繊細で可愛いくて、タイトルにあるように美しさを感じる切り絵の小品が本のカバーに使われている。表紙に惹かれて手に取った本である。切り絵作家というと、私が真っ先に想い浮かべるのは、宮田雅之氏の重厚かつ華麗な切り絵である。井出文蔵氏の切り絵もまた土の香り、郷土色を感じさせる独自の世界。そういうジャンルの切り絵を連想していた。それに対して、軽やかな、身の回りの身近な対象を女性の感性で可愛らしいタッチの切り絵にした小作品の世界もまた、見ていて楽しいというのが第一印象だ。
数えてはいないが、背表紙によると158の図案がこの本に収録されているそうである。
また、表紙裏に記載のプロフィールによれば、「言葉や音をヒントに、植物や鳥をモチーフにした切り絵作品を展開」している切り絵作家で、活動は関東中心のようである。
本書は、切り絵作家としては、初の図案集となるようである。
この本の最初に、2012.9~2015.8の「大橋 忍 作品集」として、「一縷」という作品から「紺碧をひとつ」まで15作品がまず掲載されている。私好みで3つ選ぶとするなら、「一縷」「ことのは」「TABOO」というところ。
本書は、カッター1つで、どのようにして切り絵を創り出すかというプロセスを丁寧に工程写真にキャプションを付してわかりやすく解説を付け、図案の切り絵小品の完成写真が載せられていて、実にわかりやすい。切り絵を手掛けてみようと思いたった人には便利な入門書となる。p20「本書の使い方」には、「図案(PDF)をダウンロードできます」と記されている。完成品を反転した白黒の図案がダウンロードできるようである。そういう点でも手頃と言える。
本書には「仕上がりがイメージしやすいように図案は原寸・カラーで掲載」されているので、仕上がり作品のページを見ていくだけでも楽しめる本になっている。
私には、まず切り絵がどのようにして作品として仕上がれていくのかという工程の理解と、しばしの間、原寸としての切り絵図案の小品を楽しむという目的を果たせた本である。そして、切り絵の世界もいろいろあるのかな・・・・という関心から、切り絵の世界への関心の波紋をインターネットを介して、少し広げてみた。宮田雅之、井出文蔵というように、単発に部分的に知っていた切り絵の世界が面的に広がるトリガーとなってくれた本になった。
本書は作品集の後は、3部構成になっている。目次には部とは記されていないが仮にその形で説明していこう。
第1部 切り絵を手掛けてみたい人のためのガイダンスがまとめられている。
「本書の使い方」、「切り絵の準備」、カッターナイフの「持ち方の基本」、「下絵の張り方」、「基本の切り方」、「和紙の貼り方」という形で懇切丁寧な写真入り説明である。
私には、切り絵作品がどのように作られるかを理解する参考になった。
第2部 「動物・鉱石を用いた切り絵」について、「作例」「工程」「図案」というステップで載せてある。仕上がった作品を額などにいれて飾ったイメージ写真がまず作例として提示されている。そして、コマ撮り写真にキャプションを付けて、工程が丁寧に開示されている。最後に仕上がった切り絵図案の原寸大写真がカラーで載っているのだ。
図案名を列挙しておこう。
やぎ、ひつじ、ミニぶた、ペンギン、キリン、はと、すずめ、白鳥、つばめ、るりびたき、バク、ハリネズミ、猫と柴いぬ、猫ABC、オカメインコとインコ、窓と黒猫、花飾り、とんぼ、ひなたとねこ、けずくろい、さんぽ、おつかい、鉱石とフラミンゴ、鉱石とランプ、鉱石とペンギン、鉱石、花つみ、ハーブティー、鳥かご、オーナメント4種 といった具合である。
第3部 「花・文字・数字を用いた切り絵」について、第2部と同様のステップでとりあげられていく。図案名は省略するが、最後に花と平仮名1文字および花と数字1文字の図案が列挙されている。切り絵でメッセージを伝えてみては!と提案し、作例を提示しているのもおもしろい。
切り絵による方言カードを作って手紙に添えては・・・というアイデアも投げかけられている。そして、作例として「まいどさん」「あんやとね」という方言例の切り絵が載せてある。著者は福島県出身とプロフィールに記されているので、この2つの言葉は、たぶん福島の方言なのだろう。「あんやとね」の切り絵は裏表紙の中央にも載せてある。
最後に少し、補足をしておこう。プロフィール紹介が簡略だったので、ネット検索で少し調べて見た。そのソースは後掲しているが・・・・。
この切り絵作家をイメージするのに役立つかもしれない。感想を含めて箇条書きで要点を捕捉しておきたい。
*地元(福島)の美術館で、サルバドール・ダリの絵を幾度も見たことが「絵」に対する興味の始まり。中学3年から独学で切り絵を始めたという。
