落葉松亭日記

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石破氏「中国空母脅威と見なすべきでない」

2011年08月23日 | 政治・外交
自民党政調会長石破氏が「北京・東京フォーラム」に招かれた講演で、「日本は中国の空母発展を日本の安全にたいする脅威と見なすべきではない」と発言したという。
空母一隻でも東シナ海に浮かべたとき、日本は中共海軍演習、尖閣諸島や海底油田についてものが言えるだろうか。
中共も朝鮮半島も日本を仮想敵と見なしながら友好国の振りをし、日本の政治家を取り込む術を心得ている。

石平氏メルマガより
http://archive.mag2.com/0000267856/20110722130000000.html
【緊急寄稿】中国の海洋制覇戦略に「貢献」する石破氏、バカに付ける薬無し

中国が総力を挙げて進める「対外宣伝工作」の実態を暴き、それに引っかからないようにと警告したものだ。
しかし残念なことに、それからちょうど一月が経った8月21日、 日本人がまんまと中国の「外宣工作」に引っかかったような場面が、 中国の首都の北京で実演されていたのである。

2011年の8月21日、22日の両日、 日中間で年に一度開催の「北京・東京ファーラム」が開かれた。
中国側の出席者として開会式での基調講演を行ったのは、 国務院報道弁公室の王晨主任という人物である。

私の上述のメルマガでも記述しているように、 王晨主任は実は中国共産党宣伝部の副部長で党中央対外宣伝弁公室の主任でもある。
要するにこの王晨氏こそは、中国共産党政権の進める 「対外宣伝工作」の総責任者なのである。

国際政治の専門家でなければ対日外交の関係者でもないこの王晨主任が 「北京・東京フォーラム」に出て基調講演を行ったのはいかにも変な話だが、 考えてみれば、そのことの持つ意味は実に明確である。

要するに中国側からすれば、北京で開かれた「北京・東京フォーラム」たるものは、 まさに党と政府の進める「対外宣伝工作」にとっての絶好の場であり、 それ以上でもそれ以下でもないのである。

そして、まさにこの中国にとっての「外宣工作」の場を盛り上げるために、 日本側からは石破自民党政調会長や藤井裕久首相補佐官などの 「錚々たる」メンバーが北京へ赴いてフォーラムに参列したが、 彼らを対象とする中国の「外宣工作」は直ちに成果を上げたようである。

8月21日、日本国の元防衛大臣であり、自民党政調会長でもある石破茂氏は、 同フォーラムの外交・安全保障分会で中国の航空母艦建造を取り上げて、 「日本は中国の空母発展を日本の安全にたいする脅威と見なすべきではない」 と発言したという。

正直、中国側の報道でこの発言を読んだとき、 筆者の私はわが目を疑ってみたかった気持ちである。
もしかして、中国側のメディアが意図的に「石破発言」を捏造したのではないか とさえ思っていた。が、しばらくすると日本のメディアでも同じ報道が出たし、 石破氏本人もそれを否定したわけてもないから、 どうやらこの発言が本当だったのである。

しかし日本の国益の視点からすれば、それはあまりにも馬鹿げた、 とんでもない発言というしかないのである。

石破氏はその場で、 「空母を有効運用するために大量の艦船からなる編隊を組むのは非常に難しい」 とも指摘して、要するに 「中国は空母を有効に運用できないから脅威にならない」 とのニュアンスを匂わせている。

戦術的な視点からすればこのような見解には一理もあると思われるが、 しかし戦略的に考えればそれは完全に間違っている。
戦略的に見れば、日本の近隣国であり、アジア有数の軍事大国である中国が 航空母艦の発展に力を入れていること自体は、 まさに海洋国家としての日本にとっての脅威であり、脅威以外の何ものでもない。

第一、日本との海洋上の領土・領海紛争を抱える隣りの軍事大国が、 まさにその海洋戦略の一環として空母を発展させようとしていることは、 日本にとっての潜在的脅威であるのはむしろ自明のことであろう。

