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『生物はなぜ死ぬのか』著者 最も進化した生物はヒトではなく昆虫!?24時間足らずで脱皮、交尾、産卵して老化するカゲロウから見る<死>の意味

2022年03月16日 20時00分27秒 | 生き物のこと
『生物はなぜ死ぬのか』著者 最も進化した生物はヒトではなく昆虫!?24時間足らずで脱皮、交尾、産卵して老化するカゲロウから見る<死>の意味



2022年2月10日に発表された「新書大賞2022」。20年12月から21年11月に刊行された1300点以上の新書について、有識者、書店員さん、各社新書編集部などに投票してもらい、見事第2位になったのが『生物はなぜ死ぬのか』です。生物が免れることのできない「死」の意味に正面から向き合った同書は14万部を超えるベストセラーとなり、21年4月の刊行から約1年を経た今も版を重ねています。その本によれば、もっとも進化して複雑化した生物は「昆虫」だそう。同書より“昆虫の死”について解説した部分を特別に掲載いたします。 


【図1】動物の系統樹。昆虫は無脊椎動物の枝の頂点に

 * * * * * * * 

◆昆虫は、もっとも進化した生き物? 

地球には、名前のついているものだけでも約180万種の生物種が知られています。その半分以上の約97万種は昆虫です。つまり、地球上で最も多様化し繁栄している生物が、昆虫といってもいいのかもしれません。 動物の系統樹(図1)を見ると、無脊椎動物の枝(図1の左の枝)の頂点に位置するのが節足動物であり、昆虫はそこに含まれます。 

昆虫の死に方は、「食べられて死ぬタイプ」と「寿命を全うするタイプ」の2通りあります。 しかし同じ節足動物でも、水の中で暮らしているエビやカニ(節足動物甲殻類)に比べると、食べられて死ぬ割合はずっと小さいです。

陸上のさまざまな環境に適応して、例えば高い飛翔能力などを持ち、敵に食べられにくい個体が生き残り、進化したのでしょう。 昆虫の特徴は何と言っても変態することです。そのための準備期間である幼虫の時期の占める割合が長いです。




図2:ヘッケルによる脊椎動物各群の発生過程(『生物はなぜ死ぬのか』より)

◆なぜ昆虫は変態をするのか 




ここで少し脱線しますが、なぜ昆虫はこのような変態をするのか、進化の観点から考えてみましょう。エルンスト・ヘッケルというドイツの生物学者が1866年に「反復説」という進化の説を提唱しました(図2)。


 この説は「個体発生は系統発生を繰り返す」というもので、例えば哺乳動物の胎児は水かき、えらや尾があり、両生類や爬虫類と似た特徴を持っています。彼の説では、哺乳動物は両生類、爬虫類を経て進化したため、このような特徴を維持しているということです。 私の解釈としては、脊椎動物の体を作り上げていく過程は、母親のお腹の中や、卵の中の「守られた環境」で起こるため選択がかかりにくく、ご先祖様と同じ姿のままでも特段の問題はなかったのでしょう。加えて、初期発生は個体の基本構造を組み立てていく過程なので、変更しにくいところでもあります。 


そこで、このヘッケルの反復説を無脊椎動物の昆虫に当てはめると、幼虫は彼らの祖先であるセンチュウのような線形動物的な形態を繰り返しているのでしょう

 さて、昆虫の死に方の話に戻ります。カブトムシを見てもわかりますが、硬い兜かぶとに包まれた成虫に比べると、軟らかいイモムシのような幼虫はかなり無防備です。 土や枯れ木の中に隠れてはいますが、モグラの大好物です。

食べられて死ぬのもこの時期が多いです。成虫は木の上や、枯葉の下などの浅い地中にいるのでカラスやネコに狙われますが、食べられるリスクはずっと低いと思われます。 捕食されるリスクのみならず、幼虫は行動範囲が狭いという点がデメリットです。もし幼虫のまま成虫になれないとすると、近くにいる遺伝的に非常に近い個体との交尾しかできないため、多様性の確保という面ではいまいちです。




◆「幼虫の時期」に秘められた大切な意味とは


 そこで、より運動性が高く捕食されにくい硬い体を持った「成虫」になるように進化したのでしょう。つまり交尾のために変態するのです。 それなら変態などというめんどうくさいことをしないで、最初から成虫の形で生まれてくればいいじゃないかと思う方もおられることでしょう。

