城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

夢のマイホームが負の資産に 20.10.21

2020-10-21 19:10:58 | 面白い本はないか
 松の剪定を始めて、4日目の今日やっと作業が終わった。秋の剪定では不要な松葉をもみあげにより取り除く。さらに夏芽を一つか二つ残して、残りは切除する。

 剪定後の我が家の松 枝の間から太陽が見えるようになった

 近所の2,3年剪定していない松の木 我が家の松より立派なのだが・・・

 空き家の松 道路まではみ出てきた こうなると役場もほおっておけないだろう

 松の剪定があまりに大変なので、切ったりする家があると聞く。さらには持ち家を取得しても、庭木を植えないところが増えているとも。役場でも敷地のまわりの植栽をブロックに変えて、管理の手間がいらないようにしているらしい。我が家でもいつか庭の管理ができなくなるであろう。

 さて、ここから戦後私たちの夢であったマイホームの話をしたい。私たちの多くは、青年期に大学や就職のため、家を離れる。大学なら下宿、就職なら職場が提供する寮等が始まりとなる。やがて、結婚すると最初は職場が提供する世帯用の賃貸住宅あるいは民間、住宅公団の賃貸住宅に移り、さらにお金を貯め、持ち家あこがれのマイホームを取得する。こうした人生のはしごを登っていくのが、かつての人生双六であった。しかし、このはしごは、戦後の国の住宅政策によっていたことを自覚することはあまりなかったように思う。そして、現在経済の停滞と人口減少により、このようなハシゴを登ることができる人は少なくなってきた。何より、この先経済がどうなるのか全くわからない。今の所得が上昇する希望も小さいし、若者は結婚することができない。不本意?ながら親の家に住むことを選択することが多くなっている。

 日本人は住宅ばかりでないが、新築の住宅を好む。住宅の耐用年数が短く、いわばスクラップ&ビルドが幅を利かす。人口が増え、経済が成長しているうちはこれで良いのだが、今となって空き家ばかりがどんどん増える。都心ではタワーマンションが人気だそうだ。主流となりつつある共稼ぎ世帯特に大企業に勤めるような世帯では通勤時間を短くなることを優先する。一方で、日本の大部分の地域では住宅の資産価値は減価しつつある。特にいなかでは取り壊しの費用の高騰もあり、いわば持ち家は今後負の資産化していくと思われる。

 戦後の住宅政策を少し振り返って見る。戦前は大都市では賃貸住宅が主流だった。そして、戦後は戦災があったため、大量の住宅建設が必要とされた。その後の高度成長の中で地方から出てきた労働者の住宅の供給が要請された。このための仕組みが、住宅金融公庫(1950年~)による融資、公営住宅の提供(1951年~、低所得者向け)、日本住宅公団による団地の建設(1955年~、中間所得者向け、当初は賃貸で後に分譲)の3本柱となった。この中では、公営住宅は最小限の供給にとどめられ、持ち家の建設が経済成長を促進するため、1990年代半ばまで成長あるいは景気回復の重要な手段となっていった。最後には世帯数を超える住宅ができあがった。そして、今や都心の再開発(都心の復興が日本の再生につながる=金持ちの成長が低所得者まで恩恵が及ぶ?のと同じ論理)が成長の手段となってきた。そこでは容積率の緩和、国公有地の払い下げ、道路基盤の整備など国主導で再開発が行われており、こうした中でタワーマンションが増えてきている。一方、大都市を除く地域、大都市でも周縁、郊外では人口、世帯が減少し、空き家が増えてきている。

 持ち家の取得に重点が置かれる一方、日本では住宅の中古市場が発達しなかった。このことが空き家をより増やす一因ともなっている。さらに、単身用あるいは世帯用の良質な賃貸住宅が十分供給されてこなかった。そして、低所得者向けの公営住宅の供給が少なく、彼らは民間の質の良くない木賃住宅に住むしか選択がなかった。加えて、日本では住宅補助制度がほとんど行われてこなかった(生活保護制度の中に住宅扶助があるが)。日本の福祉制度の特徴、「日本型福祉制度」と呼ばれているが、自助、共助、公助のうち自助・共助を強調し、その中身は企業や家族の助け合いに重きを置くもの。中でも企業による住宅補助、住宅の提供(「給与住宅」という)、持ち家促進のための融資制度の提供がある。しかし、中小企業にはこの制度はないし、さらに大企業も給与住宅を減らしつつある。まさしく、公助はやせ細るばかりとなってきている。

 この先、住宅を始めとした不動産の取得は大いにためらわれる。多額の住宅ローンを組んで購入しても、日本の沈滞あるいは没落により、住宅価値は下がり、ローンの額よりも資産価値が大幅に低くなる可能性がある。高齢者には縁遠い話だが、その子どもたちには深刻な話だと思うのだが。今回参考とした本は、平山洋介著「マイホームの彼方に」。この著者の師匠、早川和男氏の本もかつてよく読んだ。


 

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