現在の本書タイトルは表題に掲げたとおりである。ハルキ文庫新装版が2008年8月に出版されている。最初は『逃げ切る』、長編ハードサスペンス書き下ろしとして、1993年7月のノン・ノベルの1冊として出版された。
私は『デッドエンド ~ボディガード工藤兵悟~』(2012年3月刊)を読んで読後印象を記した。その後実はこれが最新刊だったのを知った。シリーズとして既に3冊出版されており、『ナイトランナー』がボディーガード工藤兵悟シリーズの第1作だったのだ。
耳にはマリンブルーの大きなイヤリングを飾り、同色のシャツブラウスを着て、ジーパンを穿き、旅行用スーツケースを持った、誰が見てもいい女だと認めるはずの女性が、六本木のはずれにあるスタンド・バーに飛び込んでくる場面から始まる。水木亜希子という。身長は160cmくらいだが、流れるような美しいプロポーションの持ち主なのだ。
その直後に、彼女を追跡する二人の白人男が入ってきて、一騒動が起きる。しかし亜希子はうまく一旦その場から逃げ切れるというシーン。まさに映画の冒頭に出来そうなストーリーの始まりである。亜希子はある目的をもって日本に逃げ帰ってきた。3日後にアメリカから日本に飛来するある重要人物に会って、ある重要な物を手渡すまで「逃げ切らなければならない」のである。そのために、アメリカでエド・ヴァヘニアンから紹介を受けた工藤兵悟に会い、目的遂行までのボディーガードを依頼するのだ。亜希子はエド・ヴァヘニアンから指導された経験を持っているという。エド・ヴァヘニアンはサバイバル・インストラクターとして、亜希子を指導したのだと工藤に言う。そのエヴァが日本でのボディガードを頼むなら工藤以外にはないと言ったというのだ。勿論、即座に工藤は亜希子を試してみる。勿論、亜希子の身のこなしがその事実を証明している。
水木亜希子は世界的な環境保護団体『グリーン・アーク』の本部に勤務していた。環境保護の実態を知るフィールドワークにいろいろな場所に出かける。アマゾンのジャングル、カンボジアやアフガニスタン・・・安全な場所とは限らないので、サバイバルの技術が不可欠だから、エドの指導を受けたというのだ。『グリーン・アーク』は世界の環境保護については狂信的な側面すらもつという評判がある。その本部に環境保護の信念を持って勤務してきた亜希子は、徐々に環境保護に関する様々な局面を知ることになる。
そして、『グリーン・アーク』の目指すある環境保護対策の考え方が、亜希子の環境保護に対する価値観に反することを知る。そして、それを阻止するための行動を選択する。目的を完遂するためには、敵から「逃げ切る」ことが必要となる。
工藤兵悟は学生時代に空手をやっていた。180cm、75kgの体格。空手を活かして海外生活をするつもりでヨーロッパに渡ったが、いつの間にかフランス外人部隊に入っていて、傭兵として本物の戦場で戦った経験を持つ。第二落下傘連隊に所属していた。エド・ヴァヘニアンとはコンゴで知り合ったのだ。工藤の分隊が孤立したとき、彼の無謀と思えるやり口で生き延びることができたのだ。工藤とエドは互いの力量を熟知した傭兵仲間だったのだ。
工藤は亜希子からの依頼を1日30万円プラス必要経費で3日間のボディーガードとして引き受ける。二人が居た場所は『ミスティー』というバーの奥にある部屋だった。そのバーに六本木の飯倉のバーに現れた追跡者達が再び現れる。追跡者は米軍の制式銃となったベレッタM92Fを抜き出す。その銃の抜き方は、FBIで考案されたコンバット・シューティングだと工藤は見抜く。
夜のバーから亜希子とボディーガード工藤兵悟の逃走劇が始まる。亜希子に対する追跡者はCIAだったことが亜希子から明かされる。日本国内・関東圏での工藤とCIAの闘いが展開していくのだ。CIAはあるルートを通し日本の警察を巻き込んで、二人の逃亡に対する捜査網を絞り込んでいこうとする。工藤は傭兵として戦場でのサバイバル経験を駆使して、大都会というジャングルの中で、如何に3日間サバイバルして亜希子をボディーガードし、契約を完遂するかに知力知略を働かせる。契約完遂は亜希子の目的達成でもある。
