモクセイ)もあることをご存知でしょうか。私は銀木犀を何度か見たことがありますが、やはり金木犀の方が圧倒的に多く目にしますよね。ちなみに、銀木犀の花は強い香りはしないようです。

 

という事で、今回は来春に竣工予定している滋賀県大津市の小規模オフィスについて、そのファサードデザインのお話をしたいと思います。(前回の記事で、建築家が建築の話をしても面白くない・・と言っておきながら、建築のお話です)

画像は、小規模オフィスの外観パース(完成予想図)です。ファサードのデザインで目を引くのは、不規則な幾何学パターンのアルミフレームとアルミ格子からなるアルミ装飾フレームです。この建物は木造なので、防水性や耐久性を考慮して、アルミ装飾フレームを外壁で直接支持することを避け、外壁から飛び出た出窓の装飾フレームによって支持しています。このアルミ装飾フレームを支持する出窓装飾フレームも不規則な幾何学パターンとしていますので、それぞれの幾何学パターンが交わり重なり合うファサードデザインとなっています。

また、幾何学パターンを縁取る庇と袖壁の見付を厚くすることで、強度や納まりに必要なアルミ装飾フレームや出窓装飾フレームの各サイズが、建物のヴォリュームに対して無骨にならないよう視覚的な操作をしています。このように庇と袖壁による縁取りを大きくし、交わり合う二重の幾何学パターンを繊細かつ奥行きがあるように見せることで、小規模なオフィスでありながら、迫力あるファサードデザインとすることを可能にしています。

この小規模オフィスは、今月から工事が始まり来春竣工する予定なので、完成しましたら本ブログでも紹介しようと思っています・・・。

 

 

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「建築裁判は勝てない」は本当か、建築裁判で勝つためには・・建築訴訟について思うこと。

2022年07月30日 | 建築

今回は建築訴訟についてお話したいと思います。3年前に私と仲間の建築士が建築専門家として、訴訟協力していた重大な瑕疵があるマンションの建て替え裁判において、建物の解体・建て替えを認める判決が下されました(その記事はこちら「建築訴訟でマンション建替えの判決が下された!!」)。この判決は構造耐力に関わる重大な瑕疵がある大規模なマンションの解体・建て替えを認めるものとしては、国内で初めての判例となりました[近年では大規模な欠陥マンションの建て替えも数例ありますが、これらは事業主・施工者側が自主的に建替えているもので訴訟での判決によるものではありません]。これまで日本の建築裁判では、社会的経済損失が大きいという理由など(他にも法律解釈の問題もあります)により、建物の解体・建て替えが認められることはハードルが高かったことから、大規模なマンションの解体・建て替えを認める判決が下されたことは画期的な出来事でした。

このような実績もあってか、時折り建物の瑕疵(契約不適合)※1を主張する建築主・消費者から訴訟への協力依頼があります。主な依頼は「建物の構造耐力に関わる重大な瑕疵について、その危険性を工学的に立証してほしい」というものです。いつも私が依頼者に対して最初にお話することは、建築訴訟はやめて話し合いで解決するように考えてほしいという事です。なぜなら、建築裁判(重大な瑕疵を主張するものに限る)で勝つには膨大な時間と労力と費用を要するため、瑕疵主張する建築主・消費者に多大な負担を強いることになるからです。建築主・消費者側の弁護士や建築専門家の資質は別として、莫大な資力が無ければ裁判には絶対勝てません。もちろん、精神面での負担やストレスも尋常ではありません。ですから、納得がいかない理不尽な事があっても、話し合いによる折り合いをつけて解決することを勧めます。

