KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
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ユウキ、ロンドンが待っとるよ!

2011年03月04日 | マラソン時評
川内優輝について、まだまだ語っていきたい。この最近、この欄の更新も途絶えがちだったが、それは語り尽くしたいランナーがいなかったからだと思った。

前回、実業団に所属せずに五輪代表になったランナーとして、采谷義秋さんや大崎悟史の名前を挙げたが、もう一人、宇佐美彰朗さんを挙げておこう。日本大学の大学院で研究を続けながら、一人きりのトレーニングで日本最高記録更新、びわ湖マラソン4度優勝、そして五輪に3度出場の実績を残した。宇佐美さんも采谷さんも、そして大崎も箱根駅伝経験者である。

トップのハイル・メコネンから1分2秒の差をつけられての3位ではあったが、40kmからラスト2.195kmのタイムが6分52秒と、出場者で最高のタイムだったことで川内の走りを評価する意見もある。この事実に川内というランナーの本質が表われていると思う。

もし、彼が所謂「市民ランナー」の大半がそうであるように、「自らの楽しみのため」だけに走るランナーであれば、ここまで激しく前のランナーを追い駆けただろうか?

彼の40km通過タイムは2時間1分45秒。残りの距離で、足に痙攣を起こすなどのアクシデントに見舞われない限り、自己ベストの更新は確実である。それもサブテンの可能性も高い。8分くらいで流しても良かったはずである。

しかし、彼は自己ベストやサブテンだけで満足できなかったのだろう。その先にある世界へと加速していった。これが世界選手権の代表を決めるレースであることを彼がどのくらい意識していたのかは分からない。しかし、彼はこのチャンスを逃すまいと自らを思いっきり追い込んだ。そんな風に自分を追い込んだランナーと言えば、7年前の名古屋で起こった、あの「奇跡の走り」のようではないか!!

土佐礼子がアテネ五輪の代表を得た、あのレース。故障で練習不足と伝えられながら、先頭集団を積極的に引っ張り,30km過ぎてなおトップに残る彼女を、中継アナは

「やはり、土佐礼子は土佐礼子でした。」

と語った。しかし、その後、一旦引き離された大島めぐみを怒涛の追い上げで逆転してみせた。その時、土佐礼子は「土佐礼子とは違う別の何か」に変貌した。

川内にも、あの時の土佐のような瞬間が舞い降りたのだと思う。ここまで自分を追い込むことが出来るランナーが、日の丸付きのランシャツが着られるというだけで満足するわけがない、と思う。大邸に何しに行くのかは十分心得ているはずだ。もちろん、その先のロンドン五輪を見据えているのだ。

あの時、先頭に立った土佐が受けた沿道からの声、実況中継のマイクにもしっかりと捕らえられた。

「とされいこ、アテネが待っとるよ。」

ロンドンは、日本の公務員ランナーを待ってくれているだろうか?



1 コメント

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訂正 (かんちゃん)
2012-03-01 10:37:24
文中、大崎悟史選手について、「実業団の所属せずに五輪代表になったランナー」と記していますが、これは、大変誤解を招く表現でした。

正確には、大崎選手の所属しているNTT西日本は、実業団連盟登録のチームです。ただ、大崎選手は、NTT社員としての通常の業務をこなした後の練習で、2時間8分台をマークしたという点で、川内優輝選手と共通していたということを記したかったのですが、その後NTT西日本は、所属選手に、トレーニングに専念できるような環境を整備し、その後に大崎選手は世界選手権に入賞し、五輪代表に選出されました。

その点、大変誤解を招く書き方をしたことをおわびします。
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