英語と書評 de 海馬之玄関

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中国の空母建造と朝日の空疎な姑息

2009年01月10日 13時40分05秒 | 日々感じたこととか


暮れも押し迫った頃、朝日新聞の朝刊一面Topに「中国、初の空母建造-中型2隻来年着手」(2008年12月30日・東京本社版14版)の記事が掲載されていました。専門家の間では想定内のことだったとはいえ(下記URL参照)、しかし、その具体的目的を詳らかにすることなく、実体も不透明なまま20年連続前年度比10%超の軍拡を行なってきた支那がいよいよ空母建造に着手するという事態は(まして、支那の実際の軍事費は公表数字の2~3倍はあると見る向きもあり、しかも、支那の比較的低い人件費を織り込んだ公表数字なのですから!)近隣諸国にとって現実的な脅威であろうと思います。

・日本李登輝友の会神奈川支部初春講演会
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/51352486.html

支那の空母建造は既定の路線ではあったが、いよいよ支那のハードパワーは近隣諸国、特に、日本にとっての現実的脅威になってきた。まして、日本の唯一の同盟国たるアメリカには日本の安全保障に責任を持つ意志も能力も欠けつつある現在、日本は支那に拮抗すべく現行憲法体制下でも可能な諸施策、すなわち、①核武装を含む軍備増強と軍事裁判所の創設を含む軍事法制の抜本的改革整備、ならびに、②日米同盟の一層の整備強化と非特定アジア諸国(就中、日本の生命線であり日本の運命共同体である台湾)との連携強化、而して、③(支那を牽制しうるカードとして敢えて顕揚しますが)ロシアとの関係改善を行なうべきだと私は思います。

然るに、朝日新聞の12月30日の紙面にはこのような支那の脅威に対する指摘は皆無であるだけでなく、それは「支那の空母建造」の脅威を相対化する文言、あるいは、支那の空母建造を「仕方のないこと」と理解し容認することで支那の脅威を結果的に否定するものでした。畢竟、下にその幾つかを転記した如く、それは新華社といえどもここまで「支那擁護」の論陣を張ることは憚られる域に達している。朝日新聞記して曰く、

「海軍少将の一人は朝日新聞の取材に対し、中国の中東からの石油輸入が増えているためマラッカ海峡やインド洋のシーレーン防衛を空母の任務に想定していると明らかにしたうえで、「米国が保有するような10万トン近い大型空母ではなく【5~6万トン級の中型空母であり】、脅威にはあたらない」と強調した」(1面記事の最後のセンテンス)

「「大国」の象徴 悲願の空母」「中国、脅威論に配慮も」(4面記事ヘッディング)

「■各国の空母保有数」
米国11隻:英国3隻:イタリア2隻:フランス1隻:ロシア1隻:
スペイン1隻:インド1隻:ブラジル1隻(4面記事図表)

「海軍軍事学術研究所の李傑大佐が07年春のテレビ番組で「一国の総合的実力を示すもの」と述べた通り、空母は大国の象徴ととらえられている」「エネルギー確保上も空母は欠かせないと考えられている。輸入石油の7割は中東やアフリカから米海軍の影響下にあるインド洋を通る。軍内部には「台湾有事の際は米軍にシーレーンを封鎖される」との疑念がある」(4面)

「中国側は台湾周辺海域を受け持つ東海艦隊ではなく南海艦隊に空母を配置することで、「米国への配慮」(軍関係筋)を示そうとしている」「一方、空母配備への課題がすべて解決したわけではない。(中略)艦載機や同行する駆逐艦などに多大な費用がかかる。北京の外交筋【北京駐在の各国大使館関係者】の間では「軍事費を浪費させるため米国がわざと空母を保有させるのでは」との憶測を呼んでいる」(4面)



これらの朝日新聞の文章におそらく虚偽は含まれていない。けれども、「支那の空母建造」を巡る多様で多層な事実の中で朝日新聞が選び報じた「事実」は、少なくとも、読者をして支那の脅威を過小評価せしめるものに限られていることもまた事実でしょう。確かに、上のURL記事にも触れた通り、「支那の空母」自体は日米同盟の前には大した軍事的な脅威ではない。けれども、「支那の空母建造表明」という事実は「自国国益の確保のためには軍事力の行使を躊躇わない」という支那の<プリコミットメント>に他ならず、それは日米同盟にとっていよいよ来るべき事態の到来を覚悟せしめるシグナルである。そう私は考えています。

以下は、このイシューを報じたNew York Timesの記事、出典は” China Signals More Interest in Building Aircraft Carrier,” Dec. 24, 2008「支那、空母建造の意欲を示唆」です。アメリカの朝日新聞とはいえ流石に「反日-親支那」の本家本元の朝日新聞とは違いNYTは世界と世間を考える上で参考になる。そう思いここに紹介します。






In the clearest indication yet that China could soon begin building its first aircraft carrier, a Defense Ministry spokesman said Tuesday that the country was seriously considering “relevant issues” in making its decision about whether to move ahead with the project, according to Xinhua, the state news agency.

