マーケティング研究 他社事例 620 「両利きの経営1」 ~既存事業と新規事業を同一組織で~
『両利きの経営』は、変化の激しい時代の経営に必要とされています。
なぜでしょうか?
デジタル化やダイバーシティーなど変革が叫ばれながらもほとんど変われなかった日本企業ですが、現在は新型コロナウイルスという未曽有の危機の中で、あっという間に風景が変わってしまいました。
皮肉なものです。
さて、企業が戦略を立案すると、経営者はその戦略を実行するためにどのような仕組みを設計すべきかと発想します。
そして多くの経営者は、既存事業の拡充をする組織と、新規事業を立ち上げる組織は別であることが望ましいと考えています。
先だって亡くなった経営学者クレイトン・クリステンセン氏は戦略論が専門で大企業の破壊的創造が直面しがちな『イノベーションのジレンマ』に関する理論を生み出したことで知られています。
そのクリステンセン氏も、1つの組織、とりわけ大企業が既存事業と新規事業の両方を同時にやるのは難しいことだと認識し別々に取り組むことを実際に推奨していました。
クリステンセン氏がイノベーションのジレンマを主張した頃、アメリカのウォールマートはまさに、既存事業と新規事業で組織をどう切り分けるかを決めるタイミングでした。
議論の結果、同社は通信販売用のオンラインショップ、ウォールマート・ドット・コムを立ち上げ、アメリカのアーカンソー州の本体と完全に切り離して西海岸のシリコンバレーに拠点を置く事を決定しました。
ところが期待に反して、そのやり方はうまくいきませんでした。
ウオールマート・ドット・コムは通販のシステムを開発するだけでなく、店舗に在庫があるか、どのくらいで届けてもらえるかなどを把握する必要がありました。
本体と別の組織ではその情報を十分に得る事が難しかったのです。
クリステンセン氏が『イノベーションのジレンマ』で、大企業が新興企業に負ける理由を説明したのが1997年の事でした。
当時、新規事業は既存事業を破壊する存在として受け止められていたことも、「既存事業と新規事業は別組織でやるべき」という考え方の根拠となっていました。
しかしウォールマートなどの例を契機に、こうしたやり方を検証する動きが出て来ました。
その結果、既存事業の深堀りと新規事業の探索をしている組織を別々のものにしてしまったら、かえって双方で問題が起こり、解決の糸口も見つけにくくなることが分かって来ました。
また、新規事業組織が取り組んでいることから得られる利点を、既存組織にフィードバックできないことや、新規事業の探索をしている組織が本社のリソースの恩恵を受けにくいことも問題になって来ました。
別々の組織で取り組むがゆえに、新規事業がうまくいかずに、企業の病となる現象が見られたのでした。
そこで、異なる成長段階にある事業が、『同じ屋根の下で同居できる』経営が今の時代に合うという考え方が生まれたのでした。
それが両利きの経営と定義づけられました。
両利きの経営では、たとえ既存事業と新規事業という別々の事業活動であっても『同じ屋根の下』で運用し、双方の強みを双方で使う事が大事だと考えます。
とはいえ、両利きの経営とは、1つの組織で漫然と新旧2つの事業を手掛けていくことではありません。
資金や人材、ノウハウ、制度などといったリソースは積極的に共有しますが、違う事業に対しては、違うカルチャーで取り組まなければなりません。
ここでいう『企業のカルチャー』とは、その組織をコントロールしているシステム全体のことで、日本語で頻繁に使うような、いわゆる『企業文化』ではなく、仕事のやり方、仕事に対する姿勢のことです。
この『カルチャー』のありように注意深く対応しないと、両利きの経営はうまくいきません。
社員は慣れ親しんだやり方にしがみつくものだからです。
産業が急速に変化している時は、これまで成功してきた仕事のやり方が、新しいビジネスのやり方にとってはむしろ間違っている可能性もあります。
ですから両利きの経営の下では、経営者は事業ごとに仕事のやり方をどう変えていくかを考えなければなりません。
中でも、成功体験のある従業員らがこれまで慣れ親しんだやり方からなかなか抜け出せないことを、研究者の間では、『サクセストラップ』と呼んでいます。
カルチャーを変え、サクセストラップに陥らぬようにできて、初めて両利きの経営で戦えるようになります。
そして、『種は生き残る為に変異するように、組織もまた変異しなければ生き残れない』といった所でしょうか?
コロナ禍という未曽有の危機の中で、全ての企業は今、これまでのようにあつれきを注意深く取り除きながら時間をかけて調整し、変化していくやり方ではなく、ほぼ強制的に、迅速に変化に対応していくことが求められています。
今回示した、『両利きの経営』に関しては、入山教授の『両利きの経営』に通じるものの、私的には、『知の探索』と『知の深化』という入山教授提唱の『両利きの経営』の方が実はしっくりきます。
しかし、イノベーションのジレンマから推察する今回のアプローチは、既存事業と新規事業というカテゴリーをどう成長させていくのか、この変化の激しい世の中でどう生き残るのか?という事を考える上で必須の事と思います。
それぞれが、それこそ正解が分からない中で、どのように活動すべきかについては、ある一定の研究が基準になるものと思っています。
(続く)
下記は彩りプロジェクトのご紹介です。
ご興味があればご一読下さい。
経営の根幹は「人」です。働く人次第で成果が変わります。自分事で働く社員を増やし、価値観を同じくし働く事で働きがいも増します。
彩りプロジェクトでは、風土改革を軸にした「私の職場研修」、「未来を創るワークショップ研修」等、各企業の課題に合わせた研修をご提案差し上げます。ITソフトメーカー、製造メーカー、商社、小売業者、社会福祉法人、NPO法人等での研修実績があります。
研修と一言と言っても、こちらの考え方を一方的に押し付ける事はしません。実感いただき、改善課題を各自が見つけられる様な研修をカスタマイズしご提案しているのが、彩りプロジェクトの特徴です。
保育園・幼稚園へご提供している研修【私の保育園】【私の幼稚園】は大変ご好評をいただいています。
また、貴社に伺って行う研修を40,000円(1h)からご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
メール info@irodori-pro.jp
HP https://www.fuudokaikaku.com/
お問合せ https://www.fuudokaikaku.com/ホーム/お問い合わせ/
成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣
『両利きの経営』は、変化の激しい時代の経営に必要とされています。
なぜでしょうか?