とは言っても、折り合いがつかないので、提訴しようとしている若しくは訴訟になっているワケですから、前述したようなお話をしたうえで、それでも訴訟をするという依頼者には、生半可な気持ちでは到底勝てないので、相当の覚悟をしてもらうことを条件に訴訟協力に応じる場合もあります(重大な瑕疵を主張するものに限る)。その他にも訴訟協力する条件としては、私以外に2人以上の建築構造技術者を加えたチームを編成して瑕疵立証に取り組ますので、関係資料を読み込んだうえでチームとして、瑕疵による建物の危険性を工学的に立証可能と判断できる事案であること。建築訴訟では、建築士などによる専門的知見が必要不可欠なので、訴訟方針などは弁護士ではなく私たち建築専門家の主導により行うこと(弁護士によっては揉めるんですけどね)などがあります。このように私たちが訴訟協力する場合は、依頼者に相当の覚悟を強いたうえで協力するワケですから、明確な技術的根拠に基づく瑕疵の立証について徹底的に取り組み、依頼者を有利な和解や判決へと導くよう努めています。

前置きが長くなってしまいましたが、よく言われている瑕疵主張する建築主・消費者(原告)が建築裁判で勝てないという事についてお話したいと思います(もちろん、私見ですけどね)。まず、何をもって「裁判に勝った、負けた」という定理が難しいと思いますが、ここでは「建物の構造耐力に関わる重大な瑕疵」が認められるか否かというところで線引きすることにします。賠償金額で線引きすると、瑕疵の強度に見合った補修費の評価(補修方法や補修の可・不可など)が難しいことから賠償金額は別とします。

建築訴訟においては、建築主・消費者(原告)が瑕疵を主張しても施工業者(被告)に有利な判決が下されるケースが少なくありません。これは訴訟における瑕疵の立証責任が原告にあることに起因するものです。すなわち、建築訴訟における瑕疵の立証には、建築士などによる専門的知見が必要不可欠であるにもかかわらず、受任した弁護士(法律事務所)に協力する建築専門家が見つからない、若しくは協力する建築専門家の知識・経験不足のため、明確な技術的根拠に基づく瑕疵の立証が行えないことによります。

そのため、瑕疵の立証において、瑕疵の原因はどこにあるのか、どの規範に反し品質・性能を欠いているのか、建物の安全性にどのような影響を及ぼすのか、どのような補修が必要なのか、補修費用はどれくらいかかるのか、といった要件を具備することができず、当を得ない主張に終始することになります。これに対し、施工業者(被告)には、建築の専門知識を持つ有資格者が多く所属しているうえ、協力する建築専門家(業界仲間)も少なくありません。加えて、多くの証拠資料を所持しており(不都合な証拠は秘匿します)、建築物に瑕疵があっても詭弁を弄して「品質・性能には問題ない」と主張します。このようなことから、建築訴訟においては、建築主・消費者(原告)が瑕疵主張を行っても証拠作成のハードルが高いため、瑕疵の立証において要件を具備できず、結果的には施工業者(被告)に有利な判決が下される(施工業者に言い逃れをされる)傾向にあります。

前述したような建築訴訟における実情を打開するには、高度な専門知識と豊富な経験を有する建築専門家により、真の争点を的確に把握し、専門的知見から各論点を整理したうえで、重大な瑕疵(契約不適合)に論点をしぼり、明確な技術的根拠に基づく瑕疵の立証を行う必要があります。特に、建築物の構造耐力にかかわる重大な瑕疵については、建築構造の知識と経験を基に、瑕疵を反映させた構造計算書を作成し、建物の危険性を数値化(見える化)して立証する必要があります。瑕疵の調査を実施しても、その調査結果から瑕疵の有無を判断し、瑕疵であった場合、その瑕疵が建物の安全性にどのような影響を及ぼすのか、その危険性を数値化(見える化)しなければ証拠の価値は下がります。「瑕疵だから構造耐力が低下しているので危険」と主張するだけでは裁判において認めてもらえません。ところが、建築訴訟の実情は前述したように、多くの場合において専門的知見による支援が得られないため、瑕疵の本質まで踏み込んだ主張・立証を行うことなく、瑕疵の表面のみを捉えた論点によって、小競合いをしているに過ぎないのです。これでは施工業者(被告)に言い逃れされても仕方がありません。

