昨晩、梅雨明け以来の本格的な雨が降った。植物にとっては恵みの雨であり、おじさんには少しの休息となった。
明日の母親の一周忌に合わせて帰省する予定だった息子夫婦は、昨晩の東海道線の落雷事故による不通のため、急遽名古屋で宿をとった。
伊丹敬之著「漂流する日本企業」を読んだ。
この著者が過去に書いたいくつかの本を読んでいる。かつて(1990年以前)の日本的経営、すなわち人を大切にする経営を称賛していた経営学者である(「人本主義」という著書がある。)
伊丹氏の本を読み終わった時、BSフジでディビット・アトキンソンと経済ジャーナリストの渋谷和宏が「日本の会社員の「やる気」の低さ」をテーマに議論していた。
なぜ日本の企業が低迷しているのかという疑問にある程度答えてくれていると思うので、紹介する。
※以下の図は、最初の図を除くと全て伊丹氏の本からの引用である
①やる気が低いこと
日本は「仕事に意欲的、積極的に取り組む人の」の割合が6%で最低、フランス7%、イタリア8%、韓国13%
また、日本では24%が仕事に意欲を持てないと回答している
ネットではこの数値への反論が載っている
2012年から数値だが、それ以前はもう少し高かったのだろうかという疑問が当然出てくる
以下でこの理由について、伊丹氏の本も合わせて参考にしながら述べてみたい。
②賃金がバブル以後ほとんど増加していない(賃上げは政府の政策課題となっている)
※20.11.3付けの当ブログ「日本はなぜ貧しくなってしまったのか」も参考となる
日本企業はバブル崩壊後、三つの過剰、人、設備、債務の整理を図った。人は労働組合との合意もあり、人減らしは行わない代わりに、賃金を抑制した。合わせて、非正規雇用を増やした。また、設備投資を極力抑え、人的投資も減らした。さらに銀行からの債務を返済した。
中小企業よりも大企業は労働分配率を低く抑えた(ただし、大企業と中小企業の賃金格差は大きい)
人的投資額が増えるどころか減っている
日本の労働生産性が低いのは、賃金が伸びない、人的投資が行われないからでないか
③設備投資を抑制した
この傾向はいまだに続いている
かつてOJT(職場での仕事を通じた研修)を積極的に行うことで日本の企業は有名だった
しかし、今やその影もない
なぜだろうか。渋谷氏は設備投資を行わないからだと述べている。すなわち、新しい技術や方法が導入されれば、それを使いこなすために研修をしなければならない。しなければ今までのスキルでこなせてしまう。
積極的な投資ができなかった理由の一つとして、為替レートの変動が他国と比べて激しいということがある
③3つの過剰を抑制したことで売上はほとんど伸びていないのに利益率は高くなった
結果日本企業は多額の内部留保を持つまでになった
バブル崩壊後日本企業の売上は現在までにわずか100兆円しか増加しなかった
一方で利益率は大幅に上昇した
④日本の企業(特に大企業)の配当額は今や設備投資額を上回った
2000年以降のコーポレートガバナンス採用の中で必要以上に株主利益を重視した
この時期に外国人株主の比率が大幅に上昇した
人を大切にする経営から株主を大事にする経営へと変わってしまった
⑤人に投資してこなかったつけ
デジタル人材の不足、海外派遣人材の不足、競争力の喪失
バブルの崩壊後の緊急策が今や日本企業のデファクトスタンダードともなってしまった
経営陣の高齢化(新しいことにチャレンジできない)も要因となっている
このまま日本経済は沈没していくのであろうか
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