デジタル化やダイバーシティーなど変革が叫ばれながらもほとんど変われなかった日本企業ですが、現在は新型コロナウイルスという未曽有の危機の中で、あっという間に風景が変わってしまいました。
皮肉なものです。
さて、企業が戦略を立案すると、経営者はその戦略を実行するためにどのような仕組みを設計すべきかと発想します。
そして多くの経営者は、既存事業の拡充をする組織と、新規事業を立ち上げる組織は別であることが望ましいと考えています。
先だって亡くなった経営学者クレイトン・クリステンセン氏は戦略論が専門で大企業の破壊的創造が直面しがちな『イノベーションのジレンマ』に関する理論を生み出したことで知られています。
そのクリステンセン氏も、1つの組織、とりわけ大企業が既存事業と新規事業の両方を同時にやるのは難しいことだと認識し別々に取り組むことを実際に推奨していました。
クリステンセン氏がイノベーションのジレンマを主張した頃、アメリカのウォールマートはまさに、既存事業と新規事業で組織をどう切り分けるかを決めるタイミングでした。
議論の結果、同社は通信販売用のオンラインショップ、ウォールマート・ドット・コムを立ち上げ、アメリカのアーカンソー州の本体と完全に切り離して西海岸のシリコンバレーに拠点を置く事を決定しました。
ところが期待に反して、そのやり方はうまくいきませんでした。
ウオールマート・ドット・コムは通販のシステムを開発するだけでなく、店舗に在庫があるか、どのくらいで届けてもらえるかなどを把握する必要がありました。
本体と別の組織ではその情報を十分に得る事が難しかったのです。
クリステンセン氏が『イノベーションのジレンマ』で、大企業が新興企業に負ける理由を説明したのが1997年の事でした。
当時、新規事業は既存事業を破壊する存在として受け止められていたことも、「既存事業と新規事業は別組織でやるべき」という考え方の根拠となっていました。
しかしウォールマートなどの例を契機に、こうしたやり方を検証する動きが出て来ました。
その結果、既存事業の深堀りと新規事業の探索をしている組織を別々のものにしてしまったら、かえって双方で問題が起こり、解決の糸口も見つけにくくなることが分かって来ました。
また、新規事業組織が取り組んでいることから得られる利点を、既存組織にフィードバックできないことや、新規事業の探索をしている組織が本社のリソースの恩恵を受けにくいことも問題になって来ました。
別々の組織で取り組むがゆえに、新規事業がうまくいかずに、企業の病となる現象が見られたのでした。
そこで、異なる成長段階にある事業が、『同じ屋根の下で同居できる』経営が今の時代に合うという考え方が生まれたのでした。
それが両利きの経営と定義づけられました。
両利きの経営では、たとえ既存事業と新規事業という別々の事業活動であっても『同じ屋根の下』で運用し、双方の強みを双方で使う事が大事だと考えます。
とはいえ、両利きの経営とは、1つの組織で漫然と新旧2つの事業を手掛けていくことではありません。
資金や人材、ノウハウ、制度などといったリソースは積極的に共有しますが、違う事業に対しては、違うカルチャーで取り組まなければなりません。
ここでいう『企業のカルチャー』とは、その組織をコントロールしているシステム全体のことで、日本語で頻繁に使うような、いわゆる『企業文化』ではなく、仕事のやり方、仕事に対する姿勢のことです。
この『カルチャー』のありように注意深く対応しないと、両利きの経営はうまくいきません。
社員は慣れ親しんだやり方にしがみつくものだからです。
産業が急速に変化している時は、これまで成功してきた仕事のやり方が、新しいビジネスのやり方にとってはむしろ間違っている可能性もあります。
ですから両利きの経営の下では、経営者は事業ごとに仕事のやり方をどう変えていくかを考えなければなりません。
中でも、成功体験のある従業員らがこれまで慣れ親しんだやり方からなかなか抜け出せないことを、研究者の間では、『サクセストラップ』と呼んでいます。
カルチャーを変え、サクセストラップに陥らぬようにできて、初めて両利きの経営で戦えるようになります。
そして、『種は生き残る為に変異するように、組織もまた変異しなければ生き残れない』といった所でしょうか?
コロナ禍という未曽有の危機の中で、全ての企業は今、これまでのようにあつれきを注意深く取り除きながら時間をかけて調整し、変化していくやり方ではなく、ほぼ強制的に、迅速に変化に対応していくことが求められています。
今回示した、『両利きの経営』に関しては、入山教授の『両利きの経営』に通じるものの、私的には、『知の探索』と『知の深化』という入山教授提唱の『両利きの経営』の方が実はしっくりきます。
しかし、イノベーションのジレンマから推察する今回のアプローチは、既存事業と新規事業というカテゴリーをどう成長させていくのか、この変化の激しい世の中でどう生き残るのか?という事を考える上で必須の事と思います。
それぞれが、それこそ正解が分からない中で、どのように活動すべきかについては、ある一定の研究が基準になるものと思っています。
(続く)
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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