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塩酸

 学年末試験のために化学の勉強をしていた女子高生が、
「潮解と風解の違いは何ですか?」
と質問してきた。私は、
「潮解っていうのは、物質が空気中の水蒸気をとりこんで自発的に水溶液となる現象のことで、風解というのは、ある種の水和物から全部または一部の水が失われる現象のこと。簡単に言えば、潮解と反対の現象・・」
と答えたが、ふと思いついて、
「潮解を起こす代表的な物質は水酸化ナトリウムだけど、水酸化ナトリウム見たことある?」
と訊いてみた。それに、
「写真とかならありますけど、実物はないです」
と生徒が答えたものだから、
「じゃあ、見せてあげるよ。空気中に置いておくと、本当にドロって解けた感じがしてくるから・・」
そう言って、事務室にある流し台の奥にしまってあるはずの水酸化ナトリウムを探しに行った。
 昔、小学生と「酸とアルカリ」の勉強をするときに、アルカリの代表として薬局で買った物があるはずだが、と思いながら探してみたが、どういうわけか見つからなかった。捨てた記憶はないけどなあ・・とちょっと不思議だったが、その代わりに「塩酸」がしまってあったのを見つけた。そう言えば、これも勉強のために薬局で買ったものだった。


「水酸化ナトリウムはなかったけど、塩酸ならあったよ」
と見せたところ、ギョッとした顔をした。そりゃあ、塩酸だもの、強酸だもの、危険だもの・・。
「ずっと昔に薬局で買った物だけど、危ないよね。処分した方がいいよなあ・・」
 と言っても、こんな劇薬、勝手に処分してもいいのだろうか。授業が終わった後、ネットで検索してみた。 

「大量の水の中に塩酸を入れて流してしまえば,実用上の問題は生じないと思います」

あれこれ書いてあったが、結局は大量の水とともに流してしまえば大丈夫みたい。
そこで、トイレのにある洗面台の蛇口を開きっぱなしにしておいて、少しずつ塩酸を流していった。
「ひょっとすると危険かな」
とびびりながら、作業を進めたが、時々白い煙が微量出て来ただけで、案外楽に流し終えることが出来た。一安心・・。

 でも、後で塩酸の管理方法について、次の様な記述を見つけて少し驚いた。
「塩酸は保存に気をつけないといけませんね。容器からわずかに揮発する塩酸ガスによって、付近の金属製のものが全てさびてしまいます」
塩酸を長い間しまっておいた流しの中にあった金属物が、やたら錆びていたのは、そういう理由だったのか・・。さすが、「劇薬」だ・・。


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