自然の語彙

　ふてくされてというか、このやり場のない不満を誰にぶつけたらいいのか、という態度で何やらブツブツ不満を言いながら坂を降りて来たタヌキと坂の上り口で鉢合わせした。1年ほど前のことだ。
　私はタヌキになどお目にかかるのは久しぶりのことだったので驚いて立ち止まったが、先方はまったく私のことなど意に介さず、空き地の外れにある巣穴と思われる穴に向かい、チラッとこちらを振り向いた。何か言いたげだったが、やっぱりお前になど何を言っても始まらぬとばかりにまた少し悔しそうな表情をしたまま穴の中に姿を消してしまった。
　
　空き地には数年前は大きな家が建っていて、2世帯のご家族が暮らしておられたような気がする。タヌキと出会った頃は家も壊されてタヌキの巣穴を隠すものが無い状態になっていた。が、その後コロナ騒ぎの前から始まった建築工事が、騒ぎの間も細々と進んで、最近になって感じのいいアパートが建った。今思えばあの日は、タヌキがこの建築計画について情報を掴んだ日だったのではないか。住み慣れた巣穴だったとは思うが、アパート建築前に無事に別の場所に越してくれていることを願うばかりだ。
　
　在宅勤務の運動不足解消に、晴れていれば夕飯後少し外を歩いてみたりしている。近くに大きな県立公園があり、そこを周回すると程よい歩数になる。公園に入ると、たまに猫の散歩に出会う。
　ついこの間会った猫はかなり大きな声で、並んで歩いている人に話しかけていた。人の方は猫の話しを聞くばかり。もちろん私にはその言葉が理解できない。語彙は多かった、と思うがリスニングに自信は無い。ピンと伸ばした長い尻尾の先の角度などにも様々な意味が含まれているのだろう。話しながら尻尾の先の方だけがぐるぐるとよく回っていた。　
　私の歩いて来た道と、猫と人が向かって来た道が交差する場所で、猫はようやく私の存在に気付き、2歩ほど驚いたように後ずさった。しかし、そんな対応をしてしまった自分を恥じるかのように私の存在を無視して話し続け、近くにあったベンチの隅に腰掛けて一緒に歩いていた人を呼び、ベンチの逆の端の隅に腰掛けるように促した。社会的距離を置く必要をしっかり理解しているのである。
　
　よく話す猫は白に茶のまだら模様だったが、もう少し歩いた先で出会った猫2匹は完全に茶の1匹と白黒の1匹だった。お供の女性が二人。猫は猫どうし、人は人どうしで、こちらもおしゃべりしていて驚いた。こんなによく話しをする猫たちに会うのは初めてだった。体格のいい茶の猫は話しながらやはり長い尻尾をぴんと伸ばして先をぐるぐる回していたので先ほどの猫と同じ言語体系の言葉を話しているのではないかと思われた。
　
　平日の夕方に公園を散歩する、などという経験は在宅勤務になったからできたこと。生活が変われば常識も変わるものだと散歩しながら考えるのである。（三）



シンプル入退室管理
　　限りなくシンプルなタイムカードシステム

WhitePlug
　　手のひらサイズのLinuxサーバ

monipet
　　動物病院の犬猫の見守りをサポート
　　病院を離れる夜間でも安心

Smart mat
　　重さセンサIoTで在庫管理に革新を。
　　自動発注＆メールアラートで欠品・発注ミスを防ぎます

RealStocker
　　リアルタイムに在庫を見える化！
　　スピーディかつ正確な入出庫管理を実現します

株式会社ジェイエスピー
　　横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
　　製品開発(moniシリーズ)、それに農業も手がけるIT企業