 バッタの仲間はそれに近く、幼虫と成虫が似ていますが、何度も脱皮する必要があり、そのときに動けない時間があるため捕食されるリスクはやはりあります。

 一方、カブトムシのような硬い殻(兜)を持つ昆虫(甲虫)が脱皮するのは、現実的に不可能です。そのため、幼虫、蛹さなぎというリスクの高い形態を経る必要があります。それ以外にも幼虫の時期に大切な意味があります。

 成虫になってからの食料やメスを奪い合う戦いに勝つためには、大きな体と長いツノが有利です。そのためには、モグラに食べられるリスクはあっても、長期間にわたる幼虫の時期にたくさん食べて体を大きくしておくほうが結果的には正解だったのでしょう。 

繰り返しになりますが、進化が生物を作ったのです。たまたまこのような発生過程をもつ生き物が、生き残ってこられたのです。 

子供の頃、カブトムシの幼虫の重量感に驚いた経験のある方もおられることと思います。カブトムシや他の昆虫にとって、大きくなれるのは幼虫のときだけなのです。 つまり幼虫の仕事は、食って大きくなることです。

成虫になった昆虫の仕事は、他の生き物同様、生殖です。 同種の異性の個体を探して動き回りますが、そのための運動・闘争能力、フェロモンの探知能力は驚異的に発達しています。例えばトカゲなどの生餌(いきえ)として売られているトルキスタンゴキブリは、100分子以下の超微量のフェロモンも感じ取ることができ、遠く離れた異性を追跡することができます。 

これも繰り返しになりますが、いきなりこのような超高感度の検知能力を得たわけではなく、より交尾相手を見つけやすいものが選択されて、結果的にこうなったのです。


◆昆虫の死に方は究極に進化した「プログラムされた死」

 多くの昆虫は、交尾の後、役割がすんだと言わんばかりにバタバタと死んでいきます。それまでの活発な行動は嘘だったかのようです

 カゲロウの成虫の寿命はわずか24時間足らずで、脱皮して交尾、産卵のあとは急速に老化し、まるで終了プログラムが起動した機械のように死んでいきます。 

なんと彼らには口がありません。ほんのわずかしか生きないので、ものを食べる必要すらないのです。このように成虫の寿命は、子孫を残すためだけに使われるのです。無駄に生きないという意味では、積極的な死に方であり、究極に進化したプログラムされた死と言ってもいいです。


◆最後に著者からのご挨拶 女性だったり、男性だったり、人間だったり。私たちは偶然この世に生まれてきました。そして奇跡的な出会いで、こうして同じ時間を過ごしています。 これはすごく幸せで、楽しいことです。


 ただ、生きているもの、自分にも、周りの人にも、やがて死が訪れます。これは必然です。

 ではなぜ私たちは死ななければならないのでしょうか?  実はそれには誰もが納得する生物学的な理由があります

『生物はなぜ死ぬのか』が、やがて訪れる死への恐れをほんの少しでも和らげ、現在の「生」をより意味のあるものにする手助けになれば、この上のない幸せです。 

 ※本稿は、『生物はなぜ死ぬのか』(講談社)の一部を再編集したものです。








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年の瀬、寒さのお参りです

2022年03月16日 19時01分45秒 | いろいろな出来事
もうすぐ、初詣になりますね🍀



12/26/2021
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小1男児、トイレで児童8人から殴る蹴るの暴行。全身打撲で全治4週間に…→学校「ポピュラーな遊び」と説明 いじめは否定

2022年03月16日 17時05分21秒 | 社会のことなど
小1男児、トイレで児童8人から殴る蹴るの暴行。全身打撲で全治4週間に…→学校「ポピュラーな遊び」と説明 いじめは否定


2022/03/15(火) 19:44:15.



