本書序文の冒頭はこう述べる。「このソヴィエトのマニュアルの最終版は、ナチと戦うゲリラ兵を訓練するために用いられ、小冊子ながら絶大な影響力を持っていた」と。
本書の編者2人は子供時代にシベリアで育った。友人の父親がこの原マニュアルの1冊を持っていて、「それによって子供たちの想像力は刺激され、ごっこ遊びやサバイバル技術は正確さを増した」(p11)という経験をしているという。若者になって本を探したが発見できず、10年近くたち、ロシアの研究者が図書館に残されていた1冊を発見。その1冊のコピーを研究者から入手し、コピーの図は質が悪かったため、出版物やウェブサイトなどから収集・加工処理して、マニュアルを復元し、英語訳を完成させたと記す。
正確に本書の位置づけを理解するために。英語版のタイトルを示しておこう。
The Partisan's Companion Updated and Revised edition, 1942
The Red Army's Do-It-Yourself, Nazi-Bashing Guerrilla Warefare Manual
直訳すれば、「パルチザンの必携書 1942年更新改訂版 赤軍の自分たちでナチをやっつけるゲリラ活動戦のマニュアル」というところか。日曜大工品販売店で目にする言葉、Do-It-Yourself にこんな使い方もかるのかと、ちょっと驚き。目から鱗という感じだ。
本書マニュアルの中扉では、「パルチザンのためのハンドブック ゲリラ戦士のハンドブック 第三版(拡大版) OGIZ ファー・イースト・ステート・パブリッシング 1942年」となっている。
序文の末尾は、「この英語訳を読者に提供し、パルチザンの戦闘の戦術的価値だけでなく、パルチザンの生活の厳しい鍛錬の状況やストイックな現実も正しく認識されることを願う。これは訓練マニュアルだが、そこには郷土を守ることを決意した人々の忍耐が読み取れるだろう」という文で締めくくられている。
ロシアの歴史はゲリラ戦に満ちている。そして1930年代にソヴィエトからパルチザンの幹部が追放されたときに、マニュアルは破棄されたという。そして、旧式の内線マニュアルが『パルチザンのためのハンドブック』初版として再発行されたのが1941年12月。第2次世界大戦中のソヴィエト連邦のドイツとの戦いにおいて、ソヴィエト政府は1942年5月30日にパルチザン活動の参謀本を組織化。同年9月スターリンが「パルチザン活動の任務について」の防衛命令189を出す。パルチザン集団の中央統制の強化とパルチザンの増加の中で、360ページの本としてこの第三版(拡大版)が1943年5月に出版されたという。5万部発行されたという。
本書は、今や歴史上の軍事史料的な価値として存在するといえる。まず、全体構成をご紹介しよう。
冒頭には、「十月革命二五周年記念演説」(スターリンの演説)、「人民委員会防衛命令 1942年11月7日 345号モスクワ」(スターリン)、「パルチザン戦について」(M・I・カリーニン)の文が掲載されている。ゲリラ集団の組織化をめざす目的の明確化だ。
第1章 パルチザンの基本戦術
第2章 ファシストの対パルチザン戦法
第3章 爆発物と破壊工作
第4章 戦闘用武器
第5章 リヴォルバーとピストル
第6章 敵の武器を使う
第7章 偵察
第8章 カムフラージュ
第9章 敵の軍用機との戦い方
第10章 化学兵器に対する防護
第11章 白兵戦
第12章 応急手当
第13章 行軍と野営
第14章 食料の保存法
第15章 雪中生活
という具合である。
