「民主党300議席の調査は正しいか?」という質問を受けています。また、世論調査といっても「私の周りにはアンケートとられた人はいないみたいですが・・・」という素朴なコメントもあるブログで目にしました。このブログのブログ友・同志・仲間の中には私が知る限りでも私より統計学・数理政治学に詳しい方が何人もいらっしゃるので、僭越でもあり憚られもするのですが、この点を俎上に載せた記事を見かけないこともありこのイシューにつき記事を上梓することにしました。
民主党300議席の世論調査結果は正しいのか?
蓋し、民主党300議席の調査は正しいし、統計学上、有権者の0.01%程度でも有意味な推論はできると私は思います。すなわち、統計学上、母集団とサンプルの定義がきちんとできたのなら(どの対象について推論したいのかが確定しており、また、その対象とサンプルは相似的と言えることが肯定されていれば)、サンプルを無作為に選択する技術は確立していますから、(自民vs民主の一騎打ちの判定だけなら)本当は各選挙区で100人どころか50人でも30人でも、かなり、正確な判定ができると思います。つまり、300選挙区で9000人でもOK
これは、歌舞伎町や渋谷に屯する3万人程の女子高生に片端から声をかけて「週平均学習時間」を聞き取り調査しても、首都圏の女子高校生の「週平均学習時間」について何も確信をもっては語れないことと正反対の事象なのです。この例では、「母集団=首都圏の女子高校生」とサンプルの関係に必然性がないのですから。
繰り返しますが母集団とサンプルの定義がきちんとできたのなら少数のサンプルからでも母集団の傾向に関してある程度正確な推論はできる。ただ、電話調査の場合には、ある特定の時間帯に電話に出られるタイプの人にサンプルが偏る弊害があり、更に、マスコミ各社は(本当はどうでもいいのでしょうが!)支持率0.5~1.0%%前後の社民党等の泡沫政党の議席の予想もしなければならず、(調査員の対面方式を取らない代わりに)サンプル数を増やすことでこの調査の弊害とニーズに対応しているので調査によっては10万人を超える調査になっている。
けれども、今回は、不固定民主支持層の投票率が全く読めず、実は、(読売ではありませんが、ある新聞社の調査を監修した私の友人も)自信がないといっていました。何時もは誤差が±30議席くらいまでだけども、今回はその誤差の範囲も予想不能、と。
ことほど左様に、日々「民主党の地滑り的勝利が確実/自民半減、民主党320議席も!」という報道がなされています。しかし、小選挙区ベースの一騎打ちにおいては票差が勝者の10%もつけば大差。20%の差が最大の所なのです(★)。実際、史上最大の圧勝と言われた1980年の「レーガンvsカーター」の選挙でも両者の得票率は、「50.7%:41.0%」で敗者の票は勝者の80.1%だったのですから。
つまり、(今回の総選挙では共産党が選挙区の立候補者をセーブすることもあり)自民・民主の両政党以外の候補への投票を無視して、()有権者を100、()投票率を70%、()民主党が自己の得票の10%以上の差を自民党につけると仮定すれば、民主がほぼすべての選挙区で圧勝するとしても、全国平均の自民・民主の得票率の比は、選挙区有権者の「33.2%:36.8%」。この差3.6%は有権者総数30万規模の選挙区では10,800票の差にすぎません。
★註:一騎打ちの勝敗評価
「参加することに意義がある」泡沫政党ではない両勢力が一騎打ちで勝負を行なう場合、投票総数の中の少なくとも各々30%は固定支持層からの投票と考ます。そうでなければ、①約30%の無党派層からの投票を除いても[10%+[30%-α]+[30%-β]]の票が第三の候補者に流れることになり、それは「鼎立状態」ではあっても「一騎打ち」にはならないからです。また、②当選を競う両党の候補者の固定票に無党派層の半数(約15%)を超える勢力差があれば(つまり、固定支持層が「38%:22%」以上離れていれば)通常はその勝負は公示日の段階で<北斗の拳>状態になると考えても、経験則からは極論とは言えないからです。
而して、両勢力の固定支持層からの得票比を「30:30」と仮定した場合、自己が得た得票の10%以上の差を勝者が敗者につけるケースとは、両勢力の最終的な得票比が約「53:47」以上に開くことであり、それは無党派層等から得た得票比が「23:17」であること。つまり、無党派層等の60%近くを勝者が獲得したことを意味しており、その差は「大差=容易に挽回することが不可能だった」と言える。と、そう考えられています。
さて、現下の「自民半減! 民主党300議席超!」の情勢は、有権者を母集団とする統計学的推論からは正しいと思います。朝日新聞だけならまだしも(笑)、マスメディア各社がほぼ同様の結論を下しているのですから。
けれども、今回事情が今までと異なるのは「有権者の母集団」と「投票者の母集団」が<相似>であると言えるかどうか不明なことです。簡単に言えば、これまで自民党の固定支持層であった民主党支持の有権者が実際に投票に行くかどうか、投票用紙にアンケートに答えた通り「民主党」と書くかどうか(そのような投票行動を予測する前例がないのですから統計学というか数学的に)不明ということ。
要は、今までなら予定調和的に、例えば、「既婚子育て中のアラフォーの総合職女性」の自民党支持者の投票率は何%というデータがあり、そのデータと併せて「支持政党世論調査結果=有権者のサンプル」から「選挙予測=投票者の母集団」を予想していたのですが、今回、有権者クラスター毎の投票率予測ができにくいのです。つまり、「親鴨=有権者の母集団」が産んだ「子鴨=投票者母集団」が親鴨似かどうかは God knows.
まして、投票率が「郵政民営化の是非」を巡る陶酔の中で70%近くの高率に達した前回とは異なり、前々回並みの60%前後になれば(その新たな10%の棄権者総数は有権者総数30万規模の選挙区では30,000人。これは、大差の一騎打ちの場合のマージン10,800票など軽く吹き飛ぶボリュームなのですから)自民・民主の一騎打ちの結果は、気休めではなくGod knows.
畢竟、諦めるのはまだ早い。而して、
麻生総理断乎支持! 頑張りましょう。
【参考記事:八月を「日本を考える」月にしましょう】
・エラボート de 遊びながら政策チェック☆あなたと政党候補者の一致度は?
http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/58575733.html
・麻生総理支持派の投票戦略試案☆「比例区は自民、反麻生の自民候補の選挙区は共産党!」
http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/58469869.html