マーケティング研究 他社事例 617 「社会課題とビジネスでの解決2」 ~様々なコンセプトから解釈する~
アメリカのハーバード大学のマイケル・ポーター教授が2011年に提唱したCSV(クリエ―ティング・シェアード・バリュー)(共有価値の創造)は、社会を改善する価値の創造を企業戦略に組み込み、収益を高めるというコンセプトです。
CSVの登場は、社会課題解決を目指すビジネスにおいて転換点になりました。
投資やビジネスによる「社会課題解決」に向けた意識の変化などについて、今回は考えて行きたいと思います。
社会課題解決ビジネスに関わる多くの人は、「ポーター教授のCSVが登場したおかげで企業による社会課題の解決に対して世間の関心が高まって、とても良かった」と言っています。
それでは、フランスのINSEADのジャズジット・シン教授の考察を見て行きたいと思います。
「企業と社会課題の解決をリンクさせることを最初に提唱したのがポーター教授かというとそうではない。以前から同じことは提唱されてきたが、ポーター教授がCSVという新しい言葉を生み出すことにより、世に広めた。ポーター教授の企業経営トップ層における影響力が大きいからだ。」
「CSVの登場は、この分野における転換点になった。つまり出発点ではなく、CSVをきっかけに、企業の社会貢献的な活動スタイルについて、より関心を集めるようになったということだ。CSVの登場以来、単なるCSR(企業の社会的責任)活動だけでは不十分である、と人々が言い始めた。ESGや持続可能性について、そしてCSVについて、事業と別ではなくビジネスの一部として考えなければならなくなった」
ポーター教授はもともと、ポジショニングに基づく競争戦略の5つの要因分析を提唱するなどでマーケティングの基本戦略をフレームワーク化し、ビジネス界に大きな影響を与えた研究者です。
CSVではさらに、社会課題解決ビジネスのおける戦略的な考え方を提示しました。
社会課題解決ビジネスのフレームワーク化に成功したという言い方も出来るかもしれません。
「広い意味でいう社会課題の解決のための投資には、長い歴史がある。徐々に企業を巻き込んで、今や一般市民も巻き込みつつある。だが投資家サイドと戦略サイドでは少し位置づけが違う。企業の間では投資サイドに比べ、自社の戦略の一環として、かなり以前から社会課題の解決に対して問題意識があった。」
「例えば、インドのタタ・グループが100年余り前に登場した時、創業者は労働者階層のためにかなり投資し、そのコミュニティーを充実させようとした。インドにはそのような会社がほかにもたくさんある。英蘭ユニリーバが100年以上前にイギリスで誕生した時代に戻ったら、同社の経営者が、労働者に投資する必要がある、労働者とその家族の面倒を十分に見なければならない、と言っている姿を見るだろう。いずれもESGの『S』パートの活動だ。こうした戦略としての社会課題解決は、一部の企業にとっては長年してきたことだ。」
タタやユニリーバがかつて労働者階層への投資を重視したのは、巡り巡って自社の経営基盤の強化につながると考えたからです。
さらに最近では、かつてはNGO(非営利組織)の持ち場だった「社会課題解決」分野が脚光を浴びていることで、自社のとはこれまで関係なくても、ここに取り組み企業が増えているという実態があります。
これは、投資家の変化が大きく影響しているのです。
「企業は長年ESG的な活動をしてきたが、投資家がESG的な活動により注目するようになったのは最近だ。企業は、事業拡大・安定戦略の一部として社会課題解決を考えてきた。一方投資家は今、(ESGに積極的な企業は)かなりの部分、リスク管理のレベルが高いと位置付けている。」
「今日、もし企業がESGを管理できなければ、投資家は大きなリスクと見なす。トラブルやスキャンダルに巻き込まれたり、政府から巨額の罰金を科せられたりしやすいと見なす。しかし企業がESGに適切に取り組めば、そうしたリスクが低減されると期待する。私は、リスク削減の意識が高い企業こそESGを大きく推進していると考える。あるいは、ESGに取り組んでもうまくいかない企業があれば、内部に何らかの対立やトレードオフが生じているはずだ。こうした企業は早晩問題を起こす可能性が高い。」
近年は投資家が、ESGの概念をさらに高めた「インパクト投資」を実施する企業に注目しています。
「インパクト投資」とはどのような活動なのでしょうか?
