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三重県に実在する“ヤバい島”を現地取材「ショート2万、ロング4万、帰りは船着き場まで女の子が見送りに…」――2020上半期BEST5

2023年09月02日 03時03分19秒 | 女と男のこと
三重県に実在する“ヤバい島”を現地取材「ショート2万、ロング4万、帰りは船着き場まで女の子が見送りに…」――2020上半期BEST5

2020年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。社会部門の第1位は、こちら!(初公開日 2020年4月18日)。 

【画像】島内の置屋で顔見せをする売春婦たち


 *  *  * 

「同じ風俗であっても、大阪の飛田新地だったらいろんな本が出て、ほぼ語り尽くされている。でもこの“売春島”に関しては好事家の体験談のようなものばかり。『売春の実態を調べていた女性記者が失踪した』とか『客は全員監視されている』だとか……ネット上には真偽のあやしい都市伝説があふれていた。実態がわからなかったんですよ」 

 売春島――。今も公然と売春が行われ、そう呼ばれている三重県の離島、
渡鹿野島について、静かな口調で切り出すのはルポライターの高木瑞穂さん(44)だ。 

「ヤバい島」として長くタブー視されてきた島の実態に迫った高木さんの著書『 売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ 』(彩図社)は、ノンフィクション冬の時代といわれる中、じわじわと売れ続けている。  3年前に出た単行本は2万部を突破。昨年刊行された文庫版も5刷3万部に達するベストセラーになっている。 

 夜ごと体を売る女性たち、裏で糸を引く暴力団関係者、往時のにぎわいを知る島民……。数多の当事者を訪ね歩いてきた高木さんへのインタビューから、謎に満ちた「現代の桃源郷」の真の姿が浮かび上がってきた。

 ◆
「暴力団員がいっぱい女の子を送り込んできた」
〈売春島こと渡鹿野島は三重県志摩市の東部、カキの養殖で知られる的矢湾の中央部にある。周囲約7キロ、人口200人ほどの小さな島で、渡航手段はピストン運航するポンポン船(小型船)だけ。本土から隔離された島にはスナックやパブを隠れ蓑にした「置屋」と呼ばれる娼婦の斡旋所が点在し、管理売春で栄えてきた。高木さんは文献や登記簿といった紙の資料にあたる一方、20人を超える当事者たちに直接取材して、島の盛衰を描き出している〉


 ――「売春島」を取材したきっかけから教えてください。 高木 最初に週刊誌の記事を書くために島を取材したのが11年ほど前です。その何年か後になって偶然、この本にも出てくる「人身売買ブローカー」の元暴力団員と知り合ったんです。その男からは「あの島には暴力団員がいっぱい女の子を送り込んできた」なんて生々しい話もいろいろ聞いていたんです。 

 ただ、深く取材しようと思ったきっかけは2016年5月の伊勢志摩サミットですね。あのころ「会場の賢島の目と鼻の先に、こんな売春島があっていいのか」といった趣旨の告発風のルポが週刊誌にたくさん出た。もちろん売春自体は悪であり、許されることではない。ただ売春の従事者にもそれぞれの歴史があり、生活があるわけです。島の売春産業が凋落した今なら、暴力団のシノギ(経済活動)の邪魔にはならない。ベールに包まれていた当事者たちの声を全部聞き出せるかもしれない――と。


 〈渡鹿野島の売春の歴史は、じつに江戸時代にまでさかのぼる。江戸と大坂を結ぶ航路上に位置した島は、多くの船が停泊する「風待ち港」だった。島の女性たちは休息する船乗りを相手に夜伽(よとぎ)をしてはお金を稼いだ。そうして形成された遊郭は1957年の売春防止法の施行で一掃される。

しかし、「稼げる島」という噂は広がり、遠方から女性たちが乗り込み、売春を斡旋する置屋文化が出来ていく


1970年代後半から80年代前半にかけての最盛期には大型ホテルや喫茶店だけでなく、ゲームセンター、パチンコ屋、ストリップ劇場がひしめき合っていたそうですね。「夕方のメイン通りには、ポン引きから娼婦から客からもう、まっすぐ歩けんほどいっぱいおりましたわ」という住民の証言からは、一大レジャーランドのような繁栄ぶりが伝わります。

この小さな島に売春産業が栄える特別な条件があったのでしょうか。 高木 70~80年代前半にかけての最盛期には、人口200人の島に60~70人もの娼婦がいたといいます。競艇場の建設計画もあったそうです。地方の消防団なんかの慰安旅行がたくさん入ってきて、そういう団体客で島は潤ったんです。  

売春のルーツもそうでしたが、繁栄したのも地理的な理由が大きいはずです。女の子を抱えて売春を斡旋する置屋にとっては、隔離された島だと女の子を管理しやすい。客にとっては風光明媚な離島というのは非日常を味わう絶好のシチュエーション。客も限られた選択肢の中からでも必ず女の子を選ぶ。だから女の子たちはある程度の稼ぎを確実に手にすることができた。そういうバランスがあったわけです。その活況は、派遣型のデリバリーヘルスが登場して風俗業の多様化が一気に進んだ2000年ごろまで続いていきます。


ロングなら「女の子の暮らす部屋に宿泊、朝ご飯も」


――島ではどんな売春システムが受け継がれてきたのでしょうか。 高木 プレイの料金は基本、60分の「ショート」が2万円、翌朝までの「ロング」が4万円。うち半分くらいを置屋が取って、残りが女の子の取り分だったという話もあります。ただ、システムはそのように決まってはいても、女の子に「仕事、仕事」という感じはなかったそうです。  