当該建築物において、構造耐力にかかわる重大な瑕疵が実際に存在するのであれば、その危険性(瑕疵の本質)を明確な技術的根拠に基づき数値化(見える化)すれば、瑕疵は認められ原告に有利な和解や判決へと導くことができます(建築の専門知識について素人である裁判官でも分かるように建物の危険性を見える化することが重要なワケです)。もちろん、瑕疵による危険性を数値化するだけでなく、調査会社による瑕疵調査、鑑定意見書の作成、補修方法の立案、補修費用の見積りなど多くの主張・立証を積み重ねる必要があります。これらのことは、訴訟において当たり前のことですが、建築訴訟の場合、この当然のことに対するハードルが高いのです。高度な専門知識と豊富な経験を有する建築専門家が積極的に訴訟に協力するようになれば、建築訴訟における瑕疵立証のハードルが下がっていくと思いますが、そもそも高度な専門知識と豊富な経験を有する建築専門家は本業が多忙なうえ、訴訟などの紛争にかかわりたくないと考えるのが一般的なので訴訟への協力は望めません。

本題である瑕疵主張する建築主・消費者(原告)が建築裁判で勝てないかという事については、前述したように明確な技術的根拠に基づき瑕疵の立証を行えば、瑕疵は認められる(勝てる)と思います。それには明確な技術的根拠に基づき瑕疵を立証してくれる建築専門家が必要不可欠です。しかし、前述のとおり訴訟に協力してくれる高度な専門知識と豊富な経験を有する建築専門家を見つけることは困難だと思います。仮に見つかったとしても、そのような建築専門家に膨大な時間と労力を要する瑕疵立証を依頼すれば多大な費用が必要になります(相手方の反論への反論、場合によっては追加調査や実験などと費用が膨らみます)。

私たちが訴訟協力する場合もそうですが、構造耐力にかかわる瑕疵を構造計算により数値化(見える化)することは容易ではありません。構造計算で用いられている各基準式は建物の安全性を確保する目的で定められたものであって、瑕疵を数値化する目的で定められたものでありません。そのため、瑕疵を構造計算により数値化(見える化)する作業には膨大な時間と労力を要します(結果的に費用も)。明確な技術的根拠に基づき瑕疵の立証を行えば、瑕疵は認められる(勝てる)と言いましたが、実際のところ、私たちのチームや他の建築専門家がそのような立証を行っても、それは瑕疵主張する建築主・消費者(原告)に有利な和解や判決を保証するものではありません。有利になる可能性が高いという事であって、明確な技術的根拠に基づく瑕疵の立証を行っても、裁判官・調停委員・専門委員によっては、その解釈や判断(技術的根拠の理解度)が異なる場合があるからです。すなわち、建築訴訟においては、満点の瑕疵立証を行っても専門性が高いゆえに、その解釈や判断にはリスクを伴います。

また、私の知る限りでは、明確な技術的根拠に基づく瑕疵の立証が行える目処が立っていないにもかかわらず、見切り発車で訴訟を起こし、裁判所から工学的な瑕疵の立証を求められた段階になって、建築構造の専門家を探し始めるというケースが多いようです(私に訴訟協力の依頼がある事案もこの段階が多いです)。このような段階になって、協力してくれる建築専門家が見つかれば良いですが、繰り返し言っているように、見つけることは困難ですし、見つかっても知識・経験不足であったりして、瑕疵は認められず(負ける)、建築主・消費者に不利な和解や判決となるケースが珍しくありません(このような建築訴訟の実情も「建築裁判は勝てない」と言われている一因のような気がします)。「建物の構造耐力に関わる重大な瑕疵」と言っても事案ごとに瑕疵の強度は異なります。瑕疵の強弱にもよりますが、建築裁判に勝つために費用面や精神面で多大な負担を背負うことと、それによって得られる利益との費用対効果を慎重に判断する必要があります。とは言っても、素人の建築主・消費者がそれを判断するのは困難だと思いますし、弁護士でも建築の専門知識がないと難しいです。