第2次世界大戦から現在までの間に、軍備は、兵士の武器から戦車、ロケット、飛行機にいたるまで飛躍的な技術開発があったことは、素人でもわかる。それ故、このマニュアルに出てくる軍備関連の内容はもはや歴史的骨董品的な事実記載にしかすぎない。だから、軍事オタクではないので、ああこんな武器が敵味方で使われていたのかと史料確認的に斜め読みした。
だが、・・・である。100%、骨董品で飾り物か? というとそうではない。サバイバル的視点でのマニュアル+αの箇所は、素人なりに客観的に眺めると、現在でも旧ソ連の地域、東欧辺りでならその通り有効な気がする。もちろん、ヴァーチャルなレベルで判断してだけのことだが・・・・。
軍事オタクではなく、「マニュアル」作成という観点から本書を眺めると話は全く別だ。マニュアルの持つ意味、そのまとめ方・プレゼンテーションとしては、実にいろいろと学べるように思う。歴史的事実を学ぶ他に、この切り口からだけでも手にとって一読する価値はある。
マニュアル作成という観点で、気づいた点を列挙してみる。
*マニュアル冒頭に、これが「何のために書かれたか」という目的意識を明確にするという姿勢が貫かれている。行動への動機づけである。
*まず最初に(第1章)、役割遂行への基本事項(本書では、基本戦術)が論理的な流れの中で、イメージを湧きやすくして、かつ具体的に個々の状況に応じた対処を含めて簡略に書かれている。見出し項目を追っていくだけで、押さえどころがわかるようになっている。
*役割遂行にはツール(ここでは、武器類だが)を効率的有効に駆使しなければならない。そのツールの利用法について、まさに素人にわかるように、だが要点を簡潔に書くことが実践されている。自分の道具の使いこなし方である。(第3~5章、10章)
その際に、キーワードを見出し(軸)にして要点を述べる。箇条書きを各所で併用。
重要点は、イラスト図(勿論、現代なら写真等も)を載せて、補足説明付記。
*どんな仕事にも相手が存在する。相対的な関係性で情報を知らせる原則が貫かれている。自分たちの武器の説明をすると、対比的に敵軍の武器情報を追記している。どのように見るか。どういう使われ方をしているか。知っておくべき事を押さえている。
敵を知れば百戦して危うからずというが、まさにその実践である。
*ツールの使い方については、1)通常の扱い方の手順、2)メンテナンスのやり方、3)不良発生の知識と対処(考えられる問題とその原因、是正措置方法)、4)不良の直し方、がまとめられている。勿論、ここでも図解を有効活用している。点検の重要性が明確に打ち出されている。
手順化するべきものは、すべて箇条書き方式で論理的にわかりやすく記述している。
手順を図解して併記することを実行している。絵だけ見ても大凡理解できる。
*第6章は「敵の武器を使う」である。ここでは、敵の武器を図入りで列挙して、その特徴の説明と使い方を具体的に記載している。
これはそのままビジネスにも応用できるのではないか。ライバルあるいはお客の情報を具体的に知り、そこから何を引き出し、どう使えば良いかというポイントを示すこと。たとえば、お客の発言情報からその欲求を引き出し、引き出し、対処のポイントをマニュアル化するということと同じだと感じる。
*動作・行動の基本ルールは明確に明示する。絵入りでわかりやすく。
第7章「偵察」は、どういうレベルで基本を押さえさせるかの事例ともいえる。きっちり簡潔に記されている。だが、書かれていることは実に具体的なやり方・行動レベルである。抽象的な記述ではない。基本は具体的に即実践が利くようにの見本のようである。
*あたりまえと思えることも、具体的に書き込んで、イメージが浮かぶくらいにする。つまり、初めての素人でも、読めばイメージが湧くように。
例えば第8章「カムフラージュ」にこんな一節がある。
