英語と書評 de 海馬之玄関

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海外報道紹介☆京都の<観光開発>に見るマーケティングの欠如(上)

2010年05月16日 10時08分45秒 | 日々感じたこととか


地方再生に向けたNew York Timesからの問題提起を紹介します。朝日新聞的な単なる第三者の気楽な立場からする「自然環境擁護&歴史的環境擁護」の議論とは、流石に、アメリカの報道は僅かだけれど確実に違う。そこには、ビジネスというかマーケティングと国際競争の観点からする分析が貫かれているから。アメリカの朝日新聞ともいうべきこのリベラル左派の新聞記事を読んでそう思いました。敵ながら侮り難し、と。

詳細は参考記事「京都☆保守主義の舞台としての生態学的社会構造」をご一読いただきたいのですが、実は、京都市は観光客の誘致に関してはここ5年ほど(少子化前の、かつ、修学旅行の行き先で他所の追随を許さなかった昔日の栄光の日々とは比べられませんが)極めて好調なのです。けれど、本編のNYT記事が報じているように、外国人観光客の誘致に関して日本が主要国の中では独り負けに近い惨状であることもまた事実。つまり、観光を巡る京都の光と影は共存している現実なのです。

蓋し、なぜ日本は外国人観光客の誘致に苦戦しているのか。本編のNYTの記事はそれを都市開発学というか、それをも包摂するいわばマーケティングの観点から明らかにしようとする試みです。紹介する報道の出典は”As Kyoto Attractions, Wave Pools vs. Temples”「人工的に波を引き起こす最新鋭のプールと寺院、京都をより魅力的にするのはどっち?」(May 7, 2010)です。著作権に配慮して全体の三分の2を引用紹介。而して、この記事の感想、京都を巡る私の随想や参考記事URLに関しては本稿末尾の「後記」をご覧下さい。

ヽ(^o^)丿





A dolphin pool, a penguin park and a giant wave pool could soon join the imperial-era townhouses and ancient Buddhist temples in Kyoto, Japan’s former imperial capital.

As early as June, work will begin on a mammoth aquarium complex in central Kyoto, in leafy Umekoji Park at the center of the city. A brainchild of the Orix Real Estate Corporation, the project could breathe new life into Kyoto’s tourism industry by attracting more than two million visitors a year, developers say.

But to opponents, the proposed aquarium, set to open in 2012, is a misguided enterprise that threatens to destroy Kyoto’s historic ambience. Adding to the disgrace, they say, is Orix’s plan to showcase dolphins in a 19,000-square-foot pool at a time when the nation is under fire for hunting thousands of dolphins and porpoises each year. ・・・


イルカが泳ぐ巨大水槽、ペンギンと会える公園、そして、人工的に作られた巨大な波を体験できるプールが間もなく、この国の前の首都である京都、その古都の街並みや古代に建てられた仏教寺院に仲間入りすることになる、鴨。

この6月にも京都の中心部に作られる巨大な水族館系複合施設の工事は始まる。緑豊かな梅小路公園がその建設予定地である【元左京区住民としては下京区のJR東海道線に面した梅小路が「緑豊か」とか「京都の中心部」とか書かれると些か疑問を感じないではないけれど、ここはテクストに従った】。オリックス不動産の企画が産み出したこの独創的なプロジェクトは、年間2百万人の観光客を惹きつけることにより、京都の観光ビジネスに新しい息吹を吹き込むことになるかもしれない。

他方、しかし、このプロジェクトに反対する側にとっては、2012年開業予定のこの水族館建設計画は京都の歴史的環境を破壊しかねない筋違いの企画なのだ。更に、この歴史環境の破壊に加えて、反対派は毎年数千頭のイルカ類を捕獲していることで日本が非難の十字砲火を浴びている正にそのときに、それに引き続いてオリックスは19,000平方フィートの水槽でイルカを見世物にしようとしているんやでと批判している。(中略)   




Whether or not Kyoto gets the 118,000-square-foot aquarium, experts say that Japan clearly needs to re-examine its approach to tourism, a $944 billion industry worldwide — bigger than autos, bigger than steel.