私が建築主・消費者から訴訟協力の依頼や相談を受けたとき、建築訴訟はやめて話し合いで解決するように勧めるのは、既述したような様々な負担やリスクがあるからです。私も条件次第で訴訟協力する場合がありますが、1つの事案に多くの時間と労力を要するうえ、やはり本業(設計・監理業)を優先させますので協力できる事案には限りがあります。最後に、建物の構造耐力に関わる重大な瑕疵を主張する事案に限って「建築裁判は勝てない」は本当か、という事についてまとめると、高度な専門知識と豊富な経験を有する建築専門家によって、明確な技術的根拠に基づく瑕疵の立証を行えば勝てる可能性が高くなります。しかし、そのような建築専門家の訴訟協力が得られることは困難であり、明確な技術的根拠に基づく瑕疵の立証が出来なくなります。結果的に瑕疵は認められず、建築主・消費者(原告)に不利な和解や判決となることから、「建築裁判は勝てない」と言われているのだと思います。

という事で、建築訴訟については、まだまだ書きたい事がありますが、今回はこれぐらいにしておきます。いずれにしても、建築紛争に至らないよう適正な設計・工事監理、適正な施工を心掛けることが一番大切だと思います(当たり前の事なんですけどね)。

 

※1  瑕疵:通常有すべき品質・性能を欠いていること。2020年4月に施行された改正民法では、「瑕疵」という言葉は「契約不適合」へ置き換えられ、より契約を重視する社会を志向することになっています。

 

 

 

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教会のリノベーション/教会を通じて2つの福祉施設をつなげる

2022年01月23日 | 建築

寒い日が続きますね・・。今回が今年になって初めての記事になります。今年も「滋賀県 建築家/建築設計事務所イデアルの小さな独り言」をよろしくお願いします。今回は数年前に設計させて頂いた教会のリノベーション事例を紹介することにします。

 

画像はリノベーションした教会の外観です。お施主さんの要望が「太陽のような教会にしたい」ということだったので、このような外観になりました。画像左に見えるライムグリーンの建物は、以前に設計せさて頂いた教会の寄宿舎を有料老人ホームに用途変更した建物です。教会のリノベーションに合わせて教会と用途変更した有料老人ホームを通路でつなげました。画像では分かりませんが、教会建物の裏側には私がリノベーションさせて頂いた有料老人ホームがもう1つ建っていて、裏側の有料老人ホームもリノベーションしたときに教会とつなげています。つまり、教会をリノベーションするこによって、2つの福祉施設(有料老人ホーム)が教会を通じてつながることを実現しました。

既存のキリスト教会をリノベーションして、教会としての機能を保ちつつデイサービス施設を併設し、また、隣接する2つの有料老人ホームの入所者がデイサービスの利用や教会行事への参加がしやすくなるように教会を通じて2つの有料老人ホームをつなげました。3つの既存建物(教会と2つの有料老人ホーム)には床レベルに高低差があるので、互いの建物への移動が容易になるように高低差の解消に工夫をしています(車椅子での移動や高齢者の移動について、お施主さんと何度もシミュレーションを重ねたことを思い出します)。

教会をリノベーションすることで、教会、デイサービス、有料老人ホーム入所者の憩いの場各々の利用者やスタッフの動線を整理し、3つの建物において合理的な施設運営が行えるようにしました。また、教会2階に設けた有料老人ホーム入所者の憩いの場は出来るだけ光を取り入れて明るくし、風通しが良くなるように配慮しています。3つの既存建物(教会と2つの有料老人ホーム)をつなげるには法令等のハードルがあり色々と苦労はありましたが、創意工夫を図ってクリアすることが出来ました。リノベーション後にお施主さんから「スタッフの夜間見回りがスムーズにできるようになり、入所者さんの各施設への移動も便利になりました」と喜びの声を頂いたときは、苦労した甲斐があったなぁ・・と私も嬉しくなったことを憶えています。

