ごく普通のサラリーマンからAV男優に。現在は漫画家として活躍する蛙野エレファンテ氏が、AV男優時代の実体験を赤裸々に描いたエッセイマンガ『AV男優はじめました』を2020年7月9日に刊行した。
4年間で総出演作品数250本を超える蛙野氏が語る、AV業界のウラガワとは?
――ごく普通のサラリーマンだった蛙野さんがAVの世界に足を踏み入れた経緯を教えてください。
蛙野:友人との飲み会でAV業界の方と知り合ったのがきっかけ。飲み会のたびに「蛙野くんAV男優やったらええやん」「イヤイヤ、ムリですよー!」なんてネタにはなっていたのですが。「一度くらいはAV撮影見学してみたい」という話の流れで「見学はムリだけど“汁男優”ならええで」ということで……。
――突然の“汁男優”のオファーに、抵抗はなかったですか?
蛙野:とにかく「現場を見たい!」という気持ちが先行していましたね。顔にもモザイクがかかるというし、周りにも「バツイチだし失うもんないやん」なんて煽られたのもあって。
――記念すべき撮影第一発目に、思いもよらぬシーンを要求されたんだとか。
蛙野:そうなんですよ。現場に着いたら、監督さんの挨拶もそこそこに「きみ、今日は一対一のフェラシーンね」って。「えっ、“汁男優”って女優さんの後ろにズラっと並んでいるブリーフ集団のことじゃないの? 聞いてないよ!」と戸惑いました。
――だだでさえ周りの人に見られているのに、勃起することはできたんですか?
蛙野:それが、人が見ててもですね、男なんでいじられたら自然と勃っちゃうっていうか(笑)。生理現象ですよね。何も刺激もされずに、ただ女性だけが目の前に立ってて「勃起しろ」て言われたら難しいですけど……。
――勃起してからフィニッシュまでは、わりとスムーズにいくものなんですか? 蛙野:イケそうってとこまではいくんですが、「イク」って精神的なところがあると思うんですよね。プライベートのセックスでリラックスしている時と違いますし。AVで射精できるのは、やっぱネジがひとつはずれていないとダメと言われています。そこがAV男優の資質を問われる部分なのでは。
――蛙野さんの場合は、それが最初からうまくいったと。
蛙野:そうでしたね。思えばこれがAV男優になるかなれないかの分岐点になっていたのかと。それからは、現場のADを兼業しつつ“汁男優”から“からみ”まで、次々と作品に出るようになりました。
――“からみ”撮影はどのように進んでいくものなんですか?
蛙野:台本の中に「体位を3つ入れてくれ」とか「騎乗位は必ず入れてくれ」などの指示があるんですね。それに合わせて、カメラの角度を考えつつ、タイマーを見ながらどのタイミングで体位を変えるかを自分で判断して動きます。
――割と事務的な感覚なんですね。途中で萎えちゃったりしませんか?
蛙野:最初のころはいっぱいいっぱいでしたが、続けていくうちに余裕も出てきます。刺激もありますし(笑)。普通に今日の女優さんかわいいなぁ。ラッキーとか思ったりすることもありました(笑)。
―プライベートのセックスとAV撮影でのセックスでの違いはなんですか?
蛙野:スピード感じゃないでしょうか。プライベートでの動きの気持ちでやると、映像になったらつまんないんですよ。動きがゆるいというか、遅いというか。撮影では、さらにその上をいかなくてはいけない。これでもかっていうくらい必死に動いてやっとそれで画面映えするんです。
――てことは、トップといわれる男優さんなんて……。
蛙野:トップ男優さんたちはそれ以上に動き回りますよ。動きも音も「バンバンバン!」って、とにかく迫力が違うんですよね。「迫力のあるセックス」なんて、普通の人のセックスでは聞かないじゃないですか(笑)。格闘技に似た感じじゃないですかね。
――それを聞くと、AV男優はプライベートのセックスのテクもすごいと思われがちですが。
蛙野:よく言われますが、それは全然関係ないと思います。体位でいえば、プライベートのセックスって基本的に正常位、バック、騎乗位以上のことまではあまりしないじゃないですか。わざわざ立ちバックでやろうとかしませんよね。AV男優もそのへんは同じですよ。
――逆にAV男優がプライベートのセックスに求めることって何ですか?
蛙野:AVって「いやらしいこと」だけしかしないものなんですね。だから、普通のセックスですることは求められなくて、寂しくなっちゃうんですよ。たとえば手をつなぐとか、太ももを触るとか肩を抱くとか。AV見ている人は、女優の肩抱いているところなんて、早送りするでしょ(笑)。それだったらもっとおっぱいさわれよって。
――いままで共演した中で、実際に「手をつなぎたい」「肩を抱きたい」と思った、プライベートでお付き合いした女優さんもいましたか?
蛙野:それは……。ノーコメントで(笑)。もしかしたらおいおいマンガにするかもしれませんけど。
――職業病的なことはありますか?
蛙野:もともとプライベートでは、フェラだけでイッたことはなかったんです。それは今でも。だけど、女優さんのテクニックもあると思うんですけど、AV撮影だとイケるんですよね。カメラがあるほうがイケる身体になったのかなって(笑)
――7月9日刊行のマンガ『AV男優はじめました』では、ほかにもさまざまなAV業界のウラ話が盛り込まれているんですよね。
蛙野:トップ男優と汁男優とのギャラの違いや、“疑似”についてのカラクリ、知られざる苦労など……。
AV男優をやらなければ見ることのできなかった世界を描いています。ぜひよろしくお願いいたします!