なぜグレタは怒っているのか

　温暖化は進んでいる。かつて異常気象と呼ばれた天候が異常でなく通常になって久しい。変化を実感し、このままでは大変なことになると恐怖を感じる人も多いだろう。
　だが、温暖化は進んでいない、と考えている人もいる。温暖化を防ぐ活動は経済活動を弱め生活の豊かさを奪うと考えている。
　
　科学者の多くは気候変動に対し悲観的とすら言える厳しい感想を持っている。つまり、今すぐ温室効果ガスの排出を全世界で全面的に抑制することができたとしてもなお、既に排出されてしまったガスの影響により、温室効果傾向をストップすることは出来ないだろう、というものだ。
　
　仮に世界が今のまま、温暖化に対抗する努力を行わず、加速度的に温暖化が進むとどんなことが起きるのか。特に心配されるのは深海まで海水が温まってしまった海洋が深層海流を停止し、海の水をかき混ぜる機能を失ってしまうことだ。これまで地球全体が比較的穏やかな気候を維持できたのは海の持つこの循環機能があったからだが、それが失われてしまえば地域ごとの極端で激しい気象現象が地域の住民を襲うことになる。
　そうなると、これまでのように自然のままの青い空や海を眺めて草原やビーチで寝転んだり、流れ星を探して星を眺めることができるような日々はもう訪れない。巨大な台風や竜巻、または40度を軽く超す日中の気温を避けるシェルターのような場所でしか生活ができない。従来の水産業は壊滅し農業も後を追う。管理された養殖場や農業工場でしか食料は得られない。温暖化傾向を示すグラフの傾斜は日々急になるばかりでゆるやかになることは無い。おそらく食糧問題が原因となって地域間・格差間の紛争が起き、強力な火力や狡猾な自走兵器によって気候変動による荒廃をはるかにしのぐ破壊が繰り返されることになる。

　これはあくまで仮定の話だ。だから断定的に語ることはできない。ただし、その日は案外近い、と予想されている。1000年先か？とんでもない。では100年先？それも違う。もっと近い将来、数十年先の未来なのだ。今の子供たちが成人して家庭を持ち、その次の世代に愛情を注いでいる時期には、既に世界の現実として眼前に広がっているかもしれない。
　
　パリ協定は世界の159か国と地域が参加し世界の平均気温の上昇を産業革命以前の1.5℃に抑える努力をしようと誓った協定だ。既に遅いかもしれない。しかし、だからと言って何もしないで終わりを待つわけにはいかない。力を合わせてこの危機を乗り越えよう、とパリ協定のとりまとめに奔走した国連の関係者はこの協定に希望の光を見た。
　その希望を打ち砕き、温暖化は嘘だと公言するか、そう言わずとも経済を優先して化石燃料を以前に増して燃やし続ける政策を推し進める政治家達の言動を目にすれば、純粋に未来を心配している若者なら腹を立てて当然だ。大切な家族が病気で倒れて危ないのに、無視して何もしてくれない大人たちばかりが周囲にいるなら、声を荒げて叫ぶのはあたりまえだ。(三）
　

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