 

 

 

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浄土真宗末寺-本堂建て替えプロジェクト その2/滋賀県 建築家 建築設計事務所イデアル

2021年07月31日 | 建築

今回は前回記事に引き続き、昨年から滋賀県大津市で計画している浄土真宗末寺の本堂建て替えプロジェクトについてお話をします。前回(その1)は、伝統様式による寺院建築では、檀家(参詣者)の高齢化や世代による生活習慣・見解の違いに対応できないうえ、末寺を維持・運営するコミュニティ(檀家制度)の希薄が懸念される今日の状況において、建築家としてどのような本堂を提案できるのか・・既成概念に捉われないこれからの浄土真宗末寺本堂のありようはどのようなものなのか・・をテーマとして新しく建て替える本堂を計画したことを背景に主として本堂外部についてお話しました。今回は新しい本堂の内部についてお話したいと思います。

画像は、建て替える新しい本堂の内観パース(内観の完成予想図)です。浄土真宗末寺の本堂における基本的な平面構成は、ご本尊(阿弥陀如来像)が安置された須弥壇や開山床・御代床のある内陣、内陣両脇の左右余間および、檀家(参詣者)を収容する外陣や広縁・落縁などで構成されており、浄土真宗本山の御影堂を小さくした平面構成となっています。新しい本堂の内部空間構成の特徴は、内陣両脇の左右余間を思い切ってなくしていることと、もう一つは前回記事でもお話しましたように、外陣を土足のまま利用できる椅子座と畳敷きの床座に二分していることです。

本堂の建設費用に見合うようにするには、間取りや仕様を最小限にまとめる必要があったため、七高僧御影や太子御影および御絵伝については掛けていない事例もあることから、これらを掛けるための左余間・右余間は設けていません。内陣両脇の左右余間をなくしたことにより、これらのスペースには椅子座などへの対応により必要となる収納スペースを確保しています(内観パースで内陣の両脇に見えている障子戸が収納スペースの出入口になっています)。また、本堂内部の仕様については、従来の本堂内陣に見られるような過度な装飾の欄間などはなくしており、壁は壁紙(クロス)貼りとし、天井は木毛セメント板を底目地貼りにするなどして、安価な仕上材でシンプルなデザインにまとめて建設コストを削減しています。

内陣については、来迎柱と開山床の間の有効寸法、来迎柱と内陣側壁までの有効寸法、須弥壇から内陣手前までの有効寸法等について必要最低限の寸法を確保し、伝統様式による宗教行事が行えるようにしています。新しい本堂では内陣両脇の左右余間をなくしていることから、従来のような両脇に余間がある場合に比べて内陣空間が閉塞的になります。この閉塞感を解消するために内陣側壁の上部は欄間のような鏡面としています。この鏡面部分に内陣の吊り格子天井が写り込むので、内陣の両脇には吊り格子天井が続いているような広がり(抜け)が感じられ、内陣が閉塞的な空間にならないように工夫しています。さらに、本堂の天井には内陣と外陣を突き抜ける建築化照明を設けています。この内陣と外陣をつなぐ照明BOXからは柔らかい金色の間接光が降り注ぎ、内陣に安置されたご本尊の阿弥陀様と外陣の参詣者との一体感を演出しています。

もう一つの内部空間の特徴は、前回記事でもお話しました外陣を土足のまま利用できる土間形式と畳敷きに二分していることです。内観パースの手前側が土間形式となっている外陣部分で、外部に設けたトイレ利用も兼ねたスロープ(その1の外観パース参照)を通じて、段差なしで土足のまま本堂に出入りできるようにバリアフリー化しています。内観パースの奥側が畳敷きの床座としている外陣部分で、この畳敷きの外陣部分は、新しい本堂とつなげる既存庫裏の1階床レベルと同レベルにしているので、段差なしで既存庫裏からも本堂への出入りができるようにバリアフリー化しています。これは新しい本堂が鉄骨造であることに加え伝統様式に拘らない近代様式としているため、従来の木造本堂よりも外陣の床を低く設置できることによるものです。畳敷きの外陣部分では、従来のような床座利用もできますし、座面の低い椅子座での利用も可能です。また、ちょっとした役員会やコミュニティ・日常の憩いの場として利用する場合などは、いちいち靴を脱がなくても土間形式の外陣部分で行うことも可能ですし、畳敷きの外陣部分と土間形式の外陣部分を併用して利用することもできます。このように多様な利用形態が可能となることによって、気軽に行事やコミュニティに参加できる開放的な空間を提供することが可能となっています。