「周囲の地形に溶け込むことは、最も重要なカムフラージュ法のひとつである。自然のどんな地形も土地の起伏も天然の遮蔽物として利用し、敵から身を守ろう(図94)。小さな丘、小山、地面の穴、谷、くぼ地、砲弾(爆発)によるクレーターはどれも、敵の探索からのよいシェルターになる。自然や人工の物も自分の姿を隠してくれる。・・・・」(p163~164)実に具体的な記述である。
*主要なものは具体的に列挙して、それぞれに特徴を説明する。対処法も個別に記す。
このマニュアルでは、軍用機や化学物質について、具体的に事例列挙している。(第9~10章)その要点を記憶しやすいように、同じパターンで簡潔にまとめている。
尚、このマニュアルでは、防毒マスクの重要性を記した続きに、「においで毒物を探知する際は、1~2回吸い込むだけで気づくようにする。・・・・」と記されている。だが、一般のパルチザン戦士にこれが可能かと考えると、やはりちょっと首をかしげたくなる。記述の必要性と主旨は理解できるのだが・・・・。まあ必要な原則論的記述も避けられないとは思う。この点は、具体的な訓練でどこまで事前にカバーできるかという次元だろう。
同じようなことは、ビジネスのマニュアルでもつきまとうことだ。
*通常のやり方ができない場合、次善の策についてもマニュアルに書き込む。これはやはり重要な観点だろう。
このマニュアル内の典型的な事例では、「欠陥のある防護マスクの使い方」「防護マスクがない場合」という項目で、サバイバル対処の次善策を教えている。
*状況は体系化して、場合分けで具体的に要点を書く。全体像が捕らえられるようにする。全体像がつかめたら、あとは訓練で体に覚え込ませることが大事なのだろう。
これはどの章にも共通するが、第11章「白兵戦」のまとめ方を読んでいて特に感じたことである。うまく状況を分類されて簡潔に要点が記されている。イメージは整理しやすい。そこで、これがどこまで即座に実践できる? からの当たり前のことへの回帰。
ここでも急所は絵入りで説明している。
*マニュアルの作成には、地域の特性を考慮に入れる。これは異文化視点をきっちりと押さえておくということにも通じるだろう。
サバイバルに関わる食料の保存法が第14章にまとめられているが、食料キノコと毒キノコについて列挙して載せられている。これで3ページくらい記されていることに、地域性を感じた。また、最終章で「雪中生活」の方法をマニュアル化している点にも同様に地域性を色濃く感じた次第である。
最後に編者のプロフィールを簡単に紹介しておこう。
レスター・グラウ: アメリカの退役軍人。ベトナム戦争で南ベトナムに従軍し、ゲリラと戦い、担架で運ばれ戦線を離脱した。その後、陸軍でロシア語を学び、任務でソ連を何度も訪れたという。
マイケル・グレス: シベリア育ちの元ソ連兵。ロシア名は、ミシャ。父親は対ナチ戦で戦った退役軍人。
この二人には『ソヴィエト・アフガニスタン戦争-大国はいかに戦い敗れたか』という共著があると、略歴に記されている。
ご一読ありがとうございます。
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本書に出てくる用語で気になるものをネット検索してみた。一覧にまとめておきたい。
Red Army : From Wikipedia, the free encyclopedia
The Red Army Erich Wollenberg
The Partisan's Companion Updated and Revised edition, 1942
十月革命 :ウィキペディア
ファシズム :ウィキペディア
パルチザン :ウィキペディア
赤軍パルチザン :ウィキペディア
抗日パルチザン :ウィキペディア
レジスタンスとパルチザンの違いは何ですか? 同じなんでしょうか? (第2次世界大...
