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マーケティング研究 他社事例 615 「無形資産投資(知財投資)を高める必要性について」 ~予算制度の在り方にもメスを~

2020-08-06 08:30:08 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 615 「無形資産投資(知財投資)を高める必要性について」 ~予算制度の在り方にもメスを~


昨年末、政府は総額102兆6580億円の2020年度当初予算案と、2019年10月の消費税引き上げの影響や多発する自然災害への備えを柱にした約13兆円の経済対策を決定しました。

経済対策は2020年度当初予算案と2019年度補正予算案にそれぞれ計上されるものですが、ここでは一体で考えてみたいと思います。

当初予算案だけでも、100兆円超えが常態化しつつある状況が、財政の持続性に懸念を抱かせていることは指摘される通りでしょう。

改革はぜひとも必要です。

最も課題だと考えているのは、肥大化した予算の使い方です。

日本の予算は経済成長につながるものになっているのでしょうか?

もっとそこを意識する必要があると思います。

主要24ヵ国の政府投資(ストックベース、2015)を見ると、日本はインフラなどを中心とした構築物への投資(建設投資)の占める割合が94%強で第1位となっています。

その後に続くのは、ポルトガルやハンガリー、チェコ、リトアニアなどです。

先進国ではイタリアがようやく9位といった所です。

建設投資に偏っているのはなぜでしょうか?

直近では、相次ぐ自然災害からの復旧や防災・減災のための対策もあります。

これは当然ながら必要な事ですが、それだけではないようなのです。

問題の一つは、建設国債制度ではないでしょうか?

政府の国債は発行目的別の分類があり、大きなものは建設国債と赤字国債です。

建設国債は、道路などをつくる公共事業を目的に発行するもので、資産が残る事から、負債を返済する将来世代に恩恵があるとしています。

そのため、財政法では建設国債以外の国債発行は原則、認めていません。

しかし、社会保障費など、インフラ整備など以外の経費にあてることになる赤字国債は毎年、特例法を制定することで発行しています。

考え方としては、建設だけを「投資」として扱い、他をすべて「費用」とするのに等しいのです。

一方、日本で低調なのが、無形資産への投資です。

有形・無形を含む政府の固定資産に占める研究開発やソフトウエア投資など知的財産生産物を見ると、日本のその比率は、主要国では下から4番目となっています。(日本より下は、イギリス・チェコ・ハンガリー)

産業の高度化に伴って、付加価値の源泉が知財に移っていることはもはや言うまでもありませんが、日本の政府投資は、今も有形の建設投資が中心になっているのです。

もっと知財など無形資産への政府投資を拡大していく必要があるはずです。

ただし難しいのは、近年の経済環境が、再び政府の財政出動拡大を求めるものになっていることです。

端的に言えば、金利引き下げなどの金融政策が効かなくなり、財政政策が重視され始めているという事です。

2008年秋のリーマン・ショック、2010年の欧州債務危機などを経て、先進国では超低金利、低インフレや超長期債利回りのマイナス化という現象が起きていました。

背景にあるのは、先進国における民間部門の過剰貯蓄です。

あえて分かり易く言えば、資金をより多くため込み続けた結果、使う分が減っているということです。

アメリカではリーマン・ショック後に、特に家計部門の貯蓄余剰が拡大しました。

欧州でも企業部門の貯蓄余剰が定着しました。

その後、やや落ち着いたところがありましたが、それでも危機以前に比べるとさらに早く、1990年代から起業部門が貯蓄余剰主体になり、足元では家計部門も余剰が拡大しています。

家計の余剰拡大は、高齢化によって貯蓄率が上昇してきたためでしょう。

日本の貯蓄率は、6~7年前ごろまでは低下傾向が見られましたが、以後再び上昇しています。

ここ数年、高齢者と女性の労働参加が進み、日本の総支払い賃金額は増えていますが、その層などが老後の将来不安に備えて貯蓄に走っているのではないでしょうか?

こうして、民間がお金を使わなくなると、中央銀行が金融緩和をしても資金需要が伸びません。

日米欧ともリーマン・ショック後に大幅な金融緩和政策を実施したにもかかわらず、効果が低いのはそのためです。

この結果、金融政策から政府による財政政策の役割を見直す動きが世界的に高まっています。

つまり民間が投資をしない以上、政府が投資をして景気を押し上げ、将来の経済成長のシーズを作っていく必要があるという発想です。

となれば、財政政策の重要度は今後、なかなか下がらないのではないでしょうか?

どう使うかが一段と重要になるはずです。

そのためにも、建設国債制度そのものを見直した方が良いという議論が必要かもしれません。

建設国債の使途は、制度的には毎年の予算総則で、建設国債による調達を何に使えるかを列挙するホワイトリスト方式を取っています。

その中身はインフラや施設整備費でほとんどが占められており、これが「政府の投資 = 建設投資」の元になっているのです。

霞が関の常として、この仕組みを残したままで使途を拡大する方法が取られやすいのですが、それでは重要な知財投資などに柔軟に対応することが難しくなると思います。

日本経済の強みをどう作るか?

予算制度の在り方にも、その鍵が潜んでいるかもしれませんね。


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