地球環境保護の究極的方策は、環境保護の陥穽にもなるという切り口。その方策は驚愕のシナリオだったのだ。それに加担するCIAは亜希子の目的が達成されるならば、CIA存在の崩壊になるためにその阻止のためにあらゆる手段を使うことを辞さないのだ。逃げ切ろうとする工藤・亜希子と二人の捕獲、目的物奪取に必死のCIAの武闘活劇が展開されていくというストーリー。それが、日本国内での夜の逃走から始まるのである。まさにナイトランナーとなる二人だ。
3日間というタイム・リミットのある中でのスピーディなストーリー展開。一気に読ませる軽快さがある。なかなか追跡・捕獲ができないCIA側には、さらに灰色の眼をした男が投入され、全体の指揮をとる立場になる。その人物と会えば一目をだれもが置くすごみすら感じさせる男だった。工藤の動きを的確に推測できる力量を持っていた。
亜希子が工藤に誘拐されたという誘拐事件の公開捜査という警察組織の手段を使った追跡に展開していくのだ。
そして・・・・遂に、亜希子と工藤はタイムリミットの寸前で、捕獲されてしまうことになる。そして、意外な場所での意外な結末に導かれていく。
環境保護の陥穽という一つの驚愕シナリオとCIAがらみの逃亡・追跡活劇を組み合わせたテーマ設定が面白い。また、それは一面で、フィクションの形を借りた環境保護および日本という国家の警察組織の一局面をを考える材料提供にもなっている。
まあ、硬く捕らえないで、ハードサスペンスとしてひとときを楽しめる作品である。
ご一読ありがとうございます。
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関連する語句などを少しネット検索してみた。一覧にしておきたい。
フランス外人部隊 :ウィキペディア
明るく楽しい外人部隊 ホームページ
元フランス外人部隊兵による、フランス外人部隊の話題
フランス外人部隊 非公式情報サイト
コンバット・シューティング → 実戦的射撃スクール体験記
アーマライト(Arma Lite)の公式サイト
M16自動小銃 :ウィキペディア
ベレッタM92 :ウィキペディア
リボルバー :「ピクシブ百科事典」
スミス・アンド・ウェッソン :ウィキペディア
ダマスカス鋼 :ウィキペディア
ナイフ :ウィキペディア
警察無線機の型番いろいろ データベースコーナー :「Get a FREE Website」
僕らは戦場を知らない━━フランス外人部隊に7年所属した、結城健司・元伍長の物語
:「GQ scoop」
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私は『デッドエンド ~ボディガード工藤兵悟~』(2012年3月刊)を読んで読後印象を記した。その後実はこれが最新刊だったのを知った。シリーズとして既に3冊出版されており、『ナイトランナー』がボディーガード工藤兵悟シリーズの第1作だったのだ。
耳にはマリンブルーの大きなイヤリングを飾り、同色のシャツブラウスを着て、ジーパンを穿き、旅行用スーツケースを持った、誰が見てもいい女だと認めるはずの女性が、六本木のはずれにあるスタンド・バーに飛び込んでくる場面から始まる。水木亜希子という。身長は160cmくらいだが、流れるような美しいプロポーションの持ち主なのだ。
その直後に、彼女を追跡する二人の白人男が入ってきて、一騒動が起きる。しかし亜希子はうまく一旦その場から逃げ切れるというシーン。まさに映画の冒頭に出来そうなストーリーの始まりである。亜希子はある目的をもって日本に逃げ帰ってきた。3日後にアメリカから日本に飛来するある重要人物に会って、ある重要な物を手渡すまで「逃げ切らなければならない」のである。そのために、アメリカでエド・ヴァヘニアンから紹介を受けた工藤兵悟に会い、目的遂行までのボディーガードを依頼するのだ。亜希子はエド・ヴァヘニアンから指導された経験を持っているという。エド・ヴァヘニアンはサバイバル・インストラクターとして、亜希子を指導したのだと工藤に言う。そのエヴァが日本でのボディガードを頼むなら工藤以外にはないと言ったというのだ。勿論、即座に工藤は亜希子を試してみる。勿論、亜希子の身のこなしがその事実を証明している。
