電子書籍版で読んだ。シリーズ本として出版されている第1冊目。本書は2014年4月に刊行されている。59ページの本で、かつ活字が大きめなので電子書籍版としては読みやすい。先般、メソポタミア編を読んでいる。
大英博物館について、メソポタミア編でご紹介した内容と重複しない部分にまず触れておこう。大英博物館には古代エジプトだけで10万点を超える展示品が所蔵されていて、これは本国エジプトのカイロ博物館に次ぐ、世界最大級のコレクションだそうである。
その10万点の中から、本書では25の作品が掲載され各作品に解説が付いている。
収録作品名が目次の作品見出しになっているので、作品名称をまず列挙しておこう。
1.アクナテン王のステラ(部分)、2.ソベクヘテプのステラ、3.デニウエンコンスのステラ
4.アニのパピルス、5.フウネフェルのパピルス、6.宇宙創造のパピルス
7.ケルアシェルのパピルス、8.セシェプエンネヒトの外棺と内棺、9.化粧箱
10.タハルカ王のスフィンクス、11.男性小像、12.ネフェルゥラー王女を抱くセンムート像
13.魔除けのアムレット、14.青銅の鏡、15.魚形ガラス器、16.アメンヘテプ3世の頭像
17.チェチィの石碑、18.パセンホルの内棺、19.アハメス・ネフェルタリ王妃の像
20.トエリス神像、21.ネブセニィのパピルス、22.センネフェルの方形彫像
23.アメンヘテプ3世と王妃ティ、24.家畜検査の図、25.アンテフの木棺
わずか25点の収録数。その中には画像が暗くて像自体が鮮明に見えないのが2点含まれていてちょっと残念な気もした。
古代エジプトについての展覧会・特別展は人気があるせいか、日本各地で頻繁に企画開催されている。京都・大阪・神戸で開催された展覧会にはほぼその都度鑑賞に出かけている。大英博物館で直に展示品を鑑賞し、その展示数に圧倒された経験もある。
展示品を類型としてとらえると、過去の展覧会などで馴染みになっている。ステラ、パピルスに描かれた死者の書、棺(外棺・内棺)、古代エジプトの人々の小像、王・王女の肖像、エジプトの多様な神像、装飾品や身の回り品などである。
類型としてとらえれば、似たようなものを見たことがあるな・・・。しかし、個別の展示品として鑑賞するなら初めてと思うものばかり。記憶として思い出せる類いのものは無い。単に忘れてしまっているかもしれない可能性もあるけれど・・・・・。
日本での過去の展覧会は、大英博物館所蔵品に限らず、エジプトも含め世界の美術館・博物館の所蔵品が持ち込まれているので当然かもしれない。
大英博物館に収録された10万点中の25点を新鮮な目で眺めることができた。
印象に残るのは、2.ソベクヘテプのステラ、3.デニウエンコンスのステラ、4.アニのパピルス、6.宇宙創造のパピルス、8.セシェプエンネヒトの内棺に描かれた神像、16.アメンヘテプ3世の頭像、18.パセンホルの内棺、19.アハメス・ネフェルタリ王妃の像、24.家畜検査の図、という作品群。
私にとって特に役だったのは「古代エジプト文明について」という2ページの解説文である。古代エジプト文明の捉え方について、その論点が有益だと思う。その要点を私流にまとめてご紹介しよう。詳細は本書をお読みいただきたい。
*人間の人生は死から始まり、死を受け入れ復活・再生に救いを求めるという死生観
*エジプトの美術は、美術というより生活や人生の必需品という感覚が強い。
*古代エジプトの絵画には異なる時間・空間が同一画面に描かれる。
*絵と文字の混在は来世への願望などを完全な形で残すため。
*空白を残さないのは悪魔の侵入の防御、来世への思いを蝕まれるのを阻止するため。
*当時の工芸品は、装飾の面より機能性を重視した。
*埋葬時に来世で神々とともに生活するために新たに作られた埋葬品が少なくない。
古代エジプトの遺品を、私達の美術品感覚で受け止めると誤解を生む側面があるということのようだ。美に対する意識と美術・美術品に対する意識とを区別する必要があるということが指摘されている。こういう見方をしていなかったので参考になる。
ヒエログリフを読みこなせれば、収録された作品の鑑賞のしかたもおそらく大きく変化するのだろう・・・・そんな気がする。読み解けないのが残念無念。