Despite choice destinations like ancient Kyoto and modern, bustling Tokyo, as well as beach and ski resorts, Japan attracted just 8.4 million foreign visitors in 2008 — a small fraction of France’s 79 million, the United States’ 58 million or China’s 53 million, according to the World Tourism Organization. In 2009, the number of foreign visitors to Japan dropped an additional 18.7 percent, to 6.79 million, amid the global recession, according to Japan’s government.

Japan earned just $10.8 billion from foreign tourism in 2008, a tenth of the $110 billion the United States earned from overseas tourists that year. Ukraine and Macau each attract more foreign tourists a year than Japan.


この118,000平方フィートの水族館複合施設が最終的に建設されるか否かにかかわらず、観光ビジネスの取り組みについて日本は間違いなく再検討するべき時期に来ていると専門家は見ている。観光ビジネスと言えば、世界全体で9,440億ドルの規模に達する産業であり、その規模は自動車製造業よりも製鉄業よりも大きくそれらを凌駕する産業部門なのである【2006年の「工業統計」によると、日本だけでも自動車産業の製造品出荷額は54.1兆円(≒5,400億ドル)であり、観光と他の産業との産業規模比較には疑問がなくもない。但し、ここはテクストに従った】。

目指す行き先が古都京都であろうが現代風で慌しい東京であろうが、また、浜辺であろうがスキーリゾートであろうが、世界観光機関によれば、2008年にはたった840万人の外国人環境客しか日本は誘致できなかった。この数字は7,900万人のフランスや5,800万人のアメリカ、あるいは、5,300万人の支那に比べれば微々たるものと言うしかないだろう。そして、日本政府によれば、2009年には世界的な景気後退の中、外国から日本を訪れる観光客の数は更に18.7%減少して679万人になったのである。

而して、2008年、日本が外国人観光客から稼いだのは108億ドルに過ぎず、これは同じ年に1,100億ドル稼いだアメリカの十分の1。年間の外国人観光客数は日本はウクライナやマカオにも及ばないのである。    





“Japan has the potential to be a tourism superpower,” said Hiroshi Mizohata, who took over as commissioner of the Japan Tourism Agency in January.

Mr. Mizohata, former president of a popular local soccer team, has set an ambitious goal of increasing the number of foreign visitors to Japan to more than 10 million in two years and to 20 million by 2016. “With new ideas and initiatives, I believe we can meet these targets,” he said.

Government officials blame the lack of budget-travel options in Japan, as well as its high costs, for the country’s unpopularity as a tourist destination.

But critics point out that until now, the tourism market has been geared almost exclusively to domestic travelers, which means that much of Japan’s tourist infrastructure does not meet the expectations of foreign tourists.


「日本は観光超大国になる潜在能力を秘めている」と、1月に観光庁長官に就任した溝畑宏氏は述べている。

溝畑氏は、地方の人気のあるサッカーチーム【大分トリニータ】の前の社長なのだけれども、彼は、2年以内に1千万人、2016年までに2千万人の外国人観光客の誘致を実現するという強気の目標を掲げている。「新しいアイデアと指導力をもってすれば、この目標は十分に達成可能だ」と。そう溝畑氏は語っているのだ。

他方、日本政府の担当者は、旅行の目的地として日本が外国人観光客を惹きつけられないでいる理由を、高い旅費・宿泊費と並んでリーズナブルで時には一点豪華主義的な贅沢もできるという小回りの利く旅行スタイルが日本では一般的ではないことに求めている。

これに対して、現在に至るも日本の観光マーケットは国内の顧客に特化している、蓋し、その需要に連動して整備されてきているという批判も聞かれる。すなわち、日本の観光資源や観光のための基盤的設備の多くは外国人観光客の期待に応えるものではないということだ。   





<続く>



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