※写真はイメージです(以下同)
「24歳の時です。派遣だと将来が不安だし、正社員として働きたいと考えたんです。特技や趣味もあまりありませんでしたが、メイクやコスメは大好きだったので、美容関係の仕事に就きたいなって」
10社ほど受けて、なんと第一希望の会社に決まったという聖菜さんは「これからは順風満帆だぁ〜」と、心から安堵していた。
「仕事は新しいことばかりで覚えるのは大変でしたが、好きな分野なので楽しかったです。女性の先輩はみんなキレイだし、男性社員もイケメンが多かったのも良かった(笑)。もう2年近く彼氏もいなかったから、恋愛もできるかなって」
そんなある日、朝礼で珍しく部長がやってきて「本社から出向してきた人を紹介します」と言った。「今度はどんなイケメンだろう」と淡い期待を抱いていた聖菜さんの上司となったその男は、なんと——。
本社から出向してきた上司が元彼だった
「まさかの元彼だったんです。最後に付き合っていた男で、大喧嘩して別れたので。電話も着信拒否だし、LINEもブロック。頭から存在も消去していたから、元彼が何系の仕事に就いているのかなんて覚えてなかった。まさか、こんなところで会うなんて……」
元彼を避けようとするも上司なので、挨拶や仕事の打ち合わせ、報告などで完全に口をきかないというわけにはいかない。ある時、彼女は仲の良い同期に「2人はもともと知り合いなんでしょ?」と聞かれた。
「敬語で話していたし、余計な会話は一切していなかったので、同期に『何でそう思ったの?』と聞いたら、元彼から聞いたって言うんです。それで、『実は元彼なんだよね』と打ち明けたんです。だけど、あまりいい思い出ではないから、内緒にして欲しいとお願いしました」
だが、この告白が、後にとんでもない事態を引き起こす。
飲み会で関係をバラされる
後日、会社の飲み会で元彼と席が近くなってしまったときのことだった。 「飲み会の序盤から席を変えるわけにもいかず、おとなしく飲んでいたんです。すると、酔っぱらった同期がいきなり『聖菜と昔付き合ってたんですよね〜?』と、ぶっ込んできたんです。内緒にしろって言ったのに……」
2人が元恋人同士だというカミングアウトに、酒に酔った人たちがわらわらと集まってきた。そのとき、聖菜さんの元彼から信じられない言葉が飛び出す。
元彼が大笑いしながら『俺、お前と付き合ってたっけ?』と。もうLINEも消してしまったし、証拠という証拠はないけど、最終的に告白してきたのは彼だったし、別れを切り出したのは私なんです。
でも彼は『あいつとは遊んだだけで、他に本命がいた(笑)』『しつこく言い寄られただけですよ』などと言って、散々笑いのネタにされたんです。プライドが高いからなのか理由はよくわかりませんが……」
その後も面白おかしく話が広がり、聖菜さんは“遊ばれた可哀相な女”といった扱いになってしまう。
付き合っていた頃、元彼は口が悪くモラハラ気味で、暴力まではいかないが、軽く叩かれたことが何回もあったという。だが、そんな裏の顔を知らない会社の人たちからは、すこぶる評判が良かったという。
「イケメンまではいかないにせよ、コミュニーケーション能力が高いから、職場での人望がかなり厚くて。本当は、ただのモラハラ野郎で性格がかなり悪いのに。だからか、みんなは私が捨てられたという話を信じてしまい、『また良い人いるよ!』と励ます人まで出てきて。もう最悪でした」
結局、元彼と同じ空間で働くことに耐えられず、憧れの美容関係の仕事を入社1か月未満で辞めることにした。
「影でみんなに何を言われてるのかと思うと、いたたまれなくて。軽く鬱っぽくなってしまったんですよ」
あれから3年の月日が流れ、聖菜さんは当時のことを「辞めなければ良かった」と振り返る。
「あんなクソ男のために仕事を棒に振ってしまったことを後悔しています。今なら絶対に辞めませんね。せっかく良い会社に入れたのに、本当にもったいないことをしました」
彼女は最後まで「付き合う男で女の人生は変わるって本当ですね。アイツとさえ出会ってなければって今でも思います」と、恨み節全開だった