「ESGの考え方は、世界をなるべく傷つけないようにするというものだ。格差を拡大しない、二酸化炭素排出を増やさない、などというものだ。『インパクト投資』はそれを一歩進め、世界を修復しようとする。ESG全般に取り組むのは言うまでもなく、事業により社会課題の解決を試みる。」
「例えば、メーカーがESGに取り組むとする。ソフトドリンクメーカーなら、使う砂糖や水の量を減らし、工場の公害を減らそうとするだろう。それに対して『インパクト投資』は、健康改善につながる飲料を開発したり、飲料製造技術を活用し水質浄化に取り組んだりする。解決を狙う社会課題は様々だ。社会の格差、気候変動、生物多雨性の問題・・・。貧困国での教育問題に事業で関与することも含まれるかもしれない。世界に前向きなインパクトを起こすビジネスを創るのだ。」
「最初から『何をインパクトと呼ぶか』を定義するのが、『インパクト投資』で最も重要だ。解決しようとしている社会課題は何か?明確な戦略も必要で改善出来ているかどうか進捗を測る指標も必要。実際に課題を解決することが重要なのだ」
今後は金融機関や投資家から起業に対する、ESG対応を求めるプレッシャーは高まる一方です。
経営者の個人的な振る舞いやプライバシー対応も、ESGの一つと言えるでしょう。
しかし、そこには思わぬ落とし穴もあるようです。
(続く)
下記は彩りプロジェクトのご紹介です。
ご興味があればご一読下さい。
経営の根幹は「人」です。働く人次第で成果が変わります。自分事で働く社員を増やし、価値観を同じくし働く事で働きがいも増します。
彩りプロジェクトでは、風土改革を軸にした「私の職場研修」、「未来を創るワークショップ研修」等、各企業の課題に合わせた研修をご提案差し上げます。ITソフトメーカー、製造メーカー、商社、小売業者、社会福祉法人、NPO法人等での研修実績があります。
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メール info@irodori-pro.jp
HP https://www.fuudokaikaku.com/
お問合せ https://www.fuudokaikaku.com/ホーム/お問い合わせ/
成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣
アメリカのハーバード大学のマイケル・ポーター教授が2011年に提唱したCSV(クリエ―ティング・シェアード・バリュー)(共有価値の創造)は、社会を改善する価値の創造を企業戦略に組み込み、収益を高めるというコンセプトです。
CSVの登場は、社会課題解決を目指すビジネスにおいて転換点になりました。
投資やビジネスによる「社会課題解決」に向けた意識の変化などについて、今回は考えて行きたいと思います。
社会課題解決ビジネスに関わる多くの人は、「ポーター教授のCSVが登場したおかげで企業による社会課題の解決に対して世間の関心が高まって、とても良かった」と言っています。
それでは、フランスのINSEADのジャズジット・シン教授の考察を見て行きたいと思います。
「企業と社会課題の解決をリンクさせることを最初に提唱したのがポーター教授かというとそうではない。以前から同じことは提唱されてきたが、ポーター教授がCSVという新しい言葉を生み出すことにより、世に広めた。ポーター教授の企業経営トップ層における影響力が大きいからだ。」
「CSVの登場は、この分野における転換点になった。つまり出発点ではなく、CSVをきっかけに、企業の社会貢献的な活動スタイルについて、より関心を集めるようになったということだ。CSVの登場以来、単なるCSR(企業の社会的責任)活動だけでは不十分である、と人々が言い始めた。ESGや持続可能性について、そしてCSVについて、事業と別ではなくビジネスの一部として考えなければならなくなった」
ポーター教授はもともと、ポジショニングに基づく競争戦略の5つの要因分析を提唱するなどでマーケティングの基本戦略をフレームワーク化し、ビジネス界に大きな影響を与えた研究者です。
