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ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

帰りたい本能

2014-11-18 11:48:12 | 日記
 帰巣本能という言葉がある。鳩を通信手段に使った伝書鳩という手法はまさにこの帰巣本能を利用したものとして有名だ。鳩のような鳥であれば巣に帰るという意味で帰巣本能という言葉はぴったりだが、巣のような形の棲み家を持たないクジラなど海に住む動物やサケなどの魚も生まれた場所に戻って子供を産んだり産卵したりする。巣があってもなくても生まれた場所に帰りたいという本能は多くの動物に共通しているものらしい。

 アルツハイマー性の認知症がかなり進行してきた母が最近最も多く口にする言葉が「帰りたい」という言葉だ。どこに帰りたいのか、そのたびに細かく聞くのだが帰りたい場所は2014年の今には存在しない。生まれ育った時代の生まれ育った場所に帰りたいということなのだ。ちょうど第二次世界大戦が拡大して終結した、いわゆる戦中戦後の一般的にはあまり戻りたくない時代の、まだ都会的なものなど何もない北陸の漁村が彼女の帰巣本能が求める場所なのだ。

 多くの動物は、信じられないぐらい遠方から家に帰る能力を持っており、飼い主を驚かす事がある。帰りたいという強い欲求が動物たちにそれを実行する能力を授け進化させてきたのかもしれない。人間ももっと強く帰りたいと願えば時間と空間を超えて飛ぶ力を身につけることができるのだろうか。現代の科学では時間を飛び越えることは不可能と言われている。インターネット上に未来から来た人の形跡があるかもしれないと考えた学者がかなり時間をかけて様々なデータを解析したが結局そのような形跡は無かったと発表したこともある。
 
 だが母の話を聞いていると、ある時間、過去に戻っていたのではないかと思うことがある。つい今しがたまで、遠い昔の友人たちと普通に話をしていたような口調で話題の内容を口にする。実は強く帰りたいと思えば帰ることができる能力を人間はすでに手に入れているのではないか。幼い頃から長い間鍛えて来た未来を夢見る力が、年を取って過去のどの時間にも跳んでいける力となっているのではないか。だがこの力を使えば使うほど「今」の世界にいる意識が薄れて行くようで、寂しい。
 
 どこか遠くに行きたいと考える気持ちと年を取って帰りたいと感じる気持ちはどこか似ているような気がする。「今」の世界に自分の居場所を感じられないために起きている気持ちがありそうだ。自分は誰かの役に立っているという実感を失ってしまうと船のイカリが海底から離れたように急にふらふらと居場所を無くしてしまうのだ。「帰りたい」という本能は、実は誰かの役に立ちたいという気持ちそのものなのではないか。なぜサケが自分の体をぼろぼろにしてまだ川を遡るのか。それは帰りたいという本能ではあろうが同時に役に立ちたいという欲求なのではないか。
 
 お客様のために、後輩のために、家族のために、あなたの大好きな誰かのために、自分を活かす生き方を自分自身にさせているのかどうか、本能はいつも見張っていて励ましたりぼやいたりする。どうやら、年をとってもそれは変わらないらしい。(三)


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株式会社ジェイエスピー
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