事故物件というと、「予期せぬ事件や事故が、運悪く起きてしまった物件」とのイメージをお持ちの方も多いと思います。しかし、日本中の事故物件の情報を集めていると、そこに何らかの共通点を見いだせることがあります。
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他の物件と比べると、なぜか高確率で事故物件化してしまう――。世の中には、そんな不幸なパターンが存在するのです。そこで今回は、「死を引き寄せる物件」の特徴についてお話ししましょう。(全2回の1回目/ 後編に続く )
豪邸の庭で見つかった“白骨死体”
今回のテーマを語る上で、外せないのは愛知県です。不思議と愛知県には、「事故物件になりやすいパターン」を見ていく際に、参考になる事例が多いのです。 名古屋有数の繁華街といえば「栄」ですが、そのすぐ近くの屋敷では、5年ほど前に男性の白骨死体が見つかる、という奇妙な事件がありました。そこは、庭に背の高いシュロの木が生えている豪邸で、名古屋の中心部にこんな家があるのか……と思ってしまうほど、立派な“お屋敷”でした。
ただ、興味深いのは、その死体発見までの経緯です。白骨死体を見つけたのは住人でも警察でもなく、庭木の剪定にきていた業者でした。業者が作業中に、庭でスーツを着た男性の遺体を発見。目立った外傷はなかったものの、遺体は白骨化し、身元がわからなくなっていたのです。
男性の身に何が起きたのか?
その男性は、なぜ屋敷の庭で白骨化してしまったのか。まず疑いたくなるのは、家の住人が何らかの事情を知っているのではないか、ということでしょう。しかし、仮にそうであれば、住人は庭に埋めるなり、どこかに隠すなり、遺体が発見されないようにする工作を、いくらでもできたはずです。 しかし、遺体は無防備にも庭に放置され、剪定にきた業者に簡単に見つかってしまうような状態でした。その家の庭は非常に広く、報道によると、遺体が発見された一角は住人も普段立ち寄らないようなスペースだったようです。 そこから考えられるのは、次のようなシナリオです
誰にも気づかれずに白骨化した理由
ある日、近くの居酒屋で飲んだ帰りだったのか――ひどく酔っ払ったスーツ姿の男性が、その屋敷の前を通りかかります。何を思ったのか、彼は屋敷の塀をよじ登り……そして庭へと落下。受け身をとることもできず地面に激突し、その衝撃で命を落とします。
やがて、時間とともに男性の遺体は腐敗し、かなりの臭いを放ちます。通常、例えばマンションの一室で孤独死した人がいれば、この段階で近所の誰かが臭いに気付き、遺体が発見されます。しかし、大きな庭の、誰も近づくことがない片隅で死んでしまったために、その男性は誰にも気づかれることなく、やがて白骨化してしまいます。
骨になれば臭いも弱まるので、遺体はより発見されにくくなります。こうして、ついに身元がわからなくなるほど変わり果てた男性は、庭木の剪定に訪れた業者によって、ようやく発見されたのです。
ある自衛官の不可解な死
白骨化するまで死体が見つからなかった、というのは非常に珍しいケースですが、大きな家に見知らぬ人が忍び込み、なにかの拍子に亡くなってしまうという事例は、実は時々起きています。
これは東京の例ですが、今から十数年前、中目黒にある民家の敷地内で、自衛官の男性が頭から血を流して亡くなっているのが見つかりました。しかし、その家に住んでいた家族は誰も、亡くなった男性とは面識がありませんでした。
自衛官が不可解な亡くなり方をした、ということもあり、当時ネット上では様々な陰謀論も囁かれました。しかし、その後の報道によると、どうやら原因はお酒のようです。
その男性は前夜、近くの駅前で飲み会をしていました。そして、かなり酔っ払った状態で、中目黒にあるホテルへ歩いて帰っていったそうです。その道中に、翌朝遺体が発見される民家がありました。ホテルに到着したと勘違いしたのか、体調が悪くなって一休みしようと思ったのか、あるいはふらついて入り込んでしまったのか……。今となっては理由はわかりませんが、その男性はホテルではなく、民家の敷地に侵入してしまいました。
実はこの民家というのが、白骨死体が発見された名古屋の屋敷と同じく、まさしく豪邸で、庭にはプールがありました。しかし、真夜中に泥酔しながら歩いていた男性の視界には、入っていなかったのでしょう。おそらく、ふらつきながら歩いていった先で足を踏み外し、水の入っていない空のプールに転落。顔から落ちてしまい、命を落としたのではないかと考えられます。
物件の“死角”で起きた悲劇
この2つの物件に共通しているのは、住人の目が行き届かないスペースがあるほど、広い家だったということ。名古屋の物件も、中目黒の物件も、亡くなった男性が転落した瞬間には、それなりの音がしたのではないかと思います。もし、そのタイミングで住人や近所の人が異変に気づいていれば、救急車を呼び、最悪の事態は回避することができたかもしれません。
しかし、どちらも遺体の発見まで、それなりの時間が経っています。東京の物件は翌朝でしたが、名古屋の場合は、なんと白骨化するまで見つかりませんでした。
こうした“死角”とも言えるスペースが存在する物件では、住人とは関係のない予期せぬ事件・事故が起き、とばっちりのような形で事故物件化してしまう事例があるのです。
一方で、豪邸やお屋敷などではない、一般的な物件でも、「立地」や「土地の使い方」によって、事故物件化する確率を高めてしまうケースもあります。次は、そんな“不幸なパターン”について見ていきましょう。 ( 後編に続く ) 庭で車が爆発、運転手が死亡…大島てるが警告する「事故物件になりやすい立地はこれだ」 へ続く