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ハシズム

 「橋下主義(ハシズム)を許すな!」(ビジネス社)を読んだ。130ページほどの短い冊子だが、内田樹先生の「おせっかい教育論」、山口二郎北海道大学教授の「橋下政治は軍隊的官僚主義と競争原理主義の合体に過ぎない-ハシズムを乗り越えて」、さらには、精神科医の香山リカ、社会学者の薬師院仁志に山口教授を加えた「鼎談 橋下主義(ハシズム)斬る」の3本立てになっていて、「大阪維新の会」の膨張ぶりに危惧の念を抱く私には、当を得た内容となっている。
 この冊子を編集した者の言わんとすることは、表紙に書かれている。

「いま、大阪のまちを奇怪な妖怪がのし歩いている。その妖怪とは橋下徹ひきいる大阪維新の会。名付けて橋下主義(ハシズム)。閉塞した社会を生きる市民のやり場のない不平不満をエネルギーに仮想敵をつくり上げて、大衆を煽る。このハシズムを許すと、全国に広がり、日本の民主主義は崩壊の危機に瀕する。そんな危機感を抱いた論客たちがハシズム斬りに立ち上がった」

 「ハシズム=ファシズム?」という語呂合わせもまんざら誇張ではない気がする程の傍若無人ぶりが連日報道されているが、時の勢いというのは恐ろしいもので、こんな正体の分からぬ組織にでも擦り寄る輩が続出しているらしい。有象無象でも、「維新の会」の旗印の下にいさえすれば、議員バッチを付けられるのだから、栄達を夢見て集結する者たちが引きも切らぬのは分からぬでもない。だが、自分たちが一体どこに向かおうとしているのか、知っている者たちはほとんどいないであろう。
 まあ、それも素人なら許されるかもしれないが、愛知県知事ともなると話は違う。河村名古屋市長の威を借りて当選した大村ち知事であるが、河村の減税人気に陰りが出たとみるや、今度は橋下維新の会に擦り寄り始めている。元々節操のない男だと思っていたが、ここまでひどいとは思わなかった。なんだか河村がピエロのようで、哀れに見えるほどだ。

 しかし、どうして橋下のような男の跳梁を許してしまっているのだろう。場当たり的な発言を繰り返しながら、己の権力を増大させることにのみ集中し、敵対する者に罵詈雑言を浴びせかけて恥じることを知らない・・、誰が見たってイヤな奴としか思えないのに、ここまで耳目を集めるのはなぜだろう、私には全く理解できない。
 確かに教員や公務員をやり玉にあげるのは、溜飲が下がる気もするが、彼らの抱える事情を全く無視して、強圧的に従わせようとするばかりでは、風通しの非常に悪い、息苦しい社会が出来上がるだけだ。しかも批判を受けつけないと来ては、何をか言わんやである・・。

 内田先生の言葉を引用しておこう。
「これからはどうやって共同体を再生させてゆくか、乏しい資源をどうやってフェアに分かちあうか、競争的環境を抑制して、お互いに支援し合い、扶助し合うネットワークをどう構築するかということが喫緊の政治課題となる。そういう歴史的状況の大きな変化が始まっているんです。そんな歴史的激動のときに、「人参と鞭」のような古典的な道具を持ち出してきて、社会的連帯の解体を進めようとする歴史的感覚の悪さに僕はつよい不安を感じるのです」

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