 仙台市立小学校の男子児童がいじめを受けて不登校になったとして、市教育委員会は、いじめ防止対策推進法で定める「重大事態」と認定する方針を固めた。

 児童の欠席日数は認定の目安となる30日を超え、15日で連続50日に上る。市教委は「事実確認で時間がかかっている」として、対応の遅れを認めている。

 保護者によると、小1の男子児童は昨年12月15日、時間内に食べ終わらなかった給食を昼休みに食べていた時、同級生にトイレへ連れて行かれ、児童8人から胸や背中などを殴ったり蹴られたりしたという。受診した小児科で「全身打撲」「急性ストレス反応疑い」で全治4週間と診断された。

 学校に対して調査を求めた保護者によると、学校側からは「ポピュラーな遊びだった」「加害者側もたたかれた」などと回答され、いじめは否定されたという。男子児童は同16日から不登校が続いている。

 保護者は市教委に話し合いを求め、今月4日に状況を説明した。これを受けて市教委は「いじめがあったという前提で、学校内で詳しい状況を確認している」として、重大事態として第三者を含む「いじめ調査委員会」を学校に設け、調査する。

 事案の発生から3か月が経過し、保護者は「子どもが学校へ行けない日が続いている。市教委は実態を正しく確認して説明してほしい」と求める。学校側は14日、読売新聞の取材に対し、「個別案件には答えられない」としている



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20代女性と結婚したい男性」に欠けている視点…30歳を超えると若い女性との結婚は難しい

2022年03月16日 15時00分34秒 | 社会のことなど

大手マッチングアプリ会社と共同で2020年に行った大規模なアンケート調査※では、20代から40代の未婚男性すべてにおいて「理想の結婚相手の年齢は」という質問に対し、

「20代後半」がトップという回答結果となりました。この結果からは、20代女性との結婚を夢見る婚活男性がいかに多いかということが示されています。

今回は「20代女性との結婚を叶えるために、最も効率的な男性の年齢はいくつなのか」を、

国の婚姻統計(2018年に入籍し、同年に結婚生活を開始した初婚男女、全33万9772件)を再分析した結果からご紹介してみたいと思います。

■20代までの女性との成婚は全体の65%
2018年の該当する婚姻届33万9772件のうち、20代までの女性との成婚件数は22万323件で、全体の64.8%となりました。

「6割を超えているじゃないか!?初婚男性の5人に3人は20代までの妻を持つのか」というざっくりした数字の見方をしてしまう読者もいるかもしれませんが、実際は男性の年齢によって大きく異なってきますので注意が必要です。

まずは、20代までの女性との成婚について、男性の年齢別の発生件数を見ていきましょう(図表1)。
https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/1/e/1080/img_1e204215c864a7de3b79d3f810e50e4a151901.jpg

20代まで(婚姻統計上15歳※から29歳)の女性との成婚に至った男性の年齢のピークは27歳の2万5652件で、僅差で26歳の男性の2万5257件が続きます。
※法律上は女性の成婚可能年齢は16歳からであるが、統計上は2018年に入籍した男女が「結婚生活を始めた年齢」での計上となるため、結婚式や同棲等が16歳の誕生日より先に行われていた場合が該当する。

20代までの女性との成婚件数が年間2万件を超えるのは、男性が25歳から28歳までとなっており、結婚にも明確な「旬」があることが見てとれます。
この25歳から28歳の男性だけで9万5595件となり、20代までの女性との成婚全体の43.4%に達します。
これに20代までの女性との成婚件数が年間1万件を超える23歳、24歳、29歳、30歳を足すと、15万5565件となり、70.6%を占める結果となりました。
この件数グラフからだけでも、20代までの女性との結婚を望む場合は、男性自らの年齢が26歳から27歳あたりが最も成立しやすく、かつ、23歳から30歳までの男性が「旬」といった様子がうかがえます。

ちなみに、20代までの女性との成婚22万323件のうち、74.2%(4組に3組)を29歳までの男性が占めています。
これが30代男性ともなると24.2%(4組に1組)にまで急落し、40代では1.5%、50代では0.08%という、ともにまずは発生しないといえる確率に下落します。
いかに男性の年齢(若さ)が読者の皆さんの想像以上に若い女性との結婚にパワーを発揮するか、明確に示しているデータの1つとなっています。

■20代までの女性と結婚した人の割合
最後に2018年に成婚した初婚男性の年齢別に、成婚した方の何割が20代までの女性と成婚しているのかについて見ていきたいと思います(図表2)。
https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/1080/img_6c2f7adfec85d77d73b3be217a75b1f9229046.jpg