浄土真宗末寺の本堂は、江戸時代に徐々に醸成されてきた内陣や外陣などの平面構成による基本形を踏襲しながら今日まで受け継がれてきています。その一方で社会の時代的な変化や必要性に迫られながら本堂の形式も改善されていますが、今日の状況においては檀家の高齢化や若い世代の檀家離れによる檀家の減少への対応という新たな課題も付加されています。このような状況に対応するには、寺院建築も伝統様式によって再建するのではなく、伝統的要素に柔軟性と実用性を取り入れる工夫が必要であると考えています。

 

 

 

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浄土真宗末寺-本堂建て替えプロジェクト その1/滋賀県 建築家 建築設計事務所イデアル

2021年06月19日 | 建築

しばらく梅雨も中休みでしたが、昨日ぐらいから梅雨空が戻ってきましたね・・・。今回は、昨年から滋賀県大津市で計画している浄土真宗末寺の本堂建て替えプロジェクトについてお話をします。記事を2回に分けてお話しようと思っていますので、この記事が1回目(その1)となります。寺院建築を再建する場合、浄土真宗末寺に限らず伝統的な様式による寺院空間を維持するため、木造による伝統様式としている寺院や鉄骨造・鉄筋コンクリート造によって伝統様式を模している寺院が大半だと思います。もっとも、荘厳や佛具、儀式の行動様式が伝統に基づいている以上、寺院建築が伝統様式によって再建されることは自然な流れであると言えます。

しかし、高齢の参詣者や生活習慣が異なる若い世代における「正座ができない」「正座が嫌い」という単純な理由だけを取り上げてみても、伝統様式による寺院(本堂)空間では、これらに対応できなくなっているのも事実です。また、高齢の参詣者にとっては段差の解消は必須ですが、伝統様式による浄土真宗末寺の本堂では向拝から階段を上がらなければ外陣に入れずバリアフリー化に対応できません。近年における末寺の現状は、檀家の高齢化や若い世代の檀家離れによる檀家の減少が懸念されており、従来から檀家制度によって維持・運営されてきた末寺にとっては存亡にかかわる重大な課題となっています。伝統的な寺院建築では、檀家(参詣者)の高齢化や世代による生活習慣・見解の違いに対応できないうえ、末寺を維持・運営するコミュニティ(檀家制度)の希薄が懸念される今日の状況において、建築家としてどのような本堂を提案できるのか・・既成概念に捉われないこれからの浄土真宗末寺本堂のありようはどのようなものなのか・・をテーマとして新しく建て替える本堂を計画しました。

画像は、建て替える新しい本堂の外観パース(外観の完成予想図)です。新しい本堂の建設費用は檀家が分配して分担されているので、可能な限り永久的な本堂であることが志向されます。とは言え、永久的な建物を造ることは困難ですから、予定建設費用に照らし耐震性・耐火性・耐久性・メンテナンス性を総合的に考慮して鉄骨造としています。鉄筋コンクリート造も考えられましたが、計画地が軟弱地盤であることから軽量である鉄骨造が合理的であると判断しました。

