コロナ禍で外出しづらい昨今、ちょっとしたイベントに会場を借りるのも難しく、長年友人仲間内で続けてきたゲームサークル活動も、直接対面を避けたオンライン環境に移りました。移動の手間がかからず、時間拘束が楽な反面、視覚情報はモニタ内に限られるせいか卓上は見えるものの、他メンバーの動きなどは把握しにくくチーム連携は以前の対面して遊んでいた頃と比べるとぎこち無さがあります。実際に卓を囲んでいる場合だと、他メンバーのキャラシートや、コマを動かす手の仕草や、合間合間の一言から、どこへ向かい何を狙い、そのために互いの牽引や援護のタイミングなど、意外に多くの情報量が飛び交っていたのが分かりました。オンライン上で遊ぶと操作が雑になった時のフォローが難しいです。タイミングが分からなくて。卓で互いの顔が見えていたら「こいつ今どうも気が抜けているようだ」などプレイヤーのコンディションが分かるので、一方に気を取られて行動ミスした時に、指摘と同時にひょいと援護回復を飛ばしたり、もらえたりと互いに補助が効きます。そこには「ちょい待ち」とGMへの一時停止と確認も含まれます。
先の5月10日は、月に一度のオンラインでのゲーム定例日でした。進行中のシナリオは「恐怖の墓所」というタイトルで、開始初っ端から謎かけメッセージがあり、マップ内ギミックがそれら謎かけに対応しているようです。つまりトラップ満載ダンジョンだけど、解除ヒントを仄めかした提示があるので、そこで脳筋突撃せず頭を使って対処していけば、難易度を下げて進むことが可能です。おそらく。じゃないと入口の勿体ぶったメッセ―ジプレート文言を考えたシナリオ作成者の手間が無駄になるじゃない。
しかし、メッセージは無駄でした。先日のシナリオでは謎かけメッセージに対応しているらしき、いかにも怪しいオブジェクトがあるにも関わらず、調査解読する暇もなく戦術準備万端揃った敵群に包囲され、状態異常の連携重ね当てを食らいました。ここで私は「謎解き要素は削除された」と判断し、その日の楽しみを放棄しました。残り時間はよ終わらんかなと撤退開始。自キャラも仲間を見捨てて自分一人だけ全力で逃走しました。作成当初から属性:悪ですと公表していたので、たまには悪らしい行動も必要です。チーム内での役割は回復なのでヒーラーが真っ先に逃げたチームは被弾に耐えられず、皆殺しにされると踏んでいたのですが、実は敵の多くがHP1しかないミニオン(雑魚)だったため、1体づつを確実に仕留めて数を減らし、最後はトラップ元をアウトレンジ攻撃で破壊し、いつのまにか彼らは勝利していました。仕方ないので後からノコノコと合流しました。
勝てたから良いけれど、過程には大いに不満がありました。積もり積もった不満の境界線を越える不満です。
私は不本意ながらD&D歴が長く30年ほど遊んでいます。そして、このシステムの頑なにプレイヤーへ不利を強いる設計に不満を感じています。窮屈な程に細分化されたルールは適切に用いれば大変有利に働くことを体験として理解もしていますが、それは長いプレイ時間中のほんのわずか一瞬の話で、90%以上の時間は細かいルールに頭を抑えられ、足を引っ張られ不自由さにもがく時間です。というのも、このシステムは効率を追求するのを許さないフシがあり、その時期ごとに能力だけでなく金銭的な制約やアイテム取得数が決まっており、時期不相応に強い装備を頼りに進むなり、経済力にモノを言わせて段取りを整えることは出来ず、毎回現場に赴いては愚直に武器を振り回し敵を1体づつ片付けていく手作業の連続です。12体敵が出たら12回以上殴らないといけません。地形を利用して有利に立ち回る、とか陽動かけて罠にはめる、といった戦術は使えません。使ってもまず効かないし。だから敵の数=処理工程数、1匹倒すのに3人で殴って最短2ターンかかる行動を12体分、自分達も無傷で済まないから回復しながら戦闘継続、状態異常を複数重ねる処理が加わり1ターン進めるのに1時間かかります。これ終わるまで何時までかかるんだろう、という事態が頻発しました。
それは融通の利かないGMの処理のせいではないか、とも言えそうですが、現GMは割と融通効かせるタイプです。そしてこのひたすら現場手作業で多量の敵をこなしていく冗長で退屈な繰り返し具合は30年前から、どのGMに当たっても変わりませんでした。
つまり、ゲームシステム設計もシナリオデザイナーも、プレイヤーが有利に進める状況を想定しておらず、許してもおらず、用意した苦難困難死傷イベントを全て回避出来ずに被弾する前提で作られています。それでもゲーム内で快適有利に行動したけりゃ、苦労は買ってでもやれ。つまり後発サプリメントをじゃんじゃん買え。そして必死に勉強させろ、プレイヤ―を甘やかさずハングリー精神を育てろ、という前時代的精神論根性論が透けて見えます。実際、歴史的にも最古のRPGなので設計思想が時代遅れなのでしょう。アメリカ人のゲーム制作者はベトナム戦争で頭が止まってるんじゃねえの。キャラ育成はフルメタルジャケット方式です。おまえらは雑魚だ屑だ、強い武器は贅沢だ、高度な戦術は怠惰だ、何も考えず死ぬ気で戦え、みたいな。
元々の舞台設定が技術進歩の低い中世を想定しており、科学工業力の代わりを務めるのは魔法です。しかし魔法は個人で使える種類はごく僅かで、状況に適した持ち合わせが無ければ無力で非力な足手まといにしかならず、その使用状況を予め知っておくために占術を限られた魔法所持枠に詰めねばなりません。そして占術には対抗呪文が用意されているため、リソース無限なGM側のボスキャラは際限なく使え、情報統制と隠蔽工作は万全で正攻法の勝ち目はありません。キャラではなく、GM相手に口述的なトリックをしかけ情報を引き出す方法はありますが、これは詐術の一種でGMとの信頼関係が崩れるので連続シナリオ・キャンペーンで使うやり方でもありません。
結果として、毎回敵が準備万端体勢を整えて待ちかまえているのがわかっているのに、無策に突っ込み相手のペースに嵌りボコボコに叩きのめされる戦闘が起こります。実際メンバー内のパラディンは毎回フルボッコに遭い大苦戦していますが、D&Dとは常に敵はフルコンディションで襲いかかってくるものだとのことなので、覚悟してる人なのでしょう。私もわりかし覚悟はしてるけどそこまでのドM嗜好はありません。