まず10代男性は100%、20代までの女性と成婚しています。
さらに24歳までの男性であれば95%を超えていますので、相手の年齢への希望に関しては「ほぼ確実にかなう」という状況です。
また27歳までであれば約9割を超えていますので、今あなたが27歳までの男性であれば「20代までの女性と成婚できますよ」という見方が統計的にはできると思います。

同様に28歳と29歳の男性ですが、84%と76%とともに約8割ですので、「5人に4人くらいの方はかなっていますので、まあ大丈夫でしょう。ただし、のんびり婚活だけはやめてくださいね」といったところです。

なぜ28歳と29歳の男性はのんびりと婚活をしないほうがいいのでしょうか??グラフを見ていただくとわかると思いますが、30歳となった途端に20代までの妻の割合が61%にまで減少するのです。

男性といえども、30歳は最初の婚活のターニングポイントだという自覚が必要です。

「30歳なら20代女性との結婚なんて余裕でしょ?」と思い込んでいる方は、統計的エビデンスに反しますので今すぐ婚活への見方を見直したほうがよさそうです。

31歳、32歳の男性の成婚ともなると、20代までの妻の割合は52%、45%です。男性は31歳から32歳で「20代までの妻を持つ確率は5割となる」と覚えておいてください。

つまり若い女性を求める場合、男性自身が30歳を超えるとかなりのレッドオーシャン状態(激戦)となる、ということが言えます。(以下略)


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性的行為を目的に子どもを手なずける「グルーミング」の手口とは。

2022年03月16日 11時01分32秒 | 女と男のこと
性的行為を目的に子どもを手なずける「グルーミング」の手口とは。被害者が刑法改正に望むこと

11/28/2021

知佳(ちか、仮名)が中学に上がると、毎日のように通っていた習いごとの場で、若手コーチから無視や体型をやゆされるなどのいじめに遭うようになった。「このまま続けてもプロは望めない」という諦めも重なり、中学2年の途中でやめた。 

共通の趣味を持つ友達はクラスにいない。父は仕事に、母は認知症の祖父母の介護にかかりきりだった。 漠然とした孤独の中で過ごす日々。知佳はネットの世界に没頭するようになった。ありのままの自分を肯定し、受け止めてくれたのは10歳近く年上の塾の男性講師だった。

 「全面的に信頼できるお兄さん」。そう思っていた。


 ■ ■ 性的な行為を目的に、子どもを手なずける「グルーミング」。

性犯罪に関する刑法改正を議論する法務省の法制審議会で、諮問項目の一つに上がった。 加害者は子どもや親から信頼を得ていくため、子ども自身が被害を認識しづらい上、周囲の大人も気づきにくい特徴がある。 どのような手口で子どもに近づき、性的行為に至るのか。被害を防ぐために身近な大人にできることは何か。被害者や専門家に取材した。

【國崎万智・ハフポスト日本版】 (※この記事には、性暴力の描写が含まれています)

「唯一の理解者」


知佳が学習塾に通い始めたのは中学3年(当時14歳)の春。「人生の全て」だった習いごとを失い、心にぽっかりと穴があいていた。 コーチからのいじめに苦しんだとき、母は「辛いならやめたらいいじゃない」と突き放した。3歳で始めて10年以上、プロになることも見据えて努力してきたため葛藤があった。親に求めていた共感は、得られなかった。 


孤独を感じていた頃、塾で男性講師と出会う。明るく冗談が得意で、教えるのも上手く生徒たちから人気だった。 夏期講習が始まり、日中に授業が終わる日が増えた。同級生たちと教室に残って談笑していると、その講師は「時間あるんだったら宿題とか見るよ」と生徒たちを自宅に誘った。 


最初は、知佳を入れて3人の女子生徒で行った。講師は優しく勉強を見てくれただけでなく、知佳たちの私的な悩みを聞いてくれた。同級生の体に残る自傷の痕を見ると、「大変だったね」「そうするしかなかったんだよね」と寄り添い、全てを肯定した。 夢を諦めた。親は自分の気持ちを分かってくれず、気の合う友達もいない。地方から抜け出したい――。 

