バイデン氏のキーウ訪問、どうやって極秘に実現 10時間の列車の旅

>ホワイトハウスは、常に攻撃を受けている戦争地帯に米大統領が現れたことを、「現代では前例のないこと」だと説明した

バイデン氏のキーウ訪問、どうやって極秘に実現 10時間の列車の旅
2/21(火) 12:32配信
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バイデン氏のキーウ訪問、どうやって極秘に実現 10時間の列車の旅
サラ・スミス北米編集長 アメリカの大統領としてはほとんど前例のない、大胆な訪問だった。
ジョー・バイデン大統領は20日、ウクライナの首都キーウを電撃訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。ホワイトハウスは、常に攻撃を受けている戦争地帯に米大統領が現れたことを、「現代では前例のないこと」だと説明した。
また、これまで大統領が戦時下のイラクやアフガニスタンを訪れたことはあったものの、それは米軍が現地に大々的に駐留している場所だったという。
報道陣の間では、事前に発表されていたポーランド訪問の間にバイデン氏がウクライナを訪れるのではないかという憶測は広がっていた。それでも、この訪問はまったくの予想外だった。 空襲警報が鳴り響く中、バイデン氏はキーウ中心部をゼレンスキー氏と並んで歩いた。その姿は、ポーランドで何を言うにしても、どんな言葉よりもはるかに雄弁だった。 ホワイトハウスのケイト・ベディングフィールド広報部長は、
「これは危険な訪問だった。大統領が約束を真剣にとらえるリーダーだ。今回の訪問で、誰もそのことを疑わなくなるはずだ」と話した。
■「携帯電話は禁止」
バイデン氏は、20日夜にアメリカからポーランドの首都ワルシャワへ出発する予定だった。旅行期間は2日間だった。 先に公表された旅程表には2カ所、ことさらに長い空白が空いていた。そのため、ここでバイデン氏がウクライナ入りするのではないかと、憶測が飛び交っていた。
ホワイトハウスの定例記者会見に出席した記者たちは繰り返し、訪問について質問した。答えは、「今のところ」ゼレンスキー氏との会談の予定はない、ワルシャワ以外を訪問する予定はないというものだった。 大統領に最も近しい側近だけで、数カ月前から計画されていたが、バイデン氏のキーウ訪問が最終決定されたのは17日のことだったという。
19日の時点でも、ホワイトハウスの公式スケジュールは、大統領は20日午後7時にワルシャワへと出発するとしていた。だが実際には、大統領を乗せた米軍機は19日の午前4時15分に飛び立っていた。 ごく少人数の側近と医療チーム、そして警備担当だけが搭乗した。
大統領に同行が許されたジャーナリストは2人だけだった。2人は秘密保持を誓約し、携帯電話を取り上げられた。そしてバイデン氏がキーウに到着するまで、訪問についての報道を禁じられた。
バイデン氏に同行したジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)によると、大統領がワシントンを出発する数時間前に、ロシア政府にはキーウ訪問を知らせていたという。 サリヴァン補佐官は、ロシアに伝えたのは「牽制(けんせい)のためだった」と説明。
「(ロシアが)どう反応したか、そして我々のメッセージの正確な内容には触れないが、我々がそのような通知をしたことは認める」と述べた。
■アメリカにも鮮烈なメッセージ
バイデン大統領はポーランドに着くと、そこからさらに列車で10時間かけてキーウを訪問した。ウクライナ国内の、もっと簡単にたどりつける場所を訪問することもできただろうが、キーウそのものへの象徴的な旅を選んだ。 今回の訪問は、バイデン政権がウクライナ支援の決意をロシアに示すものだった。同時に、アメリカ国内の有権者への意思表示でもあった。
ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール報道官は先週、ウクライナ支援に対するアメリカ国民の気持ちが薄れているという世論調査結果が出ていることについて、質問を受けた。
ジャン=ピエール報道官はこれに対し、大統領の発言はいつでもアメリカ国民と世界に向けたものだと回答した。20日にバイデン氏が発したメッセージは、アメリカがいつまでウクライナを支援し続けられるか疑問視する共和党少数派の声に、鮮やかに対抗するよう整えられていた。
一方、この電撃訪問により、20日からバイデン氏に同行取材しようと思っていた私のような記者は、「エアフォース・ワン」とは呼ばれない飛行機でポーランドにへ向かうことになった。世界的に有名なこのコールサインは、大統領が搭乗しているときだけ使われるからだ。
(英語記事 No phones and 10 hours on a train - Biden's secret trip)