CSVではさらに、社会課題解決ビジネスのおける戦略的な考え方を提示しました。
社会課題解決ビジネスのフレームワーク化に成功したという言い方も出来るかもしれません。
「広い意味でいう社会課題の解決のための投資には、長い歴史がある。徐々に企業を巻き込んで、今や一般市民も巻き込みつつある。だが投資家サイドと戦略サイドでは少し位置づけが違う。企業の間では投資サイドに比べ、自社の戦略の一環として、かなり以前から社会課題の解決に対して問題意識があった。」
「例えば、インドのタタ・グループが100年余り前に登場した時、創業者は労働者階層のためにかなり投資し、そのコミュニティーを充実させようとした。インドにはそのような会社がほかにもたくさんある。英蘭ユニリーバが100年以上前にイギリスで誕生した時代に戻ったら、同社の経営者が、労働者に投資する必要がある、労働者とその家族の面倒を十分に見なければならない、と言っている姿を見るだろう。いずれもESGの『S』パートの活動だ。こうした戦略としての社会課題解決は、一部の企業にとっては長年してきたことだ。」
タタやユニリーバがかつて労働者階層への投資を重視したのは、巡り巡って自社の経営基盤の強化につながると考えたからです。
さらに最近では、かつてはNGO(非営利組織)の持ち場だった「社会課題解決」分野が脚光を浴びていることで、自社のとはこれまで関係なくても、ここに取り組み企業が増えているという実態があります。
これは、投資家の変化が大きく影響しているのです。
「企業は長年ESG的な活動をしてきたが、投資家がESG的な活動により注目するようになったのは最近だ。企業は、事業拡大・安定戦略の一部として社会課題解決を考えてきた。一方投資家は今、(ESGに積極的な企業は)かなりの部分、リスク管理のレベルが高いと位置付けている。」
「今日、もし企業がESGを管理できなければ、投資家は大きなリスクと見なす。トラブルやスキャンダルに巻き込まれたり、政府から巨額の罰金を科せられたりしやすいと見なす。しかし企業がESGに適切に取り組めば、そうしたリスクが低減されると期待する。私は、リスク削減の意識が高い企業こそESGを大きく推進していると考える。あるいは、ESGに取り組んでもうまくいかない企業があれば、内部に何らかの対立やトレードオフが生じているはずだ。こうした企業は早晩問題を起こす可能性が高い。」
近年は投資家が、ESGの概念をさらに高めた「インパクト投資」を実施する企業に注目しています。
「インパクト投資」とはどのような活動なのでしょうか?
「ESGの考え方は、世界をなるべく傷つけないようにするというものだ。格差を拡大しない、二酸化炭素排出を増やさない、などというものだ。『インパクト投資』はそれを一歩進め、世界を修復しようとする。ESG全般に取り組むのは言うまでもなく、事業により社会課題の解決を試みる。」
「例えば、メーカーがESGに取り組むとする。ソフトドリンクメーカーなら、使う砂糖や水の量を減らし、工場の公害を減らそうとするだろう。それに対して『インパクト投資』は、健康改善につながる飲料を開発したり、飲料製造技術を活用し水質浄化に取り組んだりする。解決を狙う社会課題は様々だ。社会の格差、気候変動、生物多雨性の問題・・・。貧困国での教育問題に事業で関与することも含まれるかもしれない。世界に前向きなインパクトを起こすビジネスを創るのだ。」
「最初から『何をインパクトと呼ぶか』を定義するのが、『インパクト投資』で最も重要だ。解決しようとしている社会課題は何か?明確な戦略も必要で改善出来ているかどうか進捗を測る指標も必要。実際に課題を解決することが重要なのだ」
今後は金融機関や投資家から起業に対する、ESG対応を求めるプレッシャーは高まる一方です。
経営者の個人的な振る舞いやプライバシー対応も、ESGの一つと言えるでしょう。
しかし、そこには思わぬ落とし穴もあるようです。
(続く)
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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