外観デザインは伝統様式に拘らない近代様式としており、本堂として厳かな外観を保つため、外陣を囲うように回縁を設け、回縁の外周に円形の列柱を配し軒を深くしています。この列柱は有名な浄土真宗本山の御影堂の軒周りに配されている列柱を連想する役割をしており外観デザインのポイントの1つになっています。さらに、開放的な本堂とするため、外陣の外壁は和を感じさせる縦格子状のガラス張りにしています(外観パースはスリガラス調になっていますが、本堂の開放性を増すために透明ガラスにすることも検討しています)。このガラス張りの外壁と深い軒や列柱によって、近代様式でありながらこの建物が厳かな寺院本堂であることが一見で伝わる外観を形成しています。

新しい本堂の特徴の1つは、外陣の出入口側半分(本堂正面側)を土足のまま利用できる土間形式とし、外陣の奥半分(内陣側)を畳敷きとしていることです。列柱内側の回縁もスロープも土足利用としています。したがって、従来のように向拝で靴を脱がなくても土足のまま本堂(外陣)に入って参詣することができます。段差の解消については、既存のトイレ棟(外観パース左端)を移築し、トイレの利用も兼ねたスロープを設けることで段差なしで本堂に出入りできるようにバリアフリー化しています。これにより高齢者等の本堂への出入りが容易になり、「気軽に本堂へ行ける」という意識が各行事への参加意欲を高め、コミュニティ(檀家制度)の希薄への一助につながります。

末寺とのかかわりが希薄になりつつある世代に対して、仏縁を身近に得られるようにするためには、気軽に行事に参加できる開放的な空間を提供すること、また、仏事との関係性に捉われないコミュニティ・日常の憩いの場となる開かれた末寺としての空間を提供することが求められます。つまり、そこ(お寺)へ行けば地域情報や他の刺激的な知識などが得られたり、多様な交流があったりと仏縁以外のプラスαが得られる場を提供することが必要です。このような課題に応えるため、土足のまま利用できる内部空間の外陣と外部空間の軒下回縁は、内部と外部をつなげた一体空間として公開性の高い空間構成となっているので、行事や仏事がなくてもコミュニティ・日常の憩いの場として利用できるようにしています。これからの浄土真宗末寺は、地域だけでなく社会的にも開かれた末寺(お寺)として仏縁を得る得ないにかかわらず、世代を超えた多様な人々がプラスαを求めて気軽に集える場(空間)を提供する存在であるべきだと考えています。

という事で、今回はここまでにしておきます。次回(その2)は、新しい本堂の内部についてお話しようと思っています・・・。

 

 

 

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設計事例ブログ/滋賀県 建築家 建築設計事務所イデアル

2021年02月14日 | 建築

昨日も今日も春ですね・・・。このまま暖かくて春になればいいんですけど、それはないですよね。暖かいのはいいんですけど、そうなると花粉が飛散するので花粉症の私としては微妙です・・。2~3日前からくしゃみをしたり、目のかゆみがあるので、そろそろ花粉かなという感じです。

という事で、今回は設計事例ブログのお話です。このブログ(小さな独り言)以外に、実はもう一つ知る人ぞ知る「設計事例ブログ」があります。もう10年以上前に開設したブログなのですが、ブログというより設計した建物のリーフレットみたいなものになっています。建築設計事務所イデアルのホームページは、昨年リニューアルしたHPもリニューアル前のHPにしても、単なる外部ギャラリー的な要素が大きいので、WORKSコーナーでは建物の写真がメインで建物の説明文章などはありません。

そこで、リーフレットのような設計事例ブログを開設し、簡単な説明を掲載して設計した建物を紹介していました。昨年ホームページをリニューアルしたので、そろそろ設計事例ブログもリニューアルしようと思い、先日(2週間前かな)設計事例ブログをリニューアルしました。まぁ、リニューアルと言ってもブログのテンプレートを替えて、説明文を編集しただけですけどね・・。以下に設計事例ブログより設計した建物を2つ紹介しておきます。

 

ワイズインターナショナル本社/(遊戯室のような遊び心あるオフィス)

 

膳所焼の家/(茶陶で有名な膳所焼の陶片をマテリアルにした住宅)

 

