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マーケティング研究 他社事例 613 「世界の量子コンピュータービジネス」 ~AIの次はもっぱら量子コンピューターと言われています~

2020-08-04 08:32:15 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 613 「世界の量子コンピュータービジネス」 ~AIの次はもっぱら量子コンピューターと言われています~


科学技術の最先端研究は大学教授が大学の予算を使って取り組むもの、という印象が皆さんの中にはあるかもしれません。

しかしそれは、ビジネスに関係する一部の分野では既に過去のものとなっています。

すべての研究を大学だけに任せるのはもはや時代遅れとなっているようです。

2019年10月、グーグルが量子超越性を達成したというニュースが全世界に衝撃を与えたことは記憶に新しいところです。

これは量子コンピューター開発における金字塔ですが、大学ではなく民間が主導した開発例としても、金字塔となっています。

例えば、アメリカのアルファベット(グーグルの親会社)の年間の研究予算は、直近四半期合計で約3兆円に上るうえ、投じる金額は年々大幅に増加しています。

このように、バイオサイエンスやコンピューターサイエンス、経済学におけるゲーム理論や行動経済学の研究などは、大学より民間が先行する可能性が高いと言えます。

かつてインターネットが開発された際、自分たちのビジネスがどう変わるかが想像出来ていた人はほんの一握りでした。

同様に、量子コンピューターが開発されることでビジネスにどのようにインパクトがあるかについても現在、想像しにくい方々も多いと思います。

例えば、確率分布を考える時、従来のコンピューターは0か1かどちらかになる前提で組み合わせを計算し、解を求めて来ました。

しかし量子コンピューターはどちらもあるという前提で組み合わせを一気に計算してくれます。

こうすることで計算速度が指数関数的に向上し、シュミレーションを網羅的に計算できます。

モノクロテレビカラーテレビよりカラーテレビの方が、色がつくだけでなく、表現パターンまで増えることにも似ています。

量子コンピューターには、汎用性のある「ゲート式」と、組み合わせの計算が得意な「アニーリング式」があります。

今、述べているのは後者です。

さて、このように処理能力が格段に速くなったマシンが登場すると、ビジネスはどう変化するのでしょうか?

データを活用するビジネスに有利に働くことは間違いありません。

例えば、ドイツのフォルクスワーゲンとグーグルは、量子コンピューターを用いて北京市内のタクシーのデータを分析し、どの経路をたどれば移動時間が最適か判定する仕組みについて検証しています。

成功すれば北京市内での運輸ビジネスはこのシステムなしには成り立たなくなるかもしれません。

量子コンピューターの世界では、以前から開発競争が過熱していました。

物理学者のリチャード・ファインマン、カルフォルニア工科大学教授(当時)が1981年に概念を提唱し、1994年から2000年前半に第一次ブームが起こりました。

当時NEC基礎研究所にいた中村康信東京大学教授らが超伝道量子ビットを実現し、1999年に論文を発表しました。

しかし長時間作動をさせられず、開発はいったん冬の時代を迎えたのでした。

転機は、2011年、カナダの研究者らが商用量子コンピューター「D-Wave」を開発し販売、アメリカのロッキード・マーチンが買ったことで潮目が変わりました(D-Waveは東京工業大学の西森教授らのアイデアを基にしたとされています)。

これを受けアメリカ航空宇宙局とグーグル、アメリカのIBMが参入し、研究開発への投資が加速したのでした。

取り残される危機感もあってか、2019年12月、東京大学とIBMは汎用性のあるゲート式量子コンピューター開発でパートナーシップを結びました。

東大には民間から開発予算が流れ、IBMにはグーグルが先行しているなか学術機関の知見にアクセスできるメリットがあり、互いの利害は一致しています。

IBMは同様の施策をドイツでもやっています。

(続く)



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