《前回からのつづき》
「反町ー ロシア革命のころに比べて、もっと大きな貧富の格差が生まれているのであれば、いまこそ社会主義革命の時期が目の前に来ているんだぞという意味でおっしゃっているんですか」
「志位ー ロシアで起こった革命というのは、第1次世界大戦という状況下で起こったものです。 特別の状況下で起こった革命なのです。 レーニンの時代、とくに晩年の時代には、ずいぶん合理的な探究がされたんですけれども、スターリンになって専制主義・覇権主義という大きな変質が起こって(ソ連)崩壊に至ったわけですね」
「このロシアの革命を見るときに、スターリンの誤りは決定的に大きいんですけども、やはり出発点の遅れというものは大変なものがあったんですね」
「反町ー 出発点の遅れ?」
「志位ー たとえば、レーニンが最晩年に書いている論文を読むと、ロシアで文字の読み書きができる識字率は、1920年の統計で(国民全体の)3割、女性は2割です。 ですから、レーニンは、”自分たちは社会主義の革命をやったが、これから文明をつくらなければいけない”と言っています」
「生産力の水準も低い、まだ主要部門で電化さえされていないところからスタートしなければならない難しさがあった。 つまり社会主義に進むうえで不可欠な、高度な生産力、自由と民主主義の制度、人間の豊かな個性ーーいろんな前提がないところから始めなけrばならなかった」
「反町ー 今はできている?」
「志位ー マルクスの考え方のなかに、『資本主義の高度な発展は次の社会ーー社会主義・共産主義に進んでいく条件をつくる』と(いうのがあります)。 一つは高度な生産力。 二つ目は、経済の社会的な管理と規制の仕組み。 たとへば銀行制度など経済の社会的な管理の仕組みができてくると。 三つは、人民のたたかいによって労働時間の短縮など『暮らしと権利を守るルール』ができてくる」
「反町ー いまそういうのが進んでいるような気がしますけど」
「志位ー ええ。 四つ目に、自由と民主主義の諸制度がつくられる。 最後に五つ目に、人間の豊かな個性が、まだ搾取制度はあるけど生まれるんだと。 こういう五つの要素が資本主義の発展の中でつくられてくる。 もちろん、いま述べた要素のうちのいくつかは、人民のたたかいによって初めてつくられるし、たたかってこそ先に進めるんですけれど、資本主義の高度な発展のなかで、次の社会に進む物質的な条件、客観的な条件、そして主体的な条件がつくられてくるというのが、マルクスの展望だったわけです」
「そいうことから考えると、ロシア革命が開始された時代、それに中国革命の出発点では、そういう諸条件というのは整っていない。 あるいはきわめて未成熟です。 そういうところから始めた場合は、革命のあとにそういう条件をつくらなければならなかったわけです。 これが非常に難しかった」