たとえば現段階で中国の空母運用能力が不十分であるとしても、 この能力は今後において高められることによって 中国の空母戦略は日本にとっての現実の脅威となる可能性が十分にあろう。

つまり、現時点で中国に「運用能力」があるかどうかが問題ではない。 中国は空母を中心とする海上軍事戦略を今後において進めて行くことこそが、 日本にとっての大問題である。

そういう意味では、日本の防衛政策の中心人物の一人であり 最大野党の政調会長を務める石破氏は北京において行った 「中国の空母は脅威ではない」との発言は、 まったく戦略的視点を欠如したものであり、 未来を見据える目を完全に欠いたものである。

しかし、戦略的視点と未来を見据える目を持つことこそが国防の要諦であり、 政治家・政策立案者たるものの必須条件でもある。

こうして見ると、石破氏という人間はいわば「軍事オタク」の一人であっても、 日本の政治と国防を背負おうとする政治家としてはまったく不適任というしかない。
「軍事オタク」としては一流であるかもしれないが、戦略家としては三流以下であろう。

この程度の人物は日本の国防政策のスペシャリストとして国政を担い、 総理大臣候補の一人となっていることもまた、 戦後日本の惨めな姿の象徴でもあると思う。

彼と比べれば、かつては中国の指導者を相手にして 「中国の軍事力増強は日本にとっての脅威だ」 と堂々と主張した民主党の前原誠司氏の方がよほどましであろう。

しかし問題はこの程度に止まるものではない。 「中国の空母は日本にとっての脅威ではない」という石破氏の発言は、 日本の視点からすればとんでもない愚論であるが、反対の中国側からすれば、 むしろ両手を上げて歓迎すべき有り難い発言なのである。

近年以来、軍事力の増強を計りながらも、 いわば「平和的台頭論」を対外的に大いに吹聴することによって 周辺国の中国に対する警戒心を和らげようとするのは中国の国策の一つとなっている。
周辺国が警戒心を持たずに反発しないままで自国だけが軍事大国となれば、 それは中国の国益にとっての万々歳の結果なのである。

とくに、ベトナムやフィリピンなどのアジア国が中国の海洋進出に反発して 南シナ海での中国の風当たりが強くなっている現在、 いかにして「中国脅威論」を払拭するのかはまさに中国にとっての急務であり、 その「対外宣伝工作」の重点の中の重点であろう。

こうした中で、まさに中国側が「外宣工作」の場として考えている 「北京・東京フォーラム」で、日本の大物政治家であり、 日本の「代表的な国防政策立案者」の一人である石破氏の口から、 「中国の空母発展は脅威と見なすべきではない」との発言が飛び出たことは、 中国にとってどれほど有り難い発言であることはよく理解できるのであろう。 中国の政府と軍にとって、この発言はまさに旱天の慈雨であり、 雪中に炭を送ることである。

「中国の空母は脅威ではない」というのであれば、 中国政府はその一言を持って中国の空母建設に疑問を呈した 周辺国の口を塞ぐことも出来るのだし、中国軍はこれから誰にも遠慮せずにして ばんばんと空母戦略を進めて行くことも出来るわけである。

つまり、中国政府がもっと言いたいことは 日本の石破議員がその代わりに言ってあげたのであり、 中国軍のもっとも喜ぶよう発言を日本の国防関係者が代弁したわけである。

が、自分たちの言いたいことを、相手の外国人に言わせてみせると言うのも実は、 いわば「対外宣伝工作」の狙い所であり、工作の極意たるものである。

こうしてもみると、日本政治家の石破氏は北京に入った早々、 もはや完全にその「外宣工作」の罠にはめられたのではないかと思う。
その結果、彼はあたかも、中国政府のために、 あるいは中国軍のために北京に出張して、 そして中国の海洋制覇戦略の推進に「貢献」してきたかのようなものとなっている。

このような光景を見ている私自身の感想を申し上げると、 バカに付ける薬がない、との一言に尽きるのである。
( 石 平 )