:「YAHOO JAPAN! 知恵袋」
リヴォルヴァーカノン :ウィキペディア
機関銃 :ウィキペディア
拳銃 :ウィキペディア
手榴弾 :ウィキペディア
RGD-33手榴弾 :ウィキペディア
Next Generation Hand Grenade ( Product of Swedish innovation ) :Youtube
塹壕 :ウィキペディア
サバイバル :ウィキペディア
サバイバルの観点での別次元の連想展開として:
「Earthquake Survival Manual いざというときのためのサバイバル・マニュアル」
東京都 pdfファイル
「わたしの防災サバイバル手帳」 消防庁 pdfファイル
震度6強体験シュミレーション 防災シミュレーター :「内閣府」
揺れ方シミュレーション 防災シミュレーター :「内閣府」
Survival Table of Contents :「The Aircav」
サバイバルについて様々に論じられた内容の目次ページ(英文)
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本書の編者2人は子供時代にシベリアで育った。友人の父親がこの原マニュアルの1冊を持っていて、「それによって子供たちの想像力は刺激され、ごっこ遊びやサバイバル技術は正確さを増した」(p11)という経験をしているという。若者になって本を探したが発見できず、10年近くたち、ロシアの研究者が図書館に残されていた1冊を発見。その1冊のコピーを研究者から入手し、コピーの図は質が悪かったため、出版物やウェブサイトなどから収集・加工処理して、マニュアルを復元し、英語訳を完成させたと記す。
正確に本書の位置づけを理解するために。英語版のタイトルを示しておこう。
The Partisan's Companion Updated and Revised edition, 1942
The Red Army's Do-It-Yourself, Nazi-Bashing Guerrilla Warefare Manual
直訳すれば、「パルチザンの必携書 1942年更新改訂版 赤軍の自分たちでナチをやっつけるゲリラ活動戦のマニュアル」というところか。日曜大工品販売店で目にする言葉、Do-It-Yourself にこんな使い方もかるのかと、ちょっと驚き。目から鱗という感じだ。
本書マニュアルの中扉では、「パルチザンのためのハンドブック ゲリラ戦士のハンドブック 第三版(拡大版) OGIZ ファー・イースト・ステート・パブリッシング 1942年」となっている。
序文の末尾は、「この英語訳を読者に提供し、パルチザンの戦闘の戦術的価値だけでなく、パルチザンの生活の厳しい鍛錬の状況やストイックな現実も正しく認識されることを願う。これは訓練マニュアルだが、そこには郷土を守ることを決意した人々の忍耐が読み取れるだろう」という文で締めくくられている。
ロシアの歴史はゲリラ戦に満ちている。そして1930年代にソヴィエトからパルチザンの幹部が追放されたときに、マニュアルは破棄されたという。そして、旧式の内線マニュアルが『パルチザンのためのハンドブック』初版として再発行されたのが1941年12月。第2次世界大戦中のソヴィエト連邦のドイツとの戦いにおいて、ソヴィエト政府は1942年5月30日にパルチザン活動の参謀本を組織化。同年9月スターリンが「パルチザン活動の任務について」の防衛命令189を出す。パルチザン集団の中央統制の強化とパルチザンの増加の中で、360ページの本としてこの第三版(拡大版)が1943年5月に出版されたという。5万部発行されたという。
本書は、今や歴史上の軍事史料的な価値として存在するといえる。まず、全体構成をご紹介しよう。
冒頭には、「十月革命二五周年記念演説」(スターリンの演説)、「人民委員会防衛命令 1942年11月7日 345号モスクワ」(スターリン)、「パルチザン戦について」(M・I・カリーニン)の文が掲載されている。ゲリラ集団の組織化をめざす目的の明確化だ。
第1章 パルチザンの基本戦術
第2章 ファシストの対パルチザン戦法
第3章 爆発物と破壊工作
第4章 戦闘用武器
第5章 リヴォルバーとピストル
第6章 敵の武器を使う
第7章 偵察
第8章 カムフラージュ
第9章 敵の軍用機との戦い方
第10章 化学兵器に対する防護
第11章 白兵戦