The spokesman, Huang Xueping, said at a news conference in Beijing that aircraft carriers were “a reflection of a nation’s comprehensive power,” indicating that Chinese government officials saw value in adding a carrier to the country’s fleet. Mr. Huang said that China would use any aircraft carrier built in the future to safeguard its shores and defend “sovereignty over coastal areas and territorial seas,” Xinhua reported.

If China does decide to build the carrier, it will no doubt increase tensions with the United States, Taiwan and Japan, among other governments. China has been expanding its navy at a fast pace. The government has built at least 60 warships since 2000, and its fleet of 860 vessels includes about 60 submarines.


同国初となる空母の建造にすぐにでも着手できることを今までになく明確に示唆しつつ、支那国防省の広報官が火曜日【2008年12月23日】、空母建造計画に着手するかどうかを判断をする上で「さまざまな関連要素」を真剣に支那が考慮していると述べた。国営通信社の新華社はそう伝えている。

当該の広報官、黄雪平氏は北京で行われた記者会見で空母は「国家の総合力の反映」であると語り、而して、支那政府高官が空母を同国の海軍に導入することに価値を見出していることを示唆した。新華社の報ずるところでは、支那は将来建造される空母を支那の沿岸警備、および、「沿海部と領海の主権」を防衛するためにのみ使用する予定であるとも黄氏は述べたとのこと。

もし支那が空母建造を決断すれば、支那の空母保有というこの事態は支那と他国との間の緊張、就中、米国・台湾・日本との間の緊張を高めることは間違いない。支那は現在に至るまでその海軍力を急激に強化してきており、支那政府は少なくとも60隻の軍艦を2000年から現在まで建造し、もって、支那海軍の現在の陣容は潜水艦60隻を含む860隻に達している。


Last month, a senior Chinese military official hinted in an interview with The Financial Times that China would like to build an aircraft carrier. ・・・The official said having a carrier was the dream of any great military power and suggested that the United States had nothing to fear if China did build a carrier.

The United States has 11 aircraft carriers, but only a handful of other nations — including Britain, France, Italy and Russia — have carriers, and of those, none have more than a few.・・・

The buildup of the Chinese military could change the balance of power across the Taiwan Strait. The Communist Party views Taiwan as a rebel province that must be reunited with the mainland, by force if necessary. But the United States government has said it may come to Taiwan’s defense in the event of hostilities with China.

In October, the Pentagon announced the sale of $6 billion of advanced weapons to Taiwan, a move that prompted criticism from China. The United States regularly sells arms to Taiwan, and China has long denounced the sales.


先月【2008年11月】、支那のある軍当局者は支那が空母を建造したいと考えていることをフィナンシャルタイムズ紙とのインタヴューの中でほのめかした。(中略)この軍当局者は、空母の保有はすべての軍事大国の夢であるとした上で、もし支那が空母を建造したとしてもアメリカはなんら危惧する必要はないと語った。

アメリカは11隻の空母を保有しているが、しかし、アメリカを除けば空母を保有しているのは英国・フランス・イタリア・ロシアを含め極一握りの国に限られており、しかも、それらの中で2~3隻よりも多く保有している国は皆無である。(中略)

支那の軍事力の増強は台湾海峡を挟む勢力の均衡に変化を及ぼしかねない。支那共産党にとって台湾は、それがもし必要とあらば武力に訴えてでも支那本土に再統合するべき反乱分子が支配している【支那の単なる】一つの省にすぎない。アメリカ政府は、しかし、台湾と支那との間に戦端が開かれた際にはアメリカは台湾防衛のために駆けつけるとかねてから表明している。

10月、アメリカの国防総省は総額60億ドルの最新兵器を台湾に売却する旨を発表した。而して、これは支那からの批判を呼び起こす動きと言うべきであろう。アメリカは恒常的に台湾に武器を売却しているのだけれども、それに対して支那は執拗にその売却を非難してきたのだから。 



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