一応、宴会に呼んだ女の子のうち、客が気に入った子と“自由恋愛”になって……という建前です。ロングの客で、旅館に部屋を取っていない場合、自由恋愛の末に女の子が暮らしている部屋に行って朝まで過ごす。だからプレイの時間も内容も実はあいまいなんですね。  



ロングを選択して女の子の部屋で一晩過ごした客は、そこで女の子が作ってくれた朝ご飯を一緒に食べるわけです。相手がタイの女の子だったらトムヤムクンを作ってくれる……なんて情緒あふれるおもてなしもあったようです。しかも帰るときは船着き場まで女の子が見送りに来て、「また来てね」と手を振ってくれる。つかの間のアバンチュールというか旅行気分を味わえたそうです。


最初は何も知らないで家族連れやカップルで島に来る。そこで初めて売春のことを聞いて、あとになってから1人で再訪する、という男性客も多いと聞きます。 〈渡鹿野島で売春の“手入れ”を指揮していた三重県警の警察官が取り調べをした置屋の女将と親しくなって退職。その後、売春の元締めである置屋のマスターになった、という信じられない実話もある。ほかにも島の魔力や魑魅魍魎を伝える逸話には事欠かない〉


なぜ売春する女性が島に集まったのか
――そもそもこの本は、1995年に彼氏に騙されて売春島に売られた当時17歳の少女が対岸まで500メートルを泳いで逃げた……という衝撃的な証言の紹介から始まります。事の真偽は本を読んでいただくとして、最盛期の島にはどんな女性が集まり、どんな暮らしをしていたのでしょう? 

高木 1980年代から90年代後半にかけての時期でいえば、借金で首が回らなくなった日本人の女の子、それからホストや暴力団員になかば騙されるような形で売られてきた子が多かったみたいですね。  


取材の当初はやはり、売られた子は厳しく隔離されて借金漬けで絶対に島からは出られない――というイメージを持っていたんです。「人身売買ブローカー」だった暴力団員の話でも、女の子の買い物にも置屋のママが付いていくという。その女の子が商店に入ったらすぐに自動扉を閉めて逃げられないようにする。そこまでやるんだ、というわけです。

でも実際は、バンス(借金)を置屋に払い終わった子は自由になったらしいんです。それでも90年代までは島は栄えていて結構稼げたから、借金を完済してもだらだらと居ついちゃう子が多かったそうです。 


 彼女たちに聞いた話だと、島の人も優しいらしいんですね。女の子が居酒屋に行く。すると男連中は「誰々ちゃん飲め飲め」みたいなノリでおごってくれる。だからお金もあまり使わないんだ、と。結局、島が売春産業で栄えることで島民は何らかの恩恵を受けている。だから女の子を大切にするのは当たり前、という感覚だと思います。これは衰退期の今になっても変わらないらしいですね。


売春島」の現状は?

――2016年のサミットをきっかけにクリーン化の流れが加速したと聞きます。島の現在はどうなるのでしょう。 高木 風俗が一気に多様化した2000年ごろを境に、島の売春は衰退に向かいました。今はかろうじて残っている、風前の灯火ですね。今年1月現在の情報では、島で稼ぐ女の子は日本人2人、タイ人2人の計4人。島に住んでいるのはタイの女の子1人だけ。あとの3人は仕事に応じて通っている。置屋は実質2軒ありますが、いずれのオーナーも高齢です。 

 取材を通じてとくに印象に残っている言葉が2つあります。一つは、島で8年ほど売春しているミドリ(仮名)という女性がふっと漏らした「この海に万札垂らすと、人魚(=私たち)が食いつくんよ」というしゃれた言葉。笑みを浮かべてはいたけれど、このままこの仕事を続けていていいのかなあ……という迷いも含んだような哀愁が漂う話し方だったのが心に残っています。  

もう一つは、置屋オーナーの女性の「もう、この島の歴史は死なしといたほうがいいよ」ってひとこと。売春を斡旋する置屋なんだから「島の浄化、クリーン化なんてけしからん!」って威勢のいい話をしてくれると思ってたのに「もうダメなものはしょうがないよ」というんです。時代が終わるとはこういうものなんだと思いましたね。  

最近、「NEWSな2人」という番組で、渡鹿野島の島おこし企画があって、NEWSのメンバーが島でロケをしたんですよ。番組の放送後はファンのちょっとした聖地になって、ジャニーズ好きな女性が押しかけてるらしい。ただ、ファンの子たちが宿泊するのはNEWSのメンバーが泊まった大型ホテルのみで、ほかの旅館にはほとんどお金が落ちていない。  

離島というロケーションで、温泉があり、飯もうまい……ということなら、それはそれで観光資源です。僕としては、売春でもNEWSの聖地でもいいので、島民たちが一つになり、島全体が平等に潤ってほしいと思っています。


2020年上半期「社会部門」BEST5 結果一覧

1位:三重県に実在する“ヤバい島”を現地取材「ショート2万、ロング4万、帰りは船着き場まで女の子が見送りに…」 
2位: 【ヨドバシ”超3密”状態でパニック寸前、警察沙汰も】転売ヤーの目的はマスクではなく…… 
3位: 「空からヤクザが降ってきた」バルコニーの鉄柵に突き刺さっていた男の正体 
4位: 5人の死体を風呂場で夜通し……大島てるが明かす「平和な一軒家が事故物件になるまで」
 5位: 「下着は白限定」の理由は”体操着規定”にあった 浜松市立中学ブラック校則【現地取材】

8・19か・2020

https://news.yahoo.co.jp/articles/06d7979f211bfd8325c628a2857020bbce3be395
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