第12章 応急手当
第13章 行軍と野営
第14章 食料の保存法
第15章 雪中生活
という具合である。
第2次世界大戦から現在までの間に、軍備は、兵士の武器から戦車、ロケット、飛行機にいたるまで飛躍的な技術開発があったことは、素人でもわかる。それ故、このマニュアルに出てくる軍備関連の内容はもはや歴史的骨董品的な事実記載にしかすぎない。だから、軍事オタクではないので、ああこんな武器が敵味方で使われていたのかと史料確認的に斜め読みした。
だが、・・・である。100%、骨董品で飾り物か? というとそうではない。サバイバル的視点でのマニュアル+αの箇所は、素人なりに客観的に眺めると、現在でも旧ソ連の地域、東欧辺りでならその通り有効な気がする。もちろん、ヴァーチャルなレベルで判断してだけのことだが・・・・。
軍事オタクではなく、「マニュアル」作成という観点から本書を眺めると話は全く別だ。マニュアルの持つ意味、そのまとめ方・プレゼンテーションとしては、実にいろいろと学べるように思う。歴史的事実を学ぶ他に、この切り口からだけでも手にとって一読する価値はある。
マニュアル作成という観点で、気づいた点を列挙してみる。
*マニュアル冒頭に、これが「何のために書かれたか」という目的意識を明確にするという姿勢が貫かれている。行動への動機づけである。
*まず最初に(第1章)、役割遂行への基本事項(本書では、基本戦術)が論理的な流れの中で、イメージを湧きやすくして、かつ具体的に個々の状況に応じた対処を含めて簡略に書かれている。見出し項目を追っていくだけで、押さえどころがわかるようになっている。
*役割遂行にはツール(ここでは、武器類だが)を効率的有効に駆使しなければならない。そのツールの利用法について、まさに素人にわかるように、だが要点を簡潔に書くことが実践されている。自分の道具の使いこなし方である。(第3~5章、10章)
その際に、キーワードを見出し(軸)にして要点を述べる。箇条書きを各所で併用。
重要点は、イラスト図(勿論、現代なら写真等も)を載せて、補足説明付記。
*どんな仕事にも相手が存在する。相対的な関係性で情報を知らせる原則が貫かれている。自分たちの武器の説明をすると、対比的に敵軍の武器情報を追記している。どのように見るか。どういう使われ方をしているか。知っておくべき事を押さえている。
敵を知れば百戦して危うからずというが、まさにその実践である。
*ツールの使い方については、1)通常の扱い方の手順、2)メンテナンスのやり方、3)不良発生の知識と対処(考えられる問題とその原因、是正措置方法)、4)不良の直し方、がまとめられている。勿論、ここでも図解を有効活用している。点検の重要性が明確に打ち出されている。
手順化するべきものは、すべて箇条書き方式で論理的にわかりやすく記述している。
手順を図解して併記することを実行している。絵だけ見ても大凡理解できる。
*第6章は「敵の武器を使う」である。ここでは、敵の武器を図入りで列挙して、その特徴の説明と使い方を具体的に記載している。
これはそのままビジネスにも応用できるのではないか。ライバルあるいはお客の情報を具体的に知り、そこから何を引き出し、どう使えば良いかというポイントを示すこと。たとえば、お客の発言情報からその欲求を引き出し、引き出し、対処のポイントをマニュアル化するということと同じだと感じる。
*動作・行動の基本ルールは明確に明示する。絵入りでわかりやすく。
第7章「偵察」は、どういうレベルで基本を押さえさせるかの事例ともいえる。きっちり簡潔に記されている。だが、書かれていることは実に具体的なやり方・行動レベルである。抽象的な記述ではない。基本は具体的に即実践が利くようにの見本のようである。
*あたりまえと思えることも、具体的に書き込んで、イメージが浮かぶくらいにする。つまり、初めての素人でも、読めばイメージが湧くように。
例えば第8章「カムフラージュ」にこんな一節がある。
「周囲の地形に溶け込むことは、最も重要なカムフラージュ法のひとつである。自然のどんな地形も土地の起伏も天然の遮蔽物として利用し、敵から身を守ろう(図94)。小さな丘、小山、地面の穴、谷、くぼ地、砲弾(爆発)によるクレーターはどれも、敵の探索からのよいシェルターになる。自然や人工の物も自分の姿を隠してくれる。・・・・」(p163~164)実に具体的な記述である。
*主要なものは具体的に列挙して、それぞれに特徴を説明する。対処法も個別に記す。
