反転住宅を始めて訪ねた時に荒川さんがなさったレクチャーで、気付いた事がいくつかありました。一つは棺おけに関することで、反転住宅で私が第一に感じた事ですが、縁起が悪いと思われても、と思ったので、暫く沈黙していましたが、何度か人を紹介する度に、いつも同じ思いでいました。それで荒川さんに言いました。「ここには死体が一杯浮いています。納骨堂にしたらいいですね」、と。荒川さんは「アッそう」と笑っていられました。
1991年の国立近代美術館の出品作に、テント状の作品に、人が出入りするものがありましたが、授業でその図版を見せられた時に重たいテントは生命誕生と死の瞬間と思いました。テントのすその重たいウエーブやヒダを押し上げて出入りする時、光と闇の世界を抜ける体験をします。記憶の中にある安心感を与えられ、お母さんの子宮から誕生し、死をもって再びお母さんの子宮に帰る、この作業で命の意味を体感し、印籠を貰い考える機会をもらうセラピーではないか、と。この反転住宅には、荒川さんの作品の集体形が絵巻物のように描かれていて、四季を通じ24時間、日々生活する中で作品を体感する事が出来る事に今回の正木氏の授業で発見しました。