*専門学校に進学するつもりで、学校に無断で受験し合格。しかし、美術部顧問の先生にしかられ、美術系大学に進学。しぶしぶ受験したというからおもしろい。
その結果、文星芸術大学で学び、卒業。デザイン専攻10期生。
*絵が下手でも、「なにかを切りたい」という気持ちが動機にあったとか。切ってみると「味」という点でごまかせるという発言もおもしろい。
*文学・数字・音などに対する「共感覚」から色を感じ、モチーフを決めるという。
*ストーリーがかっちりするものよりも、あやふやさを残すモチーフが好き。その結果、植物や動物のモチーフを好むという。
*漫画・コミックの世界と切り絵の世界は「異文化」だと思うが、それに関わったことで刺激を得た。幸運な出来事。
⇒講談社コミックス『聲(こえ)の形』に影響を受け、「切り絵文字」の作品化
*切り絵は「影も含めて一つの作品」という。
*切り絵は「必要なものを見きわめるための練習」だという。
著者はこの本は「図案集」なので、「読んで終わりではなく、切っていただいて完成するものだと思っています」とのこと。なので、私は未完成の状態でこの印象記をまとめたことになる。
ご一読ありがとうございます。
↑↑ クリックしていただけると嬉しいです。
著者に関連する情報を中心に、また印象記に触れたことにも波紋を広げて、ネット検索してみた。一覧にしておきたい。
[美しい切り絵。]大橋忍さんによる切り絵の実演 つばめ編 :YouTube
美しい切絵。 :「MdNの本」
Ohashi Sinobu Profile Site
トップページでまず作品を鑑賞することができます。
大橋忍 Pickup Creators VOL.81 :「アットクリエイターズ」
アクティビティ 学生の活動 :「文星芸術大学」
《インタビュー》大橋忍 -紙一枚からストーリーを創り出す切り絵作家-
by MOMO MIURA :「ARTIST PRESS」
彩りと陰影を切り絵で 若手作家・大橋さんが県内初個展
2015.9.22 :「東京新聞」
空中で揺れる「文字の切り絵」がツイッターで話題 :「NAVERまとめ」
宮田雅之切り絵の世界 作品紹介 :「宮田雅之切り絵の世界」
ギャラリー BUNBUN ようこそ 井出文蔵きりえの世界へ
GALLERIES :「nahoko KOJIMA」
立体切り絵作家 SouMa の世界へようこそ
日本きりえ協会 ホームページ
富士川・切り絵の森美術館 :「山梨県富士川クラフトパーク」
切り絵のつくり方 :YouTube
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
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(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
数えてはいないが、背表紙によると158の図案がこの本に収録されているそうである。
また、表紙裏に記載のプロフィールによれば、「言葉や音をヒントに、植物や鳥をモチーフにした切り絵作品を展開」している切り絵作家で、活動は関東中心のようである。
本書は、切り絵作家としては、初の図案集となるようである。
この本の最初に、2012.9~2015.8の「大橋 忍 作品集」として、「一縷」という作品から「紺碧をひとつ」まで15作品がまず掲載されている。私好みで3つ選ぶとするなら、「一縷」「ことのは」「TABOO」というところ。
本書は、カッター1つで、どのようにして切り絵を創り出すかというプロセスを丁寧に工程写真にキャプションを付してわかりやすく解説を付け、図案の切り絵小品の完成写真が載せられていて、実にわかりやすい。切り絵を手掛けてみようと思いたった人には便利な入門書となる。p20「本書の使い方」には、「図案(PDF)をダウンロードできます」と記されている。完成品を反転した白黒の図案がダウンロードできるようである。そういう点でも手頃と言える。
本書には「仕上がりがイメージしやすいように図案は原寸・カラーで掲載」されているので、仕上がり作品のページを見ていくだけでも楽しめる本になっている。
私には、まず切り絵がどのようにして作品として仕上がれていくのかという工程の理解と、しばしの間、原寸としての切り絵図案の小品を楽しむという目的を果たせた本である。そして、切り絵の世界もいろいろあるのかな・・・・という関心から、切り絵の世界への関心の波紋をインターネットを介して、少し広げてみた。宮田雅之、井出文蔵というように、単発に部分的に知っていた切り絵の世界が面的に広がるトリガーとなってくれた本になった。
本書は作品集の後は、3部構成になっている。目次には部とは記されていないが仮にその形で説明していこう。
第1部 切り絵を手掛けてみたい人のためのガイダンスがまとめられている。