水木亜希子は世界的な環境保護団体『グリーン・アーク』の本部に勤務していた。環境保護の実態を知るフィールドワークにいろいろな場所に出かける。アマゾンのジャングル、カンボジアやアフガニスタン・・・安全な場所とは限らないので、サバイバルの技術が不可欠だから、エドの指導を受けたというのだ。『グリーン・アーク』は世界の環境保護については狂信的な側面すらもつという評判がある。その本部に環境保護の信念を持って勤務してきた亜希子は、徐々に環境保護に関する様々な局面を知ることになる。
そして、『グリーン・アーク』の目指すある環境保護対策の考え方が、亜希子の環境保護に対する価値観に反することを知る。そして、それを阻止するための行動を選択する。目的を完遂するためには、敵から「逃げ切る」ことが必要となる。
工藤兵悟は学生時代に空手をやっていた。180cm、75kgの体格。空手を活かして海外生活をするつもりでヨーロッパに渡ったが、いつの間にかフランス外人部隊に入っていて、傭兵として本物の戦場で戦った経験を持つ。第二落下傘連隊に所属していた。エド・ヴァヘニアンとはコンゴで知り合ったのだ。工藤の分隊が孤立したとき、彼の無謀と思えるやり口で生き延びることができたのだ。工藤とエドは互いの力量を熟知した傭兵仲間だったのだ。
工藤は亜希子からの依頼を1日30万円プラス必要経費で3日間のボディーガードとして引き受ける。二人が居た場所は『ミスティー』というバーの奥にある部屋だった。そのバーに六本木の飯倉のバーに現れた追跡者達が再び現れる。追跡者は米軍の制式銃となったベレッタM92Fを抜き出す。その銃の抜き方は、FBIで考案されたコンバット・シューティングだと工藤は見抜く。
夜のバーから亜希子とボディーガード工藤兵悟の逃走劇が始まる。亜希子に対する追跡者はCIAだったことが亜希子から明かされる。日本国内・関東圏での工藤とCIAの闘いが展開していくのだ。CIAはあるルートを通し日本の警察を巻き込んで、二人の逃亡に対する捜査網を絞り込んでいこうとする。工藤は傭兵として戦場でのサバイバル経験を駆使して、大都会というジャングルの中で、如何に3日間サバイバルして亜希子をボディーガードし、契約を完遂するかに知力知略を働かせる。契約完遂は亜希子の目的達成でもある。
地球環境保護の究極的方策は、環境保護の陥穽にもなるという切り口。その方策は驚愕のシナリオだったのだ。それに加担するCIAは亜希子の目的が達成されるならば、CIA存在の崩壊になるためにその阻止のためにあらゆる手段を使うことを辞さないのだ。逃げ切ろうとする工藤・亜希子と二人の捕獲、目的物奪取に必死のCIAの武闘活劇が展開されていくというストーリー。それが、日本国内での夜の逃走から始まるのである。まさにナイトランナーとなる二人だ。
3日間というタイム・リミットのある中でのスピーディなストーリー展開。一気に読ませる軽快さがある。なかなか追跡・捕獲ができないCIA側には、さらに灰色の眼をした男が投入され、全体の指揮をとる立場になる。その人物と会えば一目をだれもが置くすごみすら感じさせる男だった。工藤の動きを的確に推測できる力量を持っていた。
亜希子が工藤に誘拐されたという誘拐事件の公開捜査という警察組織の手段を使った追跡に展開していくのだ。
そして・・・・遂に、亜希子と工藤はタイムリミットの寸前で、捕獲されてしまうことになる。そして、意外な場所での意外な結末に導かれていく。
環境保護の陥穽という一つの驚愕シナリオとCIAがらみの逃亡・追跡活劇を組み合わせたテーマ設定が面白い。また、それは一面で、フィクションの形を借りた環境保護および日本という国家の警察組織の一局面をを考える材料提供にもなっている。
まあ、硬く捕らえないで、ハードサスペンスとしてひとときを楽しめる作品である。
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フランス外人部隊 :ウィキペディア
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元フランス外人部隊兵による、フランス外人部隊の話題
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ベレッタM92 :ウィキペディア
リボルバー :「ピクシブ百科事典」
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