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防空壕から考えた危険な「ムード」

2021-08-20 09:51:22 | 日記

有限会社人事・労務 社会保険労務士の畑中です。

最近は遠くに遊びに行くこともあまりできず、もっぱらお休みは近所のお散歩です。おかげで近所に住んでいるネコ達とその性格までわかるようになりました。

台東区は散歩には意外にいい場所です。隅田川沿いの静かな散歩道も多いですし、神社など落ち着くスポットも多いです。ぼーっとしながらゆっくり歩く時間は、体と心を整えてくれていると感じます。

隅田川沿いを歩いていると、東京大空襲に関する史跡も多いです。うちの近所の浅草一帯は焼け野原になったそうです。

先日、ちょっと足を伸ばして千住神社まで行ってきました。ここには、第2次大戦中につかわれていた防空壕がそのままの形で残っています。高さ1.5メートル、奥行き3メートル、おそらく10名も入ればいっぱいです。空襲の間、ここでかくれているというのは、どんなに心細いか、想像もできません。

どうして、あんな無謀な戦争をしたんだろうと思います。

最近読んで面白かった本のひとつに「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」(加藤陽子著 新潮文庫)があります。

中学生に近代日本史の授業をする形で書かれています。明治から第二次世界大戦までのことが語られているのですが、どのようにして日本が戦争に近づいていったのかというのが「じわじわ」とわかります。いろんなターニングポイントがもちろんあるのですが、まさに「じわじわ」なんです。例えば日露戦争はまさに薄氷の勝利だったのに国民には大勝利だというムードが覆い、自信が過信になって、そのまま太平洋戦争に一歩一歩進んでいきます。何度も軌道修正できる場面があったのですが、国民のムードが戦争を「選んで」いるのです。気が付けばムードだけでなく治安維持法などで思ったことを言えなくなり、大本営の嘘の情報しか入らなくなってしまいました。

 

日本人は世界的に見てもムードに流されやすい国民だといわれています。私もそう思います。「空気を読む」という言葉がある通り、周囲の多数の意見やなんとなくのその場の雰囲気に流されることがよくあると思います。まあ、和を大切にするといういい面でもあるのですが。しかし、大きな流れができてしまってからではより意見をいうのは難しくなります。

戦後の昭和平成の日本では、テレビなどの限られた情報源の中で、日本全体でムードが作られていたと思います。もちろん問題もありますが、おおむね明るく前向きな、よいムードだったのではないでしょうか。しかし、今はネットなどを通じて多くの情報を誰でも得ることができます。それゆえに気が付けば同質化した個性が集まり、閉鎖的な世界での狭い世界観の中でムードを作ってしまうということが増えてきていると思います。同質的な仲間の中で違う意見が言いにくい、あえて言わないということが多くなってきていないでしょうか。それ以上に違う意見や視点をもつ人すらその中にいない、ということがあれば、組織としては劣化していくしかないと思います。

これだけ多様な時代に、全員が賛成意見の会議や話し合いというのはちょっと薄気味悪く感じないといけないのかもしれません。なんとなく気持ちのいいムードにどうやって水を差すことができるか、これから重要なことなのではと思います。

 

とはいっても人間(特に歳をとればとるほど)やはり「いつもの」を選びがちです。私も散歩をしていても特に意識しなければだいたい同じ道を歩きます。いつもと違う道をいけばこれまでにない発見(新しい猫と会うとか)もあるのに。

安定やムードには時には抗うべきだなあと感じました。