そんな知佳の訴えにも講師は耳を傾け、受け止めてくれた。

 「話をちゃんと聞いてくれて、気持ちを分かってくれる大人がこの世にいたんだということがうれしかった」 知佳にとって、「唯一の理解者」のように感じられた。



頭が真っ白に。自分を責めた


それから数回、同級生と一緒に講師の自宅に行っては、勉強を教わったり、相談に乗ってもらったりした。楽しく、安らげる時間だった。 ある日、いつものように講師宅を訪れた。その日は知佳の他に誰も来なかった。勉強をしていると突然体を触られ、キスされた。知佳は頭が真っ白になり、動けなくなった。 「大丈夫、大丈夫」「好きだからこういうことするんだよ」 講師はなだめるように言った。

知佳は突然の事態に混乱し、何も言えなかった。 性行為の後、知佳は恐怖と不安に襲われた。「付き合うということなんですか」と尋ねると、講師は「そういうことだよ」と答えた。「大人と対等に話ができて、他の生徒とは違う。君はすごく特別なんだよ」 これは恋愛なんだ。交際しているから、性的なことをするのは「普通」なんだ。 知佳は自分にそう言い聞かせた。 講師と性的な関係を持ってから間もなく、知佳は眠れなくなり、朝学校に行こうとするとパニックで発作を起こすようになった。心療内科に通うようになり、抗うつ剤などを服用しながらなんとか登校した。

 講師とデートに出かけることはほとんどない。会う時は自宅やカラオケボックスなどの密室に呼び出され、毎回のように性行為の求めに応じた。関係は、講師が転居するまで数年間続いた。

 ■ ■ 「家に行った自分が悪いんだ」

 知佳は自分を責め続けた。講師との関係だけではない。大人になってからも、仕事や人間関係がうまくいかない時は「自己責任だ」と考える思考が染みついていた。 転機は2018年。教師からの性暴力を実名で告発した女性が「恋愛と思い込まされていた」と訴える記事を読んだ時、自分の体験とあまりに似ていると感じた。

「抑えていた記憶のふたが開いた感じでした」。あれは性暴力だったと、はっきり気づいた。 被害当時のフラッシュバックを起こすようになり、再び心療内科にかかるようになった。性被害を自覚したことによる苦しみはあっても、知佳は「悪いのは加害者」だと分かったことで救われたと明かす。 

「子どもの頃に植え付けられた理由の分からない罪悪感や恥から、完璧に抜け出すことはできません。今も感情の揺り戻しはあります。それでも、『自分は悪くなかった』という事実が絶対的なものになったので、視界が開けて生きるのが少し楽になりました」



「見えない檻」に囚われる


子どもへの性的なグルーミングとは、「ターゲットを絞り込んで接近手段を確保し、被害者を孤立させ、被害者からの信頼を得てその関係性をコントロールし、隠蔽する」行為と言われる。 

目白大専任講師で公認心理師の齋藤梓さん(被害者心理学)によると、グルーミングは子どもとの関係別で、 

1)リアルで近しい人からのグルーミング(教師、コーチ、養護施設やNPOの職員、親戚、親の恋人など) 

2)それほど近しくない人からのグルーミング(公園や公共施設で声をかけてきた人など) 

3)オンライン・グルーミング(SNSなどネットを通じて知り合った人) の三つに分類できるという。

グルーミングの過程で、子どもはどのような心理状況に置かれるのか。 齋藤さんは「加害者は、子どもの『大人に認められたい、褒められてうれしい』という気持ちを利用しやすい」と指摘する。 

「加害者は、悩みを抱えていて孤立させやすい子どもを選んで近づくことが多いです。


『他の人には君の気持ちはわからないかもしれないね。でも自分は同じ経験があって理解できるよ』というように、自らに依存させるよう優しく声がけをします。子どもの欲しがる言葉を与え、徐々に信頼を勝ち得て最終的に性的行為に及びます。子どもの尊敬や信頼する心をうまく利用するんです」 子どもたちは性暴力にあっても、被害を受けたと気づきにくい。なぜか。グルーミングの段階で、子どもたちは「見えない檻に囚われている」からだと齋藤さんは言う。 

「年齢が幼い場合はそもそも性に関する知識や経験がありません。さらに、子どもにとって加害者は自分を認め、理解してくれる大切な存在です。悩みを受け止めてくれる人を失ってしまう、裏切ってはいけない、この人が自分に悪いことをするわけがない。子どもはそう思い込んでいるので、性的な接触に恐怖や嫌悪感があっても、それが性暴力だと認識することは難しいです」 だまされるのは、子どもだけではない。