「本書の使い方」、「切り絵の準備」、カッターナイフの「持ち方の基本」、「下絵の張り方」、「基本の切り方」、「和紙の貼り方」という形で懇切丁寧な写真入り説明である。
私には、切り絵作品がどのように作られるかを理解する参考になった。
第2部 「動物・鉱石を用いた切り絵」について、「作例」「工程」「図案」というステップで載せてある。仕上がった作品を額などにいれて飾ったイメージ写真がまず作例として提示されている。そして、コマ撮り写真にキャプションを付けて、工程が丁寧に開示されている。最後に仕上がった切り絵図案の原寸大写真がカラーで載っているのだ。
図案名を列挙しておこう。
やぎ、ひつじ、ミニぶた、ペンギン、キリン、はと、すずめ、白鳥、つばめ、るりびたき、バク、ハリネズミ、猫と柴いぬ、猫ABC、オカメインコとインコ、窓と黒猫、花飾り、とんぼ、ひなたとねこ、けずくろい、さんぽ、おつかい、鉱石とフラミンゴ、鉱石とランプ、鉱石とペンギン、鉱石、花つみ、ハーブティー、鳥かご、オーナメント4種 といった具合である。
第3部 「花・文字・数字を用いた切り絵」について、第2部と同様のステップでとりあげられていく。図案名は省略するが、最後に花と平仮名1文字および花と数字1文字の図案が列挙されている。切り絵でメッセージを伝えてみては!と提案し、作例を提示しているのもおもしろい。
切り絵による方言カードを作って手紙に添えては・・・というアイデアも投げかけられている。そして、作例として「まいどさん」「あんやとね」という方言例の切り絵が載せてある。著者は福島県出身とプロフィールに記されているので、この2つの言葉は、たぶん福島の方言なのだろう。「あんやとね」の切り絵は裏表紙の中央にも載せてある。
最後に少し、補足をしておこう。プロフィール紹介が簡略だったので、ネット検索で少し調べて見た。そのソースは後掲しているが・・・・。
この切り絵作家をイメージするのに役立つかもしれない。感想を含めて箇条書きで要点を捕捉しておきたい。
*地元(福島)の美術館で、サルバドール・ダリの絵を幾度も見たことが「絵」に対する興味の始まり。中学3年から独学で切り絵を始めたという。
*専門学校に進学するつもりで、学校に無断で受験し合格。しかし、美術部顧問の先生にしかられ、美術系大学に進学。しぶしぶ受験したというからおもしろい。
その結果、文星芸術大学で学び、卒業。デザイン専攻10期生。
*絵が下手でも、「なにかを切りたい」という気持ちが動機にあったとか。切ってみると「味」という点でごまかせるという発言もおもしろい。
*文学・数字・音などに対する「共感覚」から色を感じ、モチーフを決めるという。
*ストーリーがかっちりするものよりも、あやふやさを残すモチーフが好き。その結果、植物や動物のモチーフを好むという。
*漫画・コミックの世界と切り絵の世界は「異文化」だと思うが、それに関わったことで刺激を得た。幸運な出来事。
⇒講談社コミックス『聲(こえ)の形』に影響を受け、「切り絵文字」の作品化
*切り絵は「影も含めて一つの作品」という。
*切り絵は「必要なものを見きわめるための練習」だという。
著者はこの本は「図案集」なので、「読んで終わりではなく、切っていただいて完成するものだと思っています」とのこと。なので、私は未完成の状態でこの印象記をまとめたことになる。
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[美しい切り絵。]大橋忍さんによる切り絵の実演 つばめ編 :YouTube
美しい切絵。 :「MdNの本」
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大橋忍 Pickup Creators VOL.81 :「アットクリエイターズ」
アクティビティ 学生の活動 :「文星芸術大学」
《インタビュー》大橋忍 -紙一枚からストーリーを創り出す切り絵作家-
by MOMO MIURA :「ARTIST PRESS」
彩りと陰影を切り絵で 若手作家・大橋さんが県内初個展
2015.9.22 :「東京新聞」
空中で揺れる「文字の切り絵」がツイッターで話題 :「NAVERまとめ」
宮田雅之切り絵の世界 作品紹介 :「宮田雅之切り絵の世界」
ギャラリー BUNBUN ようこそ 井出文蔵きりえの世界へ
GALLERIES :「nahoko KOJIMA」
立体切り絵作家 SouMa の世界へようこそ
日本きりえ協会 ホームページ
富士川・切り絵の森美術館 :「山梨県富士川クラフトパーク」
切り絵のつくり方 :YouTube
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