「設計事例ブログ」に興味のある方は、一度ご覧になってください。

滋賀県 建築家/建築設計事務所イデアル(住宅、オフィス、文化・福祉施設、店舗のデザイン・設計)

 

ちなみに、「設計事例ブログ」は、設計した建物を紹介することに限定したブログなので、頻繁に更新する事はありませんのでご了承願います・・・。

 

 

 

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紫蘇色の外壁を塗替えました・・・。

2020年09月27日 | 建築

もうすっかり陽射しが秋ですね・・・。だいぶん過ごしやすい気候になってきました。私はというと6月ぐらいから、ずっと忙しかったこともあって、購入した未読の本が山積み状態になっています。建築の本を中心に洋書・和書・新品・古本とたくさん買ってしまいました。(未読の本が溜まっているので、もう買わないでおこうと思っていても、ネットでついつい買ってしまいます)、それで・・最近は未読の本を片っぱしから読んでいます。まだ、仕事も溜まっているのですが、とりあえず今は本が読みたいのです。(読書の秋ですしね・・仕事は来月から集中してやります)

 

という事で・・話は変わりまして、画像は、先日外壁を塗替えた「I-HOUSE」です。今年で築15年が経ち、外装のスタッコ吹付け色(赤紫色の部分)が劣化してきていたので塗替えをしました。I-HOUSEのお施主さんは、建物をとても綺麗に使ってくださっていて、ウッドデッキなどのメンテナンスもご自身が定期的にされています。お伺いする度に建物を大切にしてくださっていることが伝わってくるので設計者としては嬉しいかぎりです。塗替えと言っても、新築時の吹付け色をお施主さんは気に入ってくださっていたので、今回も新築時と同じ赤紫色(私たちは紫蘇色と言ってしました)に塗替えました。

今回は15年目という事もあって、庇の一部改修工事に合わせて劣化した外装吹付けの塗替えをしました。新築時のスタッコ吹付けに比べると、少しテクスチャーが変わりますが、お施主さんに了解を得たうえで、耐久性の高い塗替え専用の塗料を採用しました。近くで見ればテクスチャーの違いが分かりますが、建物全体の外観イメージは新築時と変わりません。紫蘇色の外壁とチタン亜鉛合金の庇とのコンビネーションが建物にアイデンティティを与えています。ちなみに、この建物に使われているチタン亜鉛合金は、国内では珍しいイタリア製のチタン亜鉛合金で独特のテクスチャーがあります。

  I-HOUSEの詳細はこちらから

I-HOUSEのように定期的なメンテナンスを行い、建物の美観を維持し大切にしてくださることは、建築家としてとても幸せなことです・・・。

 

 

 

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ホームページをリニューアルしました2020/滋賀県 建築家 建築設計事務所イデアル

2020年08月16日 | 建築

暑い日が続きますね・・・。ニュースなどでは「危険な暑さ」と表現していますが、本当に危険なくらいの暑さです。今年のお盆休みは、新型コロナの影響で帰省やレジャーを控えるなど、例年と違う過ごし方をしている方も多いと思いますが、私は例年と同じようにずっと仕事をしていました。それで、昨日仕事が一区切りついたこともあって、今日は記事を書こうと思ったのですが、ネタが思いつかないので、今回は2ヶ月前にリニューアルしたホームページの紹介をします。

 

今回のホームページリニューアルは、7年ぶりのリニューアルになります。3年ぐらい前から、そろそろホームページをリニューアルしたいと思っていて、ようやくリニューアルすることが出来ました。新しいホームページでは、進行中やアンビルドのプロジェクトも掲載しています。特にアンビルド(実現できなかった建築)は、建築家の思想や理想を純粋な形で表しているので、今後もアンビルドのプロジェクトをできるだけ掲載していこうと思っています。画像は、昨年企画した「DK-Project」で、ホームページにも掲載しています。

  新しいホームページはこちらから 

という事で、今回はリニューアルしたホームページの紹介でした・・・。

 

 

 

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