連休明け22日の東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=120円台を付け、2016年2月以来、約6年1カ月ぶりの円安・ドル高水準となった。その後のロンドン市場では121円台まで円安が加速した。利上げを進める米国と、日本の金利差拡大が意識され、対ドルの円相場は、この2週間で5円以上も円安が進んでいる。
3/23/2022
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円安は輸出企業にとって業績改善につながる一方で、ロシアのウクライナ侵攻に伴い高騰する原油や穀物などの輸入価格をさらに押し上げる要因ともなる。家計や国内企業にとっては負担増となり、新型コロナウイルス禍からの景気回復に水を差す恐れがある。
米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)は3月15、16日の連邦公開市場委員会(FOMC)でゼロ金利政策を解除し、政策金利を0・25%引き上げることを決めた。FRBのパウエル議長は21日の講演で、5月に予定している次回FOMCで0・5%の利上げに踏み切る可能性を示唆。米国で2月の消費者物価指数(CPI)が約40年ぶりの高水準となるなど深刻化する物価高を、積極的な利上げで抑え込む姿勢を鮮明にした。
これに対し、日銀は大規模な金融緩和を当面、続ける方針を示している。黒田東彦総裁が18日の記者会見で「円安は経済・物価にとってプラスになる基本構造は変わっていない」と円安を容認する発言をしたことも材料視され、金利の低い日本の円を売って金利が上昇する米国のドルを買う動きを勢いづけた。
日米の金融政策の違いが明確になる中、市場では円安・ドル高の流れは当面、変わらないとの見方が強く、「1ドル=125円程度までドル高が進んで高止まりするのではないか」との声も出ている。
為替の動向は日本経済にも大きな影響を与えそうだ。現在は円安や原油高などによるコスト上昇を企業がある程度、吸収しているが、第一生命経済研究所の藤代宏一・主任エコノミストは「企業部門のコスト吸収にも限界がある。原油などエネルギーは輸入に依存しており、円安がさらに進めば消費者への打撃は大きくなる」と指摘する。
円安による恩恵を受ける製造業も現地生産の拡大などに伴い、かつてに比べ日本経済に及ぼす円安のプラス効果は薄れている。ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミストは「円安で収益が上がった輸出企業は、賃上げなどを通じて日本経済に利益を還元する努力が必要だ」と指摘している。【竹地広憲、加藤美穂子