うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

「初めてを君に」

2020年08月29日 16時56分39秒 | ノベルズ
<ガシャーン!>
「熱っ!」
慌てて手を引っこめる。思わず指を咥えながら見つめた先には、もうもうと湯気を立ち昇らせるひっくり返った鍋に、更に湯切りの水切りざるからはみ出るように散乱したキャベツの葉。
「はぁー…」
また失敗だ。ため息とともに肩を落とす。
自分は手が器用なほうだと思っていたのに、まさか料理でこんなに苦戦するとは思ってもみなかった。

何しろ幼年学校でもZAFTの訓練学校でも、厨房と呼ばれるところに入ったためし無し。
親が不在なことも多く、寄宿舎生活もあって、食事というものはほぼ食堂で出されてくるもので、自分で作るなんて意識はあまりなかった。
非常時だって携帯食がある。そんなに食事が作れないことに関して困ったことはない。
だが、先日のことだった―――

「アスランも一緒に料理教室に行こうよ!」
何の前触れも無しに、いきなりキラが誘ってきた。
「なんで俺が…」
一応これでも「カガリのSP」という職は得ている。大戦後、マルキオ導師の教会で傷心と体を癒す一般人のキラとは違い、それなりに忙しい。
「そもそも何で料理教室なんだ?」
「うん。そのことなんだけどね。」
キラの視線の先には、孤児たちと遊ぶラクスの姿があった。
「終戦を迎えて今はカガリたちのおかげでなんとか平和が保てているじゃない?これまでは自分の今までしてきたことを悔いるばかりで何もできなかったんだけど、ずっとラクスが僕に寄り添ってくれていて、それで思ったんだ。「何かお礼はできないかな?」って。」
「…」
確かにキラは凄かった。ある意味戦争を終結させた英雄でもある。しかし光が強ければ強いほど、刺す影も大きい。彼の存在を快く思わない奴らがまだいることも事実だ。
そんなキラの傍にいれば、危険に巻き込まれる可能性も高いのに、臆せずラクスはずっとキラの傍にいる。
「でね、この前マリューさ…ううん、「マリア・ヴェルネス」さんのところに行ったついでにバルトフェルドさんにも会ってさ。「女の子ってどんなことをしたら喜んでくれるかな?」って聞いてきたんだ。そうしたら「料理が一番感謝が分かる!」みたいなことを言ってくれて、折角だから知り合いの料理学校があるから、その伝手で体験入学してきたらどうだ、って。」
キラは殆ど、この教会から動くことができない。それは精神的な問題もある。そのキラがこうして「行ってみたい」というくらいだか、少しずつ傷が癒えてきているのだろう。
それは喜ばしいことだ。だからラクスに感謝する気持ちは共感できるものもある。
だが
「―――で、何で俺まで誘うんだ…」
「友達も連れてきていい、って言っていたから。今のところすぐ連絡取れる友達ってアスランしかいないんだもん。」
「いや、サイ君とか誘えばいいじゃないか…」
「サイは…ちょっと、ね。まだフレイのことも受け入れられていないだろうし…」
「…」
大事な人が戦火に消える。その苦しみは俺にだってよくわかる。それを考えると、確かに気安く声はかけられない。
「それにさ、アスランだってカガリにすごく助けられたでしょ?お礼くらいしてもバチは当たらないでしょ?だから―――」
「ね?」と同意を思いっきり込められた、カガリにそっくりの瞳で見られたら、思わず「うん」と言ってしまいそうになる。だが「料理でお礼」する以外にも、もっと別の手段でお礼はできる。
今の俺がそうだ。「俺のすべてを擲ってでも、カガリを守る」―――これが俺なりの彼女への感謝でもある。俺はキラのキラキラ輝く真っ直ぐな瞳の圧に負けず、首を横に振った。
「それなら、俺はちゃんとSPとして―――」
「もう!そういう意味じゃなくって!さっさと行くよ!」
「おい!待て、キラ―――」
こうして俺は同意していないのに、半ば強引にキラに引きずられてバルトフェルド大佐お墨付き(?)の料理学校に連行された。


―――続きはこちらから。


***


はい。見事に感化されて書きましたw
現在絶賛開催中のガンカフェイベント『キラとアスランの恩返し”初めての料理”』にインスパイアされてのSSです。
本当は10月のスパークの新刊用に取っておこうと思っていたんですけど、先日レポをUPしたように、もうあの美味しい展開に我慢ができなくって、つい…💦
あれだけ正々堂々と「俺の大切な人」って言われた日にゃ「だったら書くしかないじゃないかぁああああ!Σ( ̄口 ̄;)」
公式が燃料投下しまくってくれた挙句の産物です。
また来月の5日に昼から『Destiny』メニューを食べつつの「シン・アスカ君、お誕生会」と、夜から『初めての料理』の2回目行ってきます(^^ゞ
多分また萌えネルギー注入させられれば、スパークの書き下ろしぐらいできる―――…かな?
コロナが無ければ、もっと沢山行きたかったし、イベントに参加できる方も多かったんじゃないかと思うと、それだけが悔しい💦
少しでも楽しんで頂けましたら幸いです<(_ _)>
コメント
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