このマニュアルでは、軍用機や化学物質について、具体的に事例列挙している。(第9~10章)その要点を記憶しやすいように、同じパターンで簡潔にまとめている。
尚、このマニュアルでは、防毒マスクの重要性を記した続きに、「においで毒物を探知する際は、1~2回吸い込むだけで気づくようにする。・・・・」と記されている。だが、一般のパルチザン戦士にこれが可能かと考えると、やはりちょっと首をかしげたくなる。記述の必要性と主旨は理解できるのだが・・・・。まあ必要な原則論的記述も避けられないとは思う。この点は、具体的な訓練でどこまで事前にカバーできるかという次元だろう。
同じようなことは、ビジネスのマニュアルでもつきまとうことだ。
*通常のやり方ができない場合、次善の策についてもマニュアルに書き込む。これはやはり重要な観点だろう。
このマニュアル内の典型的な事例では、「欠陥のある防護マスクの使い方」「防護マスクがない場合」という項目で、サバイバル対処の次善策を教えている。
*状況は体系化して、場合分けで具体的に要点を書く。全体像が捕らえられるようにする。全体像がつかめたら、あとは訓練で体に覚え込ませることが大事なのだろう。
これはどの章にも共通するが、第11章「白兵戦」のまとめ方を読んでいて特に感じたことである。うまく状況を分類されて簡潔に要点が記されている。イメージは整理しやすい。そこで、これがどこまで即座に実践できる? からの当たり前のことへの回帰。
ここでも急所は絵入りで説明している。
*マニュアルの作成には、地域の特性を考慮に入れる。これは異文化視点をきっちりと押さえておくということにも通じるだろう。
サバイバルに関わる食料の保存法が第14章にまとめられているが、食料キノコと毒キノコについて列挙して載せられている。これで3ページくらい記されていることに、地域性を感じた。また、最終章で「雪中生活」の方法をマニュアル化している点にも同様に地域性を色濃く感じた次第である。
最後に編者のプロフィールを簡単に紹介しておこう。
レスター・グラウ: アメリカの退役軍人。ベトナム戦争で南ベトナムに従軍し、ゲリラと戦い、担架で運ばれ戦線を離脱した。その後、陸軍でロシア語を学び、任務でソ連を何度も訪れたという。
マイケル・グレス: シベリア育ちの元ソ連兵。ロシア名は、ミシャ。父親は対ナチ戦で戦った退役軍人。
この二人には『ソヴィエト・アフガニスタン戦争-大国はいかに戦い敗れたか』という共著があると、略歴に記されている。
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Red Army : From Wikipedia, the free encyclopedia
The Red Army Erich Wollenberg
The Partisan's Companion Updated and Revised edition, 1942
十月革命 :ウィキペディア
ファシズム :ウィキペディア
パルチザン :ウィキペディア
赤軍パルチザン :ウィキペディア
抗日パルチザン :ウィキペディア
レジスタンスとパルチザンの違いは何ですか? 同じなんでしょうか? (第2次世界大...
:「YAHOO JAPAN! 知恵袋」
リヴォルヴァーカノン :ウィキペディア
機関銃 :ウィキペディア
拳銃 :ウィキペディア
手榴弾 :ウィキペディア
RGD-33手榴弾 :ウィキペディア
Next Generation Hand Grenade ( Product of Swedish innovation ) :Youtube
塹壕 :ウィキペディア
サバイバル :ウィキペディア
サバイバルの観点での別次元の連想展開として:
「Earthquake Survival Manual いざというときのためのサバイバル・マニュアル」
東京都 pdfファイル
「わたしの防災サバイバル手帳」 消防庁 pdfファイル
震度6強体験シュミレーション 防災シミュレーター :「内閣府」
揺れ方シミュレーション 防災シミュレーター :「内閣府」
Survival Table of Contents :「The Aircav」
サバイバルについて様々に論じられた内容の目次ページ(英文)
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