 「狙う時は家族ごと。加害者が教師や塾の先生、習いごとのコーチなどの場合、保護者をはじめ周囲からも信頼を集めるタイプであることが多いです。大人の信頼も得ているので、加害者が子どもと2人きりになっても親は疑わなくなります」(齋藤さん)

 加害者から子どもが「2人だけの秘密だよ」と口止めされたり、「他の人に知られたら大変なことになる」と脅されたりすることもあるという。

子どもたちには「防ぎようがない」


被害を受けた子どもは、「自分の価値がなくなった感じがする」「全てどうでもよくなった」などと訴え、死にたいと思う自殺念慮や不眠の症状が出ることも多いと齋藤さんは話す。 性被害につながるグルーミングから、子どもたちを守るにはどうすれば良いのか。

 齋藤さんは、「親切にしてくれる背景に性的な目的があるかないかを子どもが見極めるのはほぼ不可能。子どもたちには防ぎようがないのです」と強調する。その上で、「特別な理由がなければ一対一の状況を作らない、不必要な身体接触はさせないなど、大人が警戒することが必要です」と訴える。


 「子どもに優しく接し、相談に乗ること自体はもちろん悪いことではありません。ですが、性的行為を目的に子どもに徐々に近づく手法があるということがより多くの人に知られ、その手段が適切に罰せられてほしいと思います。大人と子どもという対等ではない関係での性的行為に同意は成り立たないという前提のもと、加害者からの暴力がなく子どもが『同意』したかのように見える場合にも、グルーミングによる手なずけがあったかもしれないと身近な大人が疑うことが欠かせません」

(齋藤さん) 地位や関係性を利用した子どもへの性暴力。現在の刑法では犯罪の成立要件が被害の実態に見合わず、加害者が適切に処罰されない問題が指摘されている。

 性的行為の前段階であるグルーミング行為についても、処罰する法律は日本にない。 一方、海外では規定を設けている事例もある。ドイツ刑法は、ネット上のチャットなどを利用して児童に性的行為をするようはたらきかける行為を処罰すると規定している。

2020年の刑法改正で、おとり捜査のように相手が大人の場合も処罰の対象となった。 ※参考:『性犯罪規定の比較法研究』(樋口亮介・深町晋也 編著、成文堂) 日本の法制審では今後、グルーミングの処罰規定を新設するかについても話し合われる予定だ。


法改正は「被害者の回復にも必要」


「女性はいくらでも嘘をつける」 女性への性犯罪に絡み、自民党の杉田水脈議員がそう発言したことを受け、緊急で開かれた2020年10月のフラワーデモの集会。知佳のメッセージを、登壇者が読み上げた。 

被害について声を上げている人々は、本当なら人に話したくもない辛い経験について、『これから同じような被害が繰り返される社会であってはならない』という思いを何とか伝えているのです。ウソをつく余裕なんてどこにもありません> フラワーデモへの参加のほか、SNSやブログでも自らの被害などについて匿名で発信を続けている知佳。刑法改正に、どんなことを望むのか。

 「グルーミング行為や地位・関係性を利用した性暴力は、やり口の巧妙さから被害を訴え出ることが難しく、(統計に数えられない)暗数がとても大きいと思います。それらをきちんと処罰できる犯罪類型が刑法で作られることは、被害の実態を明らかにする後押しになるのではないでしょうか」 「日本社会で、関係性を悪用した性暴力は正当に裁かれるという前提ができること自体が、被害者の心の回復に欠かせません」 時効の問題もある。強制性交等罪の公訴時効は10年、強制わいせつ罪は7年で、期間の短さが指摘されてきた。知佳自身、被害を受けてからそれが性暴力だったと認識するまでに15年かかった。

 海外では、性暴力の被害者が成人するまで時効を停止する国もある。イギリスは性犯罪について公訴時効がない。 知佳は「子ども時代の被害は、それを認識するのに時間がかかります。少なくとも起算点をずらすなど、時効を見直してほしい」と訴えている。


<子どもの性被害に関する相談窓口>


児童相談所虐待対応ダイヤル「189」 子どもの人権110番 0120-007-110(午前8時半~午後5時15分、月曜~金曜) チャイルドライン 0120-99-7777(午後4時~午後9時) 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター【一覧





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