ご一読ありがとうございます。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『大英博物館 4 メソポタミア編』 国際芸術研究会 ゴマブックス
大英博物館について、メソポタミア編でご紹介した内容と重複しない部分にまず触れておこう。大英博物館には古代エジプトだけで10万点を超える展示品が所蔵されていて、これは本国エジプトのカイロ博物館に次ぐ、世界最大級のコレクションだそうである。
その10万点の中から、本書では25の作品が掲載され各作品に解説が付いている。
収録作品名が目次の作品見出しになっているので、作品名称をまず列挙しておこう。
1.アクナテン王のステラ(部分)、2.ソベクヘテプのステラ、3.デニウエンコンスのステラ
4.アニのパピルス、5.フウネフェルのパピルス、6.宇宙創造のパピルス
7.ケルアシェルのパピルス、8.セシェプエンネヒトの外棺と内棺、9.化粧箱
10.タハルカ王のスフィンクス、11.男性小像、12.ネフェルゥラー王女を抱くセンムート像
13.魔除けのアムレット、14.青銅の鏡、15.魚形ガラス器、16.アメンヘテプ3世の頭像
17.チェチィの石碑、18.パセンホルの内棺、19.アハメス・ネフェルタリ王妃の像
20.トエリス神像、21.ネブセニィのパピルス、22.センネフェルの方形彫像
23.アメンヘテプ3世と王妃ティ、24.家畜検査の図、25.アンテフの木棺
わずか25点の収録数。その中には画像が暗くて像自体が鮮明に見えないのが2点含まれていてちょっと残念な気もした。
古代エジプトについての展覧会・特別展は人気があるせいか、日本各地で頻繁に企画開催されている。京都・大阪・神戸で開催された展覧会にはほぼその都度鑑賞に出かけている。大英博物館で直に展示品を鑑賞し、その展示数に圧倒された経験もある。
展示品を類型としてとらえると、過去の展覧会などで馴染みになっている。ステラ、パピルスに描かれた死者の書、棺(外棺・内棺)、古代エジプトの人々の小像、王・王女の肖像、エジプトの多様な神像、装飾品や身の回り品などである。
類型としてとらえれば、似たようなものを見たことがあるな・・・。しかし、個別の展示品として鑑賞するなら初めてと思うものばかり。記憶として思い出せる類いのものは無い。単に忘れてしまっているかもしれない可能性もあるけれど・・・・・。
日本での過去の展覧会は、大英博物館所蔵品に限らず、エジプトも含め世界の美術館・博物館の所蔵品が持ち込まれているので当然かもしれない。
大英博物館に収録された10万点中の25点を新鮮な目で眺めることができた。
印象に残るのは、2.ソベクヘテプのステラ、3.デニウエンコンスのステラ、4.アニのパピルス、6.宇宙創造のパピルス、8.セシェプエンネヒトの内棺に描かれた神像、16.アメンヘテプ3世の頭像、18.パセンホルの内棺、19.アハメス・ネフェルタリ王妃の像、24.家畜検査の図、という作品群。
私にとって特に役だったのは「古代エジプト文明について」という2ページの解説文である。古代エジプト文明の捉え方について、その論点が有益だと思う。その要点を私流にまとめてご紹介しよう。詳細は本書をお読みいただきたい。
*人間の人生は死から始まり、死を受け入れ復活・再生に救いを求めるという死生観
*エジプトの美術は、美術というより生活や人生の必需品という感覚が強い。
*古代エジプトの絵画には異なる時間・空間が同一画面に描かれる。
*絵と文字の混在は来世への願望などを完全な形で残すため。
*空白を残さないのは悪魔の侵入の防御、来世への思いを蝕まれるのを阻止するため。
*当時の工芸品は、装飾の面より機能性を重視した。
*埋葬時に来世で神々とともに生活するために新たに作られた埋葬品が少なくない。
古代エジプトの遺品を、私達の美術品感覚で受け止めると誤解を生む側面があるということのようだ。美に対する意識と美術・美術品に対する意識とを区別する必要があるということが指摘されている。こういう見方をしていなかったので参考になる。
ヒエログリフを読みこなせれば、収録された作品の鑑賞のしかたもおそらく大きく変化するのだろう・・・・そんな気がする。読み解けないのが残念無念。
ご一読ありがとうございます。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『大英博物館 4 メソポタミア編』